オンライン対談初体験、あるいはおっさんとしての生き方
Outward Matrixというブログやオンラインサロンを主催するShinさんに声かけてもらって、先日オンライン対談をした。以前の僕の本を読んでくれていたり、僕もTwitterで彼をフォローしていたりという「ゆるいオンライン知人」という感じのつながりだったんだけど、ガッツリ話したのは始めて。
1時間あまり、リーダーシップ感や、上司をこき使えば仕事が楽しくなる!という話、ケンブリッジのコンサルティング方針などについて、色々話を振ってもらって楽しく話せた。良い対談に参加すると、普段は言語化していなかったことを問われるまま話して、自分でも「そういうことか。。」となるのがいいね。僕も最近は座談会のファシリテーションをよくやるので、そういう場を目指そう。
でもこの記事で書きたいのは、対談の中身ではなく、対談のスタイルについて。
主宰者のShinさんとは最後まで顔も合わせず、本名も顔も職場も知らないままだった。もしオフライン(仕事の現場)で遭遇してもこちらは気づかないだろう。対談の30分前にオンラインでちょっと話して、時間になったら他の参加者がJOIN。実にシンプルな運営だった。
当たり前のことだが、事前に会うかどうか?とか、事前に主催者に講師から資料を送付するか?ということと、有意義な対談になるか?有意義な時間を過ごせるか?というのはほぼ無関係だ。だからネット上には『講演頼まれて、先方から「まずはご挨拶させていただいて。。」と言われて時間取られるのが嫌だ』と書いている人が多い。
逆に、普通の企業で働いている普通の人の感覚だと、事前にご挨拶しない方が失礼と感じるのだろう。そして自分の責任で多くの人(自社の社員や取引先のお客さん、コミュニティの会員など)を集めるのだから、クオリティを維持する責任がある。そのためにはどういう人か会って確かめ、内容についてきちんと詰めなければ・・。という真面目な気持ちがある。(実際には会ってみてやばい雰囲気を感じても、依頼した側から断る度胸はないと思うけど)
僕は主催者側の「挨拶しないと失礼」「会って確認しないとちゃんとした講演してくれるか不安」みたいな気持ちは分かるので、「時間が無駄なので、事前に会うくらいなら講演を断る」までは思わない。先方が希望すれば1回は事前にお会いし、進め方を相談することが多い(よほど忙しい時か、会わなくても内容が擦り合っている時は勘弁していただくこともある)。
そもそも、どんな人が聞きに来るかをきちんと確認し、依頼していただいた際の期待を聞いたほうがいい講演になる。そしてどうせ講演骨子を考えなくちゃいけないのだから、依頼者と一緒にディスカッションした方が、楽だという理由もある。
けれど、今回のようなカジュアルなオンライン対談の企画に呼ばれると、生産性の高さに驚くことになる。生産性というのは、企画者だけでなく、僕のように呼ばれた人も含めた、関係者全員にとっての生産性。Shinさんの場合は(おそらく)本業がかなり忙しいだろうに、こういう生産性が高い方式なので副業としてのサロン運営ができているのだろう。すごい。
声をかけられて対談に参加したことで、そういうことが理屈ではなく、瞬時に体感できた。
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僕は働きだしてから23年。ボチボチのおっさんだが、普通に考えればあと15年くらいは働く。最近は定年退職という概念も崩壊して70歳くらいまで働くひとが増えるので、もしかしたらキャリアはようやく前半45分が終了してハーフタイムあたりなのかもしれない。個人的には「お勤め」がそんなに好きじゃないので、少なくともきちっとした働き方を70までやるとは思えないが・・。
僕だけでなく誰もがそうだと思うが、前半45分の仕事人生では一生懸命、能力や価値観を作り上げる。僕はそれほど学習意欲が高い人間ではないが、仕事や執筆を通じて、または面白がった結果、結果として「能力や価値観が積み上がってきた前半戦」にはなっていた。
うまく言えないのだけれども、「人生の先輩達が培ってきたことを学んだり盗んだり真似たり、時には反発してアンチテーゼを提出することで、プロフェッショナルとしての自分を作ってきた」と言っても良いかもしれない。
だが、自分よりも年齢が若い(であろう)方にカジュアルなオンライン対談に読んでもらったことで、「これからの後半戦は積み上げ一辺倒ではなく、同じくらいunlearningも意識しないといけないのかもしれない」というようなことを漠然と感じた。
キャリアの後半45分(もしかしたら延長15分×2もあるかもしれない)では、自分よりも年下の世代がバリバリと新しいものを作り、新しい価値観で仕事をし、世の中を作っていく。世の中がそうやって変わっていくのだから、自分もアジャストしなければならない。例えば「講演の前には必ず対面でお会いして、講演内容について綿密に打ち合わせする」という価値観を持っていたとしても、場合によっては捨てて、再学習した方が良い。前にも書いた「スーツを着た人のほうがキチンとした仕事をする」みたいな暗黙の価値観も同じだ。
これは「ひたすら能力や価値観を積み上げる」というマインドとは、違うマインドである。僕は企業変革という仕事を通じて、人間がいかに変革が苦手かを熟知しているつもりだ。変革よりは決まった方向に努力を続ける方がずっと得意だし、苦痛も少ない。
組織レベルでも個人レベルでも、変革とは日々アップデイトされる技術、働き方のスタイル、価値観、必勝法などとどう付き合うかを考え続け、これまで培ってきたものが不要だと判断したら捨てて、自己変革する。これは相当強く意識しなければできないことだ。
個人レベルでそれを1番手っ取り早くやる方法は、たぶん「若い人の誘いに乗っかる」だと思う。
だから今回のオンライン対談みたいに、やったことない誘い、自分より若い人からの誘い、普段会ったことない人からの誘いにはノータイムでYESと答える。
考察は後からでいい。やったことがあること(例えばお客さんの偉い人との会食)よりも優先順位を上げて時間を割く。それは別に「若い人を支援してあげよう」などという上から目線のスタンスではなく、自分の後半戦をより楽しいものにするために必要な行動規範なのだ。
もちろん、自分の会社の若者が何かやりたいといい出したら全力で応援する(スポンサーシップ)。いまウチの会社では、アメリカ西海岸やアジアでコンサルティングサービスを提供する案件が具体的に進んでいる。仕事の依頼を断り続けているので、売上/利益だけ考えたら国内にとどまっていた方が楽で確実だ。だが自分たちのサービスを海外で提供するチャレンジをしたいという若者が社内にいるので、それを中堅/ベテラン社員が支援する形でプロジェクトが進んでいる。
こうやって会社が変わっていくのは無条件に良いことだと思う。もっと些細な取り組みであっても、もちろん応援/支援する。
そうやって若い人から声をかけてもらえる、相談を持ちかけてくれる存在であり続けるのは簡単ではない。そのためにも、誘いには全力で乗っかろう。
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このときの対談を記事にまとめていただきました。
問われるがまま話したので、原文はもっと分かりにくかったと思うのですが、いい感じに僕の意図を汲み取ってとても分かりやすい文章になっています。
https://www.outward-matrix.com/entry/shirakawa-san-interview