金融事業は"キャッシュ・カウ"なのか
国内を主戦場とする小売り・サービス業種の企業が、ある程度の成功を本業で収めることができたら、必ずといっていい程に向かう事業が「金融」です。
上記のような業種の企業だけではなく、例えば製造業を営むソニーでさえ、金融事業に参入し、業績悪化時には収益の減少を下支えしていたのでした。
ではどうして、様々な勝ち組企業が、本業だけに留めておけばいいところを、決まって金融事業に参入していくのでしょうか?
理由は単純明快で、労せずして儲けることができるからです。
製造業とは違い、建設業や農業とも違う金融の事業は、現金を生み出してくれる魔法のような事業のように思えて、とても魅力的です。
実態はどうなのでしょうか?
先述のソニーの事例だけではなく、トヨタの金融事業である自動車ローンは3000億円の営業利益を叩き出し、コマツの販売金融の融資残高は6000億円(世界中で)との記事も日経新聞の中に見つけたことがあります。
一方で金融事業への参入には逆のパターンもあります。
例えば、中国のスタートアップが事業の立ち上げ時にまず金融事業で、ある程度まとまった収益を得て、次にその蓄えをベースにして本当にやりたかった事業である製造業などに本格参入していき、M&A等の手法も駆使しながら大きく成長していく、という事例があるのです。
もちろん、一括りに金融事業といっても、現金の貸し付けからクレジットカード事業、REIT・アセットマネジメントまで幅広いことは承知しています。
こうした中、逆の動向を見せる大企業が現れました。
米GE(ゼネラル・エレクトリック)です。
全社の収益における金融事業が占める割合を、この先の数年でかなり低い比率にまで低減させる、という方針を打ち出しているのです。
GEといえばガスタービンで有名ですが、航空機エンジンや重電事業という本業への帰還を目指している訳です。
理由は、リーマンショックの勃発です。稀代の超優良企業であるGEでさえ、金融事業はボロボロになるような打撃を受けたからです。
つまり金融事業というのは、自社の能力や規模に関わらない部分で突然発生する、例えばカントリーリスクやバブルの崩壊など、不可抗力的な原因により立ち直れないくらいの悪い影響を受けやすい、という危険性のある劇薬のような事業である、といえるのです。
国内には金融事業でそこまでの深刻な打撃を受けることはなく、安定的に収益を生み出している企業も多くありますが、GEの判断を他山の石として、先を見据えた経営判断をするべきだと思うのです。