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ウチの会社のコロナ対応、あるいは自律的な組織なりのBCP

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世界中全ての人、全ての会社が新型コロナへの対応が迫られてから、数ヶ月が経つ。
もちろん僕が勤める会社(ケンブリッジ)も例外ではない。
ウチの会社が何を考え、どう対応をしてきたかを後世に向けた記録として残しておく。

【1】Beforeコロナ
ウチの会社ではコロナ以前から、比較的パンデミックみたいな状況に強い組織だったと思う。
別にコロナを予見して準備していたわけではないが、普段から良かれと思ってやってきたことのいくつかは、たまたまパンデミックにも役にたった。

★完全リモートワークができる(やろうと思えば)
僕がケンブリッジに転職したのは20年前だが、初日にノートパソコンが渡され、自宅からでもオフィスと全く同じ様に仕事ができる環境が整えられていた。
転職前の会社は1人1台すら実現していなかったので、「なるほど、これは良いものだ。でもこれって自分を自分でマネージできることが大前提だよな・・。これがプロフェッショナルというものか・・」と結構感激したのを覚えている。

もちろん自社オフィスはあるが、経理や人事などのスタッフ部門を除く社員の9割は、たまにしかオフィスに立ち寄らないワークスタイルが当たり前。プロフェッショナル職なので、上司の目の前で常に監視されていなくても、みな当たり前に仕事をする。いわば、多くの企業が今になって直面している問題は20年前には解決済みだった。

ただしお客さんとのプロジェクトワークはかなりハイタッチで、お客さんと一緒に同じ釜の飯を食ったり汗をかくスタイル。お客さんとの議論もフリップチャートという紙や付箋を多用するアナログさだった。後述するが、ここは最後までネックとなった。

★マーケ・セールスはデジタル化へ
特にセールスは2年ほど前まで、必ず対面が基本のベタなスタイルだった。それをMarketoを活用して長くリレーションを深めていくようなスタイルに転換した。元々コンサルティングサービスって、はじめてお会いしてから3年後に契約する、みたいな息が長いセールスなので、実はデジタルの方がきちんとしたフォローをできるからだ。
最初にセミナーでお会いして、メルマガや本を読みながらプロジェクトについて学んでいただく期間が長い。ようやくプロジェクト発足の機運が高まったら相談を持ちかけられる、みたいなのが典型的なパターン。

★IT改善
通常のIT改善活動の一貫でやってきたのだが、コミュニケーションツール群をちょうど一新し終わったタイミングだった(ちなみにZoom、Slack、Boxというセット)。
前のツール群でも同じことはできるのだが、使い勝手が結構違うので、コロナの前に移行が終わっていたのはとてもラッキーだった。このプロジェクトは社内有志がボランティアで進めてくれたことなので、もう感謝しかない。


【2】2月中旬
2/14の金曜日は全社ミーティングだった。普段は客先に行っていることが多い社員が赤坂オフィスに全員集合して、トレーニングやらボランティアワークをやる日。
活気があるオフィスで、全社ミーティング恒例のスイーツを皆で食べながら「あれ?これって感染防止的にヤバいのでは?」と危機感を覚えた。当時少しずつ日本でも感染拡大が進行していたので。

翌営業日の2/17、マネジメントミーティングでコロナシフトを決定した。あまり異論はなく、議論は15分くらいしかかからなかった。それを速やかに全社に周知して解散。僕はこの時以来3ヶ月ほど、オフィスに行っていない。
その時決めたのは以下。

a)セミナー、トレーニング、パーティ等のケンブリッジ主催イベントは中止
b)客先常駐ではない人は100%在宅勤務
c)対面での社内ミーティング禁止
d)お客さんとやっているプロジェクトでも、相談の上リモート化を進める

まずインパクトがあったのはa)で、結構なお金が飛んだ。ご招待していた方、参加申込をしてくださっていた方への連絡もあるし・・。だがウチの会社が主催したイベントが感染拡大のトリガーになるリスクは絶対に避けるべきだと判断した。カネの問題ではない。

