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ITが無いと生きていけないのに、アナログな日々

コロナ禍におけるオンライン・イベント運営で気づいたこと

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私が事務局長をしている団体 一般社団法人 企業アクセシビリティ・コンソーシアム(以下、ACE)は、「企業の成長に資する障がい者雇用」を目指し、日々活動しています。法定雇用率の達成だけではなく、障がい者の視点、考え、パワーを製品・サビースや社内活動に活かすことで、社会への貢献や企業の成長に役立てようとしています。現在、会員企業は、37社です。

毎年、活動報告や顕著な活躍を行なっている障害のある社員をロールモデルとして表彰するイベント「ACEフォーラム」を開催しています。2020年も11月26日に開催しました。開催模様のダイジェスト動画を作成しましたので、ご覧ください。

今回は、コロナ禍であり、初のオンラインでの開催となりました。基調講演には、株式会社ミライロの代表取締役社長 垣内俊哉 様に「バリアバリュー~障害を価値に変える~」と題して、お話をいただきました。障害のある当事者としての自らの経験、バリアフリーの歴史、社会に存在する「環境」「意識」「情報」の壁を超えるために大切なことについて熱く語っていただきました。

ロールモデル表彰は、これまで受賞者に会場に来ていただき、表彰状の授与を行なっていましたが、オンラインで各地を繋ぎ喜びの声をお届けしました。

今後、引き続き、またアフター・コロナの時代になってもオンラインによるイベントは継続されるのではと思い、運営を実施して気づいたことをまとめてみました。

<情報保障について>

聴覚障害のある方向けに、手話通訳と要約筆記による字幕表示を提供しました。今回、オンライン・イベント実施のツールは、Zoom Webinarを利用しました。手話通訳者の画面をメイン画面とともにスポットライト機能でピン留めし、常に表示されるようにしました。メイン画面と手話通訳画面は、スライドバーで大きさを調整できたため、視聴者が必要によってそれぞれの大きさを変えてもらえるようにしました。手話通訳者は、基調講演を行なっていただいたミライロ様経由でお願いしました。すでにそうしたオンライン・イベントに慣れている方々で、自ら担当時に画面のオン・オフをやっていただき、複数の手話さんの間でスムーズに表示の移行ができました。これは、ホスト側での切り替え作業がなくなったので、大変助かりました。

字幕表示については、要約筆記を利用した字幕表示にしました。話している内容を要約し、別途用意したサイト上に記載し、そちらを利用者にPCやスマートフォンなどのアプリで見ていただく形です。必要な方だけに字幕を届けました。当初UDトークを利用して自動翻訳し、その結果をZoomのAPIを通して流すことも考えましたが、音声認識にはまだまだ誤変換が多く、その修正を行なって表示させる前に、字幕がすでに流れてしまい、タイムリーな表示はなかなか難しいため要約筆記を利用しました。Zoom画面上の字幕の表示時間を調整などできると良いかもしれません。しかし、リアルタイムに誤変換を修正し更新作業を行うスタッフを用意する必要があります。イベント後のアンケートでも、やはり実際の画面進行と字幕表示には時差があるとの回答をいただきました。ここは次回イベントに向け、課題や要改善事項が多いと認識しました。

<表彰セレモニーについて>

これまでは、ロールモデル表彰の受賞者に会場に来ていただき、ACE理事より表彰状の授与やその場での喜びの声をいただいたり、記念撮影などを行なってきました。今回は、オンライン開催で全ての受賞者がリモート接続での参加となりました。表彰状は事前に送付し、それを持っていただき、受賞コメントをいただきました。実際に表彰状を直にお渡しできないのは残念でしたが、受賞された方の周りに上司や同僚の方々が一緒に盛り上げ、喜んでいただいてる姿に胸が熱くなりました。これは、オンラインならではの素晴らしさでした。

今回は、初のオンライン・イベントだったので、リモート接続先のネットワーク環境がそれぞれ違ったので、コメントだけの紹介となりましたが、リモート先でもプレゼンテーションができるなどよりオンラインを活用したプログラムも今後検討していきたいと思いました。

<参加者について>

オンライン開催とのことで障害のある方々にこれまで以上にご参加いただけました。実際の移動が困難な方、開催場所の首都圏以外の方からも参加いただけました。会場のキャパシティ以上の方々にイベントの内容を届けられるようになったことはとても良いことでした。コロナ禍で在宅勤務も進み、多くの方が自宅から参加ができたと思います。

<Q&Aについて>

基調講演ではQ&Aを行いました。Zoom Webinarには、Q&Aのツールがあり、これはとても便利でした。チャット機能だと宛先の初期値が参加者全員で、きちんと宛先変更をしないと多くの人に質問コメントが飛んで行ってしまいますが、Q&Aツールではホスト側で指定した共同ホストの人だけに見せることができます。時間の都合上、また参加者に発言をしていただく切り替え作業は手間であったため、運営側と講演担当者が質問を見ることができ重宝しました。基調講演を行なっていただいた垣内様もリモートから行なっていただいたので、離れた場所でも質問の内容を見ることができ、とてもスムーズな流れでQ&Aを行うことができました。

<Zoom Webinarについて>

普段のオンライン・ミーティングでは、双方向での議論やグループに分かれての討議を行うのでZoom Meetingを利用しています。今回は、大規模イベントでメインが一方通行の講演や表彰式だったので、Webinarを利用しました。1ヶ月単位で追加の購入ができました。参加人数により代金が変わります。テストやリハーサルを含め1ヶ月間購入しました。Zoom Meetingだと参加者から画面のオン・オフやミュートの解除ができてしまいますが、Webinarはホスト側で一括管理ができるので、やはり大規模イベントには、Webinarですね。ACEの別のイベントでは、小グループに分かれてのセッションが多いのでMeetingを利用しています。

<Zoomの録画機能について>

イベント自体を録画できるのはとても重宝しています。クラウドにも録画できるので、関係者への共有やローカルPCへの負担もなく便利。一点だけ、どのような形で録画されているのかが、イベント中はわからない点が困りました。メインのスピーカーを大きく表示していたつもりが、実際はそうなっていなく、ホスト画面が録画されているのか、視聴者が見えている画面が録画されているのか、選択できたり、録画のイメージを指定できると良いですね。もしかしたら知らないだけでできるかもしれないので調べてみます。話者の画面を大きくして録画できるといいのですが。

<人との繋がりについて>

これは今後の課題です。会場で実施した際は、ロビースペースで関連の展示やイベント後に懇親会も行い、企業人事担当者同士、経営層の方々や基調講演者、ロールモデル表彰を受賞された障害のある方々と働き方や雇用について情報交換をすることができました。オンライン・イベントで人と人の繋がり、その和を広げてどう次のアクションにしていくかを考えていたきたいと思います。

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グリーンの幕をバックに専用の配信スタジオからお届けしました。竹芝のポートスタジオさんです。新しくて設備も良く、回線も太く快適でした。

前職時代に社内イベントを一緒にやったイベント運営会社さんと協業しました。会社勤め時代の人脈が今もいきていて、ありがたいことです。

ACEの活動については、ホームページをご覧ください。

https://www.j-ace.net

現在の会員企業一覧は、こちらにございます。

https://www.j-ace.net/about/

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