リモートワークでの心理的安全性の作り方、あるいはオンボーディングのちょっとした工夫
1年くらい前から、オンボーディングに力を入れている。
オンボーディングというのは、新入社員を迎え入れ、活き活きと、バリバリと働いてもらうための活動のことだ。
創立以来、多くの毎年中途/新卒が入社してきたが、僕らケンブリッジは、このオンボーディングが下手っぴだと思っている。育成としてノウハウを叩き込むのはうまいのだが、その人の元々の良さを活かすのが下手なのだ。
それを反省して、ボランティアでオンボーディングの担当チームを組成した。彼らを中心に、受け入れ体制を整えている。
で、彼らと「新入社員がすぐに会社に馴染むには?」と議論していく中で、僕らが今後大切にすべきことがいくつか見えてきたので、紹介しよう。
(オンボーディングの対象は新卒社員も含まれるが、ケンブリッジで特に課題感があるのは中途入社なので、以下、中途前提に書いていく)
★オンボーディングで大事なこと1:Welcome感
まず当たり前のことだが、「ウチの会社にようこそ!」をきちんと伝えること。
当たり前なのだが、これまであまりできていなかった。「あんま話しかけてくれない」という声もあったくらいだ。
自分自身がそういう人間なのでよく分かるのだが、別にWelcomeしてない訳ではないのだが、それを相手に伝えるのが照れくさいというか、わざわざは言わなかったりするのだ。
これはよくない。明確にダメだ。
新入社員は勇気を出して転職という人生の一大事をむかえている。そういう局面で、ちょっとだけ歩み寄るのは、なんのプレッシャーもない既存社員であるべきだ。
単にWelcomeと言うだけでも良いが、特に「あなたに関心がありますよ」を素直に相手に伝えるのが大事だ。共通項を話題にしたりね。
★オンボーディングで大事なこと2:なんでも相談できる場を作る
僕みたいに一つの会社でずっと暮らしているとか、特に自分で会社を作っている気になっていると忘れてしまうのだが、新しい会社に入ると、「ちょっとした不明点」が莫大にある。
「新しいプロジェクトに入った時に、BOXの権限がなくて資料が読めなかったら誰に相談すればいいんだっけ?」みたいな、全然本質的ではなく、頭を使うわけでもない、しょうもない不明点だ。
入社後2,3年の社員全員と1人ずつ面談したら、殆どの人が、この手の不明点(およびそれを他の人に聞くこと)がすごく大きなストレス源だったと教えてくれた。
しかもこのストレスは、リモートワーク環境ではずっとひどくなっている。プロジェクトルームで机を並べていたら、雑談のスキにでも聞けたのに、今ではそれがすごくやりにくい。
逆に良い例として先日聞いたのは、
入社直後、みな優しく「Slackで質問してね」とは言ってくれるんだけど、それだと聞きづらいんですよ・・。
あと、zoomで雑談部屋とか開かれていて、「ここにいるから来ていいよ」とか招いてくれるんだけど、ああいう所に行く人も決まっていて、ちょっと行きづらかったり・・。
でも上司に当たる人が、毎朝朝会を開いてくれたのが助かった。困ったことはそこでまとめて聞けたので。時間の余裕があるときは雑談できたし。
という話。やはり「これはあなたのための時間で、何でも聞いたりして好きに使っていいよ」というくらい、歩み寄ったほうが良さそうだ。
★オンボーディングで大事なこと3:ちょっとした成功体験の機会
入社後5年くらい経った社員に、「自信がついたきっかけは?」と聞くと、実に様々な答えが返ってきた。プロジェクトで小さいながらも1つの領域を任されたとか。
少し意外だったのは、「社内へのちょっとしたプレゼンがすごく好評で、この会社でやっていける気がした」という声が多かったことだ。必ずしも内容を褒められた訳ではなく、ビジュアルだったり、堂々とした話し方だったり。
