雇用に優しくないICT
筆者がどうしても以前より懸念していた問題について、ある経済学者が重要な問題として指摘していましたので、今回はご紹介したいと思います。
前日銀副総裁である西村清彦(東大教授)氏の指摘です。
世界的に、経済成長率が低下しつつある点に対して、背景や原因について解説している文章についてです。
西村氏がリフレ派か反リフレ派かは別にして、
同氏の指摘では、世界同時的な経済の成長鈍化は3つの地殻変動による複合的な結果である、とのことです。
1つ目が、資産バブルの生成・崩壊と金融危機が持たらした、特に先進国・地域での金融仲介機能の急激な低下と、中産階級層への打撃です。
2つ目が、世界にあまねく広がる「雇用に優しくない」情報通信技術(ICT)の進歩である。
一般的に技術進歩は雇用を多く輩出するが、現在のICTの進歩は過去の技術進歩と比べて雇用創出の力が弱い。
3つ目が、世界各地で同時に起こりつつある人口構成の変化である。
以上のように3つの原因を西村氏は取り上げていますが、筆者が注目したのはやはり2つ目の指摘である、"雇用に優しくないICTの進歩"という点です。
世の中が急激に変化するようになってきた、とは近年を評する場合によく指摘される情勢です。
背景にはさまざまな原因が考えられるのですが、筆者が考える最大の原因は、インターネットの登場と派生的に広がってきた技術です。
特に、1995年にMSが世に送り出したウィンドウズ95がターニングポイントだと確信を持っています。
折しも、私たちはこの雇用に優しくない分野の技術を先端的に扱う業種にどっぷり浸かっています。
日々の仕事が人々の雇用を奪っているのか、という点についてはこれ以上の言及を避けますが、少なくとも私たちは「世の中の役に立つために」仕事を行っている、という強い信念だけは曲げたくないものです。