この頃、開催決行!みたいなトーンのイベントもあったが、直前になって中止を迫られていたので、僕らがあのタイミングで中止できたのは結果的に良かった。

b)は上記のようにとっくに在宅勤務ができる状態だったので、すんなりと決まった。
c)の対面社内ミーティング禁止には結構こだわった。理由は後述する。
d)は悩ましかった。元々密着型のサービスを得意とする会社なので。でも、遅かれ早かれ、顧客でも対応を迫られる。だとしたら僕らが率先して働きかけるべきだろう。

★2月中旬に考えていたこと
まず、前提的なこととしては、
①この状況は長く続くだろう。恐らく1,2ヶ月で収束はしない。長期戦の構えが必要
②この時点で、この病気がどれくらい深刻なものかは分からない。インフルエンザ程度と言っている医者もいたし、もっとヤバい病気なのかもしれない。不確実な状況、しかもダウンサイドリスクが最悪死亡まである状況では、ある程度保守的に意思決定するしかない。
の2つ。この2つは今から考えても妥当だったと思う。

そして会社の方針として考えたことは、「社内パンデミックは避ける」という1点。
長期的に考えると、「全社員が感染しないこと」をゴールにすることは、経営としては残念ながらできない。
なぜなら、例えば社員の奥さんが職場からウイルスを持ち帰ることは、会社としては防ぎようがないからだ(防ごうとすると、逆に社員のプライベートに立ち入りすぎる)。
だが、「ケンブリッジの同僚から、会社でうつされること」は会社として防げる。経営の責任だ。
だから特に、
b)客先常駐ではない人は完全に在宅勤務
c)対面社内ミーティングの禁止
の2つを重視した。

社員が家族からうつされたり、お客さんがリモートワークを嫌がった結果、最悪、プロジェクト単位でクラスターになってしまうかもしれない。
だがトレーニングなど、プロジェクトをまたいだ対面コミュニケーションを禁止すれば、感染が会社全体に広がり、別のお客さんに迷惑をかけることは防げるし、他の社員が健康であれば、会社として問題のプロジェクトをサポートもできる。
これがまっさきに僕が考えた対処方針だ。


【3】2月中旬~3月
上記方針のもと、社内の対面コミュニケーション遮断や在宅勤務化はかなりスムーズだった。
主要取引先とは電子取引のシステムも導入していたし。
ただ、例えば家賃のような雑多な請求書は紙のままだったので、これを処理するための最低限の出社は必要となった。今回のパンデミックを機に、産業界全体でペーパレス化に取り組みたいですね。

そういえば3/13には、140人が参加した全社会議をはじめてフルリモートでやった。これは良かったな。チャット機能で質問や感想やガヤがバンバン投稿されたし、全員で記念撮影も出来たし、5人くらいのグループに別れてカルチャーについての議論もしたし。
ウチの全社会議はコミュニケーションミーティングという名前なのだが、なにか普段よりもリモートの方がコミュニケーションが活発だった気がする。
特に、関西、九州、ロサンゼルスからの参加者にとっては、普段より良かったようだ。普段だと「赤坂でワイワイやっているのを遠くから覗き込む」という感じになってしまうけれども、全員がリモートだと、同じ立場で議論に参加できるから。もしかしたらコロナが収束しても全員リモートでやるかもしれない・・。

お客さんとのプロジェクトをリモートワーク化する取り組みは、進捗が様々だった。
すんなりとお客さんメンバーもろともリモートにシフトするプロジェクトもあった。
一方で「プロジェクトルームにいて欲しい。ちょっとした相談がプロジェクトの成否を分けるし」
「密度の濃いセッションが大事ですよね」と、対面にこだわるお客さんもいらした。
密なコミュニケーションは常々僕らが強調してきたことなので、正しいだけに悩ましかった。

