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ユニクロはなぜ値上げするのか?

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clothes.jpgユニクロを店舗展開するファーストリテイリングは、先日に今年7月以降に売り出す新商品の約2割を平均で10%前後値上げすると発表しました。

これで昨年秋冬の新商品を5%前後値上げしたことに続く、2年連続の値上げとなります。


このニュースを聞いて、読者の皆様はどのように感じましたか?

  • また値上げとはユニクロも低価格販売に耐えきれなくなったのか
  • 円安や原材料高、生産地の中国における人件費の上昇が影響したのか

とまあ、このあたりの予想をされる方が多いのかもしれません。
実際に、同社のCFOは「コストの増大により値上げするしかない」といった内容のコメントを発表しています。

確かに理由としては当たっているのかもしれません。
しかし私は別の理由が本当は裏に隠されているのかもしれない、という仮説を立てました。

具体的には次のような仮説です。
「ユニクロはすでに国内での事業展開の成長性に対する限界を察知していて、将来の成長のためには海外展開しか念頭にないはずです。彼らの目標にあるのが、ZARAを展開するインディテックスであり、H&Mです。ただまだこれら世界のトップとは売上高で大きな差があります。」

「そのため、今後少しでも上記ライバル社たちに追いつき追い抜くためには、大きな投資が必要です。そこで今後の大きな投資のために必要な手持ち資金を値上げによって確保する。」といった理由です。

世の中的には、ここ最近の3年間ほど、商品の値上げのコンセンサスを世の中の人々から得られるタイミングの良さは過去にはない、といった思惑ももちろん内包されているはずです。

政府の後押しを受けた日本銀行の黒田総裁を中心としたリフレ派によるデフレ脱却、2%のインフレ目標達成という半ば公然と認められた政策の存在によって、給料のベースアップと並んで、商品の値上げが後押しされている訳です。

今のタイミングを逃してしまったら、将来的にいつ値上げが許容される時が次に到来するのか予想もつかないのと、2度と到来しないかもしれない、といった思惑です。

つまり筆者が今回のユニクロの事例でお話したかったのは、世の中の動向について表面的なところだけを捉えて終わりにするのではなく、どこまで深堀りできるか、という点です。

筆者がこのような仮説を取ったのには、他にも理由があります。それはユニクロほどの企業であれば、コストの上昇分を吸収できるだけの力量があるはず、という読みです。

ただ考えないといけないのは、パートの多くを正社員化する、という全社をあげた人事制度改革です。間違いなく人件費は上昇するはずです。

もちろん、上記につづったユニクロの思惑については間違っているかもしれません。それより真偽はともかくとして、事象に対しての見方としていろんな角度から眺めてみることの大切さをわかって欲しかったのです。

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