仕事が大事?あるいは育児が大事?
男性の育休(育児休業)というテーマはネットでよく話題になる。
・制度はあるのだが「取るなよ」という無言の圧力が強い
・それどころか「育休取る」と言ったら、露骨な嫌がらせがあった
・日本組織の同調圧力がそういう土壌を生む・・
・日本に比べて欧米は・・
などなど。
実はこれについて強いオピニオンはこれまで持っていなかったのだが、最近あることに気づいたので、ブログに簡単に書き残しておこう。
★ウチの会社の現状
最近、育休を取る男性社員がやたら目につく。子供が生まれた男性社員の半分くらいが育休をとっている肌感覚だ(後でちゃんと調べてもらったら5割を少し下回るくらいだった。今後取りたいという人が多いので、すぐに5割越えそう・・)。長さは人にもよるが、昨日話した社員は2ヶ月の育休あけだった。2週間くらいの社員もいるし、3ヶ月くらいの人もいた。
たぶんこれって他の会社よりは多いと思う(少なくとも僕らの顧客企業で、バンバン男性社員が育休を取るという話を聞いたことがない)。
だが、どこかの大企業のように「1人でも男性が育休を取らないとかっこ悪いから、奨励しよう」みたいなことは一切やっていない。
そもそも、僕らは顧客密着型のビジネスをしているので、2ヶ月もプロジェクトを空けるとなると、やりくりが結構たいへんだ。代わりのコンサルタントに代打としてプロジェクトに入ってもらうのだが、これまでの文脈があるから急に同じ仕事はできない。だから前もって・・と、まあ、気苦労も多いし、金額的インパクトもある。
多くの会社で管理職から「育休なんて取るなよ。俺らが子育てした時だって、そんな甘えたことやってないんだから」という圧力があるのは無理もない。
ウチの会社で奨励もしていないのに、そして仕事上、結構なハードルがあるのに、男性社員が育休をよく取るのはなぜだろうか?
おそらく・・・
・(仕事はもちろんだが)家庭や奥さんとの関係を大事に思っている社員が多い
・当然の権利なので行使してるだけ
・社内に前例があるので、取るハードルが低い
・上記のような「圧力」や「嫌がらせ」がない
あたりだろうか。
★仕事なんかより、出産や育児こそが人生のビッグイベント
日々人のやりくりに悩んでいる経営サイドからすると、社員がバンバン育休を取るのは悩ましい。僕自身もとっていないし(ウチの娘が生まれたのはもう16年前なので)。
だがそれでも僕個人としては、ウチの社員が育休をとったほうが良いと思っている。それはあることに気づいたからだ。一昔前(昭和)と今(令和)を比較して考えてみよう。
昭和
・サラリーマン人生⇒35年(22歳~55歳くらい)
・転職⇒0回、または定年後に1回
・子供の誕生⇒2回から4回令和
・サラリーマン人生⇒50年(22歳~70歳くらい)
・転職⇒2回、3回くらい?
・子供の誕生⇒1回から2回
仕事する期間は長くなった。
一方で、子供の誕生は人生にごく稀にしか起こらないビッグイベントだ(僕の場合は1回しかなかった)。
昭和のサラリーマンにとって忠誠の対象だった「会社」だって、一生のうちに何社も変わる人が増えた。
つまり総じて言えば、人生における滅私奉公の価値は下がり、子供の誕生というイベントの希少性は増した。
だとしたら2ヶ月くらい休んで、そのビッグイベントを十分味わうのが人間としての資源の最適配分だろう。休む代わりにその期間仕事したからといって、仕事人生が50年から50年2ヶ月に増えるだけなんだから。
ウチの社員は比較的、自分の欲望に素直な人が多いと思う。変な意味ではなくて、あまり「空気」みたいなことを忖度しすぎずに、休みたければ休む、仕事したければする、という自由度が(よそに比べれば)高い、という意味で。
そういう社風もあって、自然に育休を取る社員が増えたのではないだろうか。
★会社経営にとっての意味
さっきは「社員が育休を取ると大変」と書いた。
だがウチの社員が「同僚が育休を取るのは困る」「取らないで欲しい」と言っているのを聞いたことがない。プロジェクトで一緒に働いているメンバーも言わないし、もちろん僕を含めた経営陣も言わない。
単に粛々とその人の不在に向けて準備をするだけだ。
そもそも育休というのは労働者の当然の権利なので、取るか取らないかを会社はコントロールできない。コントロールしようとすると「育休をとった男性社員をいじめる」みたいな陰湿なことになる。もちろん僕らは自分の会社をそんなゴミ溜めみたいなところにはしたくない。
育休に限らず、社員が長めの休みを取るメリットもある。先日育休をとった社員は「これまで自分しか把握してなかったややこしい業務を、今回を機にすべてマニュアル化して、誰でもできるようにしました」と言っていた。これは会社にとってハッキリしたメリットだ。
そして別な考え方もある。
・仕事だけじゃなくて人生そのものを楽しんでいる社員
と
・周りの目を気にしてそれを我慢する社員
のどちらがいい仕事をするだろうか?そして同僚として好きになれるだろうか?
僕自身は前者でありたいと思うし、同僚にもそういう人が多いほうが良い(べつに後者がいてもいいけど)。
だから「男性社員もやたら育休をとる」という最近の傾向はすごく喜ばしいし、もっと増えてもいい。もしかしたら「どうせ働くなら、そういう会社の方がいいな」と思って、転職したくなる人もいるかもしれないし。
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おおよそ1.5年に渡って書いてきた新刊の第1稿をようやく書き終わりました。
これから自己レビューをしたり、同僚にチェックしてもらったり、いつものように事例を載せるお客さんに許可をいただきにいったり、作業はたくさん残っています。が、峠は越えましたね。
本の特徴をざっとあげておくと、こんな感じです。
・タイトル:システムを作らせる技術
・出版社:日経BP(旧日本経済新聞出版社)
・どんな本?:「業務改革の教科書」の続編です
・厚さは?:白川史上最厚だった前作を超える厚さになる見込み
・いつ出るの?:来春だと思います