渋沢栄一という答え
リーマン・ブラザーズなどの金融機関は目先の利益に固執するあまり、バブルの危険性を認識しながらも住宅ローンの証券化商品への投資に入れ込み、結果として恐慌に落し入れた。
恐慌は世界を巻き込み、人々の怒りの矛先は利益主義にばかり走るウォール街に向かい、2011年のデモにつながっていった。
日経新聞(2016.6.27朝刊)によると、米国でさえ、社会を良くする企業がようやく評価され始め、B企業と呼ばれる企業が急増しています。
Bはベネフィット(恩恵)などの意味で、B企業を名乗れば「社会に恩恵を持たらすことで成長する」と宣言するに等しいと言います。
2010年以降、米国の30以上の州がB企業の法的な枠組みを整え、2000社以上が地位を得たと掲載していました。民間でも米NPOがB企業の認証を進めており、米国はもとより世界の2000社近くを認証したそうです。
すべてのきっかけは、冒頭のリーマンショック(2008年)でした。
米国発がB企業ですが、新興国では特に社会的な問題が多く存在しており、企業が果たすことのできる役割も多いとばかりに、社会に役立つ経営は新興国にも向かっています。
そこで登場するのが日本企業です。社会と共存する経営がお家芸だからです。
新興国も日本の企業風土に学ぼうとしているのです。
中でも、渋沢栄一(1840〜1931)の発想がB企業にも似ているとばかりに、新興国の関心を集めていると言います。
渋沢栄一と言えば、「論語と算盤」を著したことが有名で筆者も手元に置いて読んでいます。
第一国立銀行や東京証券取引所などを代表として500以上の会社を創設し、「日本資本主義の父」ともいわれてきた人物です。
社会問題の解決やこれ以上の拡大に歯止めをかけることのできる答えがあるとして、新興国は渋沢栄一に経営のヒントを見出そうと期待しているのです。
今でこそ、ようやく社会に中軸を合わせた経営が世界に広がりつつありますが、渋沢栄一のような人物が早くも江戸時代末期(幕末)から大正初期にかけて、社会問題に着目していたという事実は、同じ国民として我々にも自信を与えてくれるのではないでしょうか?