★2月下旬から3月に考えていたこと
一番気にしていたのは、イタリアやアメリカのように事態が急変し、全く出社できなくなるリスクだ。準備をしないでその日を迎えたら、プロジェクトはいきなり止まってしまう。
僕らはプロジェクトをファシリテーションするのが仕事のプロフェッショナルなのだから、そんなことが起きたらプロとして失格だ。
だからこそ、お客さんメンバー(+ベンダーさん)を巻き込んで、出社できるうちに準備を進めていった(パソコンの手配など、リモートワークの準備にはどうしても出社が必要なことも多いので)。
慣れないお客さん向けにリモート会議の体験会をやってみたり、ファイル共有の仕方を改めて確認したり。要は出社できない状況を見越してのシミュレーションだ。
ほとんどのお客さんよりもウチの会社の方がリモートワークに慣れていたので、ケンブリッジの事例やノウハウを積極的にお客さんに紹介したりもした。


【4】4月

★新人研修
4/1には日本法人に11人、アメリカ法人に4人の新入社員が入社した。
元々アメリカ法人への新入社員も、新人研修のために半年程度は日本に滞在してもらう予定だったのだが、来日が現実的ではなくなってしまった。だから急遽、
・はじめての100%リモートでの新人研修
・はじめての日米合同の新人研修
・はじめての時差アリ新人研修
という初めてづくしの研修となった。
ちなみに、ケンブリッジならではの、ファシリテーションやスクライブ(議論の可視化)のトレーニングも無理やり開催したが、これは案外リモートでもできるな、と。

みなで一緒にトレーニングを受けようと思うと、特に時差が厳しい。日本は早朝からお昼まで、アメリカはお昼から夜までのシフト勤務にすることで、日米共同のコアタイムを無理やり作っている。
他にも、先輩社員との何気ないコミュニケーションが取りづらかったり、まだまだ模索中。元々出来上がっているチームがリモートになっても大きな問題はないが、やはり初っ端リモートは勝手が違う。

★そして緊急事態宣言
そうこうしているうちに、緊急事態宣言が出た。とはいえこのときにはコロナシフトは完了していたので、緊急事態宣言に合わせてやることは何もなかった。

この前後に「社員に感染者が出て、一斉に出勤停止&全館消毒」みたいなことが何社かでニュースになっていた。
社員の99%が在宅勤務だと、こういう心配がない。例えばいま僕が感染しても、ウチの社員は全員普通に仕事を続けられる。なにしろ何ヶ月も誰とも会ってないから。
「社員全員を感染させないことは経営にはできないが、社内感染は防げる」というのは、こういう意味だ。

★セミナー
いったん中止したセミナーだが、オンラインでやり始めた。もちろん講師も家から。
これもリアルよりも良い気がする。物理的な座席がない分、参加者もたくさん集まってくれたし、質問も活発。リアルだとやはり聞きたいことあっても聞きづらいのかなぁ。

★お客さんとの特にややこしい議論
Concept Framingといって、プロジェクトを立ち上げるために「そもそも俺たちは何を目指すのか?」を議論するフェーズがある。普段のプロジェクトでの議論よりも抽象的で難しい。だからこそ、図を書いたり付箋を使ったり、可視化しながらの議論テクニックを駆使する必要がある。

折しも4月からあるお客さんと週イチでConcept Framingの集中討議を開くことになった。お絵かきツールで書いた図を画面共有したり、付箋を貼った自宅の壁をiPhoneで映したり、色々と試行錯誤しながらでも、質の高い議論はやれている。対面で話せないなら話せないなりに、やりようはあるものだ。今後もオンライン付箋ツールをトライアルし、全社導入しようと思っている。

★在宅勤務と育児との両立
多くの保育園がお休みになり、もちろんウチの社員やお客さんも影響を受けている。
これはもう、ある程度諦めるしかないでしょうね。
・お互い様なので、お子さんの乱入にはおおらかになるべし
・なごむことだけが許される
が大事だと思っているし、ミーティング中も何度も言った。子供が乱入したからといって、生産性への影響なんて実は大したことないと思うんだよね。それよりも「申し訳ない」と思うことで生じるストレスのほうがずっとまずい。
だとしたら「おおらかになる」が一番いいソリューションのはず。
その意識を共有するために「お互い様だから、宅急便に出てもOK」とする場合もある。そこまで言うと流石に恐縮する人は少なくなる。

