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ITが無いと生きていけないのに、アナログな日々

鳥取県のアクセシビリティ・クラウド

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昨年の11月、鳥取県のWebアクセシビリティ向上のための取組みを取材してきました。そちらの映像がYoutubeにあがっておりますので、ぜひご覧ください。今回は、映像の構成、シナリオ、編集ともに同僚と協力して製作しました。撮影、編集、アフレコなどは、プロの方にお願いしましたが、全てのインタビューは、私が担当しました。


「全ての人が公平に情報にアクセスできる」、鳥取県庁のホームページは、そのポリシーのもとに構成されています。そこには、弊社東京基礎研究所が開発したWebアクセシビリティ向上のためのスキームがいかされています。

Webページに画像が掲載されていても、なんの絵や写真なのか、その情報がHTML上に記載されていないと、視覚障がい者の目となるWeb読み上げソフトがその内容を伝えることができません。

例えば、視覚障がい者が、Webページ上の読めない画像の存在を報告すると、修正担当者がIBM東京基礎研究所で開発されたツールを使って画像に関する情報を付与します。この結果、次に同じページを閲覧した際には正しく読み上げられるようになります。このソリューションの特徴は、元のホームページに修正を一切加えることなく、別のサーバー上に保存された修正情報を活用してアクセシビリティ上の問題点を短時間で改善することができることです。

これまで、修正情報を付与する作業は、ボランティアの活動にゆだねられていました。今回の鳥取県での取り組みは、この作業を障がい者のみなさんにお願いすることにより、障がい者の雇用促進にもつなげています。鳥取県庁のホームページには、「アクセシビリティの問題を報告する」ためのハートマーク・アイコンが各ページにあり、そこから障がいを持つ皆さんから読みにくいページの修正依頼をすることができます。その修正情報をもとにページは、修正され次回の閲覧以降は、より読みやすいページになります。

この修正は、オリジナルのページに変更を加えるものでなく、メタデータとして別のサーバー上に記録されます。株式会社鳥取県情報センターで、このインフラとスキームが運用されています。修正データは、どんどん蓄積されていき情報は増えていきます。同センターの営業企画部 部長の奥田 敏行さんは、これを「アクセシビリティ・クラウド」として推進し、鳥取県以外の地域での活用も期待されていました。

実際に障がいを持った方が修正作業を行うにあたり、ツールの使い勝手を向上させるため、社会福祉法人 プロップ・ステーションにご協力いただきました。今回、ビデオでインタビューに応じてくれた加藤高明さんは、自身重い障がいを抱えていますが、ツールの機能、使い勝手向上のため、多大なる貢献をしていただきました。
加藤さんは、学生時代からボランティア精神旺盛で、中国やインドにボランティア活動に出かけていました。サッカーが大好きで、車椅子サッカーチームのメンバーでもあり、チームのホームページも自ら作成しています。東京の郊外に住んでおられますが、毎日、赤坂にあるプロップ・ステーションに通われて作業されていました。自宅でもできる作業を毎日何故、車椅子で遠くから通ってくるのですかと聞いたところ、「ここに来ればたくさんの人がいて、皆と会話できるのが楽しいから」と話されました。名刺を交換させていただいたたら、肩書きに「行動家」とありました。「障がい者も世の中の人の役に立て、納税ができるようになれたら嬉しいです」という、加藤さんの言葉が印象的でした。

鳥取県企画部情報政策課 課長の森本 浩之さんは、「全ての県民が情報にアクセスできることは、非常に重要というより、当たり前のこと」とお話しされ、またこのスキームが障がい者雇用の促進にもつながることを高く評価されています。
鳥取県庁のホームページは、県民への情報公開、県民の声に対する回答が掲載されており、本当に開かれた県政というのを実感しました。

今回、インタビューをさせていただいた皆様、ありがとうございました。今度は、仕事でなく、ゆっくり鳥取県を訪れたいと思います。

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