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真面目な人がかかる「俺がやらなきゃ回らない症候群」、あるいは組織がグレードアップする構造について

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★自ら忙しくする人々
「もっとサボれ」と口を酸っぱくして言うって、変じゃないですか?
でも、僕の周りでしょっちゅう起きてることだ。僕自身は自分が楽できるように、あれやこれや手を回すタイプなので、そういう状況をまるで理解できないのだが。

何の話かというと、「俺がやらなきゃ、現場は回らないんだ」と言って、一人で忙しくしている人々の話だ。プロジェクトでもよくいるし、「在庫管理一筋10年」みたいな人がこういう感じなこともよくある。「仕事を抱え込んでしまう」という光景だ。


その人が仕事大好き人間で、早く帰ってサッカー見たり家族と晩御飯食べるより仕事が好きならば、放っておけばいいと思う。
でも、そこまで仕事が好きじゃないのにイヤイヤそうなっているケースとか、その人に他の仕事を頼みたいのに頼めないケースとか、その人が明日バスに轢かれたらウチの会社どうなっちゃうんだろう?というケースとか、放っておく訳にはいかないケースも多い。

マネージャーをしていて困るのは、そういう人に「人をつけるから、あなたの仕事を振って下さい。代わりに、あなたはもっと暇になってください」と言っても、たいていはうまくいかないことだ。仕事を肩代わりするはずの人は手持ち無沙汰になっている・・。


もっとまずいのは、肩書上はマネージャーなのに「俺がやらなきゃ回らない症候群」にかかっている人だ。
本当は管理職として、チーム全体の生産性を上げたり、将来像を考えたり、社外や他部門と交渉したり、といった仕事をしないと行けないはずだ。だが「現場の仕事を俺がやらなきゃ」ということが、難しくて面倒くさい管理職の本来の仕事をやらなくて済む隠れ蓑になっている。周りも本人も、忙しく仕事していると、なんか責任果たした気になりますよね。本当は全然果たしていないのに。



★なんでこうなる?
こうなる理由の一つは、本人がこういう状況から何らかの利益を得ているパターンだ。
「この件は、この人しか分からない、できない」という状況は、一種のパワーである。簡単に首も切れない。そこまで心配していなくても、皆に頼りにされる状況、というのは心地が良いものだ。上記の「もっと難しくて価値がある仕事からの逃避」もこの一つ。
意識してか無意識かは別として、こういう時は「俺がやらなきゃ回らないんだよ!」となりがちだ。


そうでなく、本当にこの状況から脱出したいと思っているのに、できない場合もある。僕が参加しているプロジェクトでよく起きているのはこちら。
こういう場合は、マインドかスキルのどちらかが欠落している。他人に仕事を振るマインド、振るスキルだ。



★仕事を振るマインド
僕個人はさっきも書いたけれども、なるべく面倒くさい仕事はやりたくない。僕にとって面倒くさい仕事とは、「自分ができることが分かっていて、後は淡々とやればいいだけの仕事」だ。
だから、以下のポリシーを採用している。

方針1)自分にしかできない仕事しかやらない
方針2)自分にしかできない仕事を減らす
方針3)自分にしかできない仕事を増やす




方針1)自分にしかできない仕事しかやらない
こう書くとなんか非常に傲慢に見えるし、実際「自分がやらないと、代わりにやる人が本当にいない」という状況もあるだろう。組織の一番下っ端のころとか。
でも、みんなが思っているよりは、仕事を振る相手っていると思いますけどね。部下がいなくても、後輩、協力会社などなど。
もちろん、組織の中で役割が上がっていけばいくほど、「振らないといけない」「振らないと立ち行かない」という度合いは高まる。係長とか課長とかになったらもう、振る相手を調達する(どこからか連れてくる)のも仕事のウチだと思いますけどね。


方針2)自分にしかできない仕事を減らす
振る相手さえいれば、今この瞬間その人にスキル・知識がなかったとしても、身につけてもらうことはできる。教えれば、「自分しかできない仕事」は減る。そしたらどんどん暇になる。(もちろん程度問題ではあって、どんなに頑張って教えても身につけてもらえないケースはあります・・そりゃそうですよね・・)


方針3)自分にしかできない仕事を増やす
そうやって暇になったら、何をやるか?
何か別のチャレンジをして、自分しかできない仕事の幅を広げるんでしょうね。
こうしていくと、仕事は常に「自分にとってギリギリできるか、できないかの難易度」になっていく。だからたまに失敗もする。失敗上等だ。「俺しかできない仕事」にしがみついているよりもずっと面白いし、組織にとっても有益だ。


僕は自分の会社でもプロジェクトでもそこそこ上の方のポジションで仕事をしているので、少し極端なこういうポリシーで仕事をしている。
全ての人がこういう感じでやった方がいいとは思わないけれど、「極端に仕事を振りまくるとどうなる?」という例として参考にして欲しい。



★仕事を振るスキル
マインドがあっても、スキルが伴わないと、仕事を振れない。
といっても仕事を振るのに必要なのは、基本的な能力だ。

自分の仕事を棚卸す能力
⇒そもそもやらないといけない仕事は何か?

自分の仕事を価値判断する能力
⇒仕事のうち、優先度が高い仕事はなにか?
⇒そのうち、特別な知識や能力が必要な仕事はなにか?
⇒自分がやって、特に品質を上げたい大事なポイントはどこか?

仕事の内容やコツを言語化し、他人に伝える能力
⇒誰かに教えて、肩代わりしてもらう能力

資源を取ってくる能力
⇒仕事を振る相手を確保する
⇒そのために自分がやろうとしていることの大事さを訴える。


無理矢理にでも仕事を振ろうとすると、こういう能力を鍛えざるを得ない。
逆に言えば、こういう能力を鍛えるために、「今やっている仕事を後輩に振るぜ」と決めるのは、とてもいい修行になるはずだ。暇になってしまった後に、何で貢献するかを考えるのも含めて。



ということで、みんな、もっと仕事を面倒臭がった方がいいと思いますけどね。

Comment(1)

コメント

匿名

ITプロジェクトでもこういうこと言う人が結構多いけど、大抵の場合は力不足でチームの人から何も相談されない人。
忙しい人は、自分の仕事を人にあげるんじゃなくて、人ができなかった仕事が集まってくるから忙しくなる。断っても一週間後に戻ってくる。誰でもできるような仕事は、そもそもコンピュータにやらせればいい無駄な仕事ってのがほとんど。

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