そんな中で問題になったのは、子供の世話で勤務時間が半減してしまうような社員もいること。
幸いほとんどの社員は裁量労働制なので、特に有給や欠勤にする必要もない。お客さんとやっているプロジェクトへの影響は避けなければならないので、増員して「2人で1人分働きますんで」みたいな感じにして、プロジェクトへの影響を最小限にしている。


【5】5月初旬時点での振り返り
大企業のなかには、新型インフルエンザなどのパンデミックを想定した綿密なBCP(事業の持続計画)を立案していた会社もある。例えば僕らの株主である日本ユニシスさんなんかはそうで、
・社員と家族の命を守る
・顧客である社会インフラ企業の事業継続を守る
・その他の顧客の事業継続を守る
・自社の利益確保はその後
みたいな優先順位を決めて、今回もあらかじめ決められた手続きを粛々と実行していた。素晴らしい事前対応だったと思う。
一方で僕らは小さな会社なので、もっとずっと臨機応変の対応をした。2/17にそうだったように、経営幹部がさっと集まって方針を決めたら、現場組織がさっと自分の持ち場での最適解を考えて、実行した。その後も状況が変わるごとに、ベストな方針を話し合ってきた。方針はすぐに全社に周知され、皆がちゃんと実行する。
手前味噌だが、これは自律性が高い(Teal組織っぽい)カルチャーを普段から作っているからこそ、できることだ。

そして僕らのHaveFun!精神みたいなものも頼もしく思った。
パンデミックってもちろん深刻だし、制約もストレスも多い。でも新しい状況のなかで、どうやって効果的なことや面白いことができるのか、そのチャレンジ自体を楽しんでしまう姿勢を全ての社員から感じた。
この辺も、変革をファシリテーションするのが仕事の会社なので、変化や不確実性に強い組織特性が表れたと思う。

パンデミック以降、ツイッターなどでは「在宅勤務で、何の価値も出してない人が明確になった」「会議で座っているだけの偉い人がリモート会議では空気になった」みたいな意見が飛び交っている。
まあ、そういう会社もあるのかもしれない。だがウチの会社ではリモートになっても、そういう本質的な面での変化はほとんど感じない。元々能力評価、Output重視だからだろう。

自律的に働くこと。場所を選ばず仕事をすること。形式的な会議ではなく、本質を議論して意思決定すること。部下を管理するより、部下の能力を引き出すリーダーであること。焼き鳥屋で仲間意識を醸成するのではなく、仕事を助け合うこと。
パンデミックによる仕事の変化って、以前から僕らが普通に大切にしてきたことに近いんじゃないだろうか。

**************マーケティングもオンラインへ
★恥ずかしながら、先日Youtuberデビューしました。
(白川が一発撮りして、同僚が加工してくれた)
第1回「プロジェクトゴールとコンセプトってどう違う?」
第2回「プロジェクトリーダーとプロジェクトマネージャーってどう違う?」
こちらから↓
https://www.youtube.com/channel/UCCzCpzlgqAwKc_AFGsnAwog
気が向いたら今後もアップします。

★オンラインセミナーを週1でやります
本文中にも触れましたが、オンラインの方がリアルよりも主催も参加もカジュアルにできるので、
バンバン打ってみましょう、ということになりました。
白川が出るのは以下
・5/27:会社のITはエンジニアに任せるな!
・6/10:DX時代の人財の見極め方育て方(住友生命岸さんの講演に色々質問させてもらう美味しい役)
他にも5月6月で企画中のオンラインセミナーのうち、白川が出るやつだけで3本。
あと、他の人がメインで講演するのに茶々入れる役がいくつか(自分でも把握してない)。
結構忙しいね。

セミナー予定はこちらから
https://www.ctp.co.jp/seminar/

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