僕らの本業はお客さんに対するコンサルティングなので、それに関して成功体験を積むのが王道だとは思う。だが仕事は難しいものなので、新入社員がすぐに成功を掴み取れるとは限らない。でもだからといって、何ヶ月も成功体験がないまま過ごせるほど人間は強くないと思う。
だから社内向けでも何でもいいのだ。何でもいいから、なるべく早いうちに、成功体験を積めるといい(目安は2ヶ月かな)。
ウチの会社では具体的には、前職の業界知識などを勉強会の形で共有してもらう場を作るようにしている。
といっても自然にはできないので、オンボーディングチームが主導で新入社員の得意なことや持っている知識のうち、他の社員が喜んでくれる(希少性が高い)ものを選んで、勉強会の立て付けを手伝ってあげている。
幸い、コンサルティングという仕事がら、前職がどんな業界であったとしても、興味深く聞いてくれるリスナーがいる。
過去の例だと・・
・以前手掛けたCRMプロジェクト
・某巨大製造業の予算管理はどうなっているか
・前に参加していた経理システム構築プロジェクトの悲惨さ
・商社とはどんな会社か
・海外駐在員の世界
などなど。
★オンボーディングで大事なこと4:仕事と無関係な仲間
ウチの会社で一番濃い人間関係は、配属されるプロジェクトだ。当然新入社員にはプロジェクトのメンバーが手厚くフォローしている。
だがプロジェクトでの人間関係って濃密すぎるとも感じている。うまく行っている場合はいいのだが、「同じプロジェクトの人との付き合いが最大の悩みのタネ」みたいな状況もありうるし、そうなると逃げ場がない。
そこでメインの人間関係とは別に、なんでもいいから社内コミュニティに属してもらいたいと思っている。
そういう場で「プロジェクトでこんなこと言われちゃったんだけど、どう受け取ったらいいんだろう?」みたいな相談ができる。単なる愚痴を言う場になっても、溜め込んでしまうよりはいい。「相手の人は、多分こういうつもりだったと思うよ」とフォローも出来る。
こういうゆるいコミュニティもリモートワークだと作りにくい。悩ましい。
ウチの会社ではなるべく同期を寄せるとか(通年採用なので、意識していないと同期が0人とか1人とかになってしまう)、新入社員と同じ趣味を持っている人が歓迎会を開くとか、自然にコミュニティに参加できるようにはしている。
もっといい方法があれば教えて下さい。
★オンボーディングで大事なこと5:あえて集まる
このブログを読んだ、同じオルタナブロガーの斎藤さんが、「あえて集まることの重要性」をFacebookに書いてくださった。書き忘れてしましたが、それ大事ですね!
ウチの会社はコロナ以降、在宅勤務率がかなり高い(なので僕自身も長野で仕事したりしている)。コロナ直後の新入社員研修も全てリモートで行った。リモートなのでアメリカに暮らしている新入社員も参加できてメリットも大きかったのだが、オンボーディングという意味だと、なかなかツライものがあった。
当時の新入社員に「振り返ってどうだった?」と聞いてみると、やはり100%リモートだと、上記の「なんでも相談できる場を作る」とか「仕事と無関係な仲間」に問題があったようだ。
それを踏まえて現在では、
・新卒社員の研修は、最初の1ヶ月程度は会社で
・中途社員の新入社員研修も会社で
・月に1回のコミュニケーションミーティングは新入社員のうちは会社から参加
など、いくつか「あえて集まる仕掛け」を作っている。
以上、こうやって書いていても、リモートワークの環境でのオンボーディングの難しさを感じる。コーヒーを淹れながら立ち話するみたいな、物理的な接触機会が減ってしまうから。
とはいえコロナ後に入社した社員だけでももう30~40人になるのだから、そうも言ってられない。こんな状況だからこそ、意図的に、仕組みとして、Welcomeしないとね。
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