法人税率のこと
消費税の増税ばかりが先行してきましたが、企業が稼いだ利益に対して課税される法人税の課税率下げが、紆余曲折の議論を通してようやく動き出しました。
企業が国と自治体に納める税金を合計したものを、法人実効税率といいますが、国際的に比較したら我が国は、14年度で34.62%となり、米国に次いで高い水準だったのです。(参考までに米国は40.75%と断トツで1位)
この率を15年度は32.11%まで下げました。これはこれまでの我が国には発想としてなかった画期的なことで、よく政府が動けたものです。なぜなら、財務省などの省庁が国の財源が減ってしまう、ということで強い抵抗を見せてきたのがこれまでの通例だったからです。
ところが、法人税には意外なカラクリがあって、法人税率を下げたのにも関わらず、税収が増える、という「法人税のパラドックス(逆説)」と呼ばれる現象がおうおうにして発生するのです。
なぜなら、企業にとって支払う税金が減ることによって、余剰資金が生まれてそれを使って設備投資などにお金を回すことができるようになり、それが元で業績が向上したりするからです。
さらに、従業員の給料を上げたりするところまで繋がれば、国内景気もよくなる、という良いことづくめなのです。
それにしても、32.11%まで下げた法人税率ですが、国際的に見るとまだまだ高い部類に入ってしまいます。
米国、フランスに次いで3位で、韓国は24.20%、中国は25.00%です。ちなみに主要国で一番低いのはシンガポールで17.00%です。
ここで筆者が特筆したいのは、イギリスの20.00%です。
この圧倒的な低さには多分に戦略性が内包されていて、国全体として海外の企業からの投資を国内にどんどん呼び込もうとしているのです。
その結果として、海外企業による国内投資の金額やGDP(国内総生産)に占める比率では、すでに大きな差がついてしまっています。
イギリスも日本同様に、何も手を打たないままでは国内市場の伸びには頭打ち感があり、外需の力を借りることによって、雇用や刺激の面で恩恵を受けているのです。
もちろん、移民政策などにより外国人労働者の受け入れ具合も先を行っています。
以上のように、法人税率を巡る各国間の争いは低さを競う方向性で、激しさを増してきているのです。