なぜ仕事ができないヤツほど「マニュアル読めば分かりますから」とか言うのか、あるいは引継力=仕事力
最初に僕のスタンスをハッキリさせておきたい。
引き継ぎをちゃんとやらないヤツは、ビジネスパーソンとしてダメダメだ。いくらそれっぽい仕事をしてきたとしても、全く評価できない。
引き継ぎを軽視する会社/組織も同様だ(困ったことに、組織まるごと引き継ぎを軽視しているケースもある)。
★「引き継ぐ事なんてありませんよ」が意味すること
仕事ができない人、それまでちゃんと責任を果たして来なかった組織に限って、こちらが引き継ぎの場を設定しても、手ぶらでやってきて
「特段、引き継ぐことはありません」
「仕様書読めば分かりますから」
などと言いだす。
オイオイオイ、そんな訳はないだろ。
「その割には、あんたがその仕事ができるようになるまで随分かかったじゃないですか。待ってたこっちも、やきもきしましたよ」と言ってあげたい。言わないけど。とても怒っている時以外は。
仮に、本当に引き継ぐことがないとしよう。だとしたら、それって、
・その人が自分で工夫したこと、暗黙知的なコツがゼロである
・つまり、何も考えずに仕事してた
という事になりますよね。
または、
・全社最適視点、全プロジェクト視点がなく、自分の仕事が片付けばいい
・他者への思いやりや仕事への愛情がゼロ
という悲しい事になっているか。
どっちにせよダメダメだ。
稀に「コツを完璧に文書化してある」というケースもある。
でもその場合は情報量が多すぎるので、「どこに何が書いてあるか」を丁寧に伝えないと、結局は宝の持ち腐れになってしまう。「引き継ぎ資料の使い方を引き継ぐ」というか。
★引継力=仕事力
良い引き継ぎに必要な能力を考えてみると、結構なスーパーマンになる。順に見ていこう。
a)言語化能力
引き継ぎで一番価値があるのは、
「僕は経験を積んだからできるけど、引き継ぎ相手はできない」
という仕事を、短期間で出来るようになるためのアドバイスなり、頼るべき情報である。
プログラムのメンテナンスでも、発注書のチェック業務でも同じだ。
つまり、自分が習得したコツを、相手が分かるように言語化して伝える必要がある。
b)想像力、憑依力
コツを相手が分かる形で伝えるのは中々難しい。
「初心者ならこういう状況に陥るだろう」
「この引き継ぎ相手なら、ここで躓くだろう」
を想像したり、相手になりきってシミュレーションする力がないと、いい引き継ぎはできない。
悪気がないのに「特段、引き継ぐことはありません」と言ってしまう人は、残念ながらこの能力が決定的にない。
c)段取り、時間管理、リスク管理
大抵の引き継ぎは、期限が決まっている。元々やっていた人が異動するとか(退職含む)、プロジェクトから外れるとか。
優れた引き継ぎは、期限に向けて着実に終わらせていかなければならない。突発的な仕事が入ったので引き継ぎ作業は諦める、という訳にはいかない。
もちろん、自分側の都合だけでなく、相手の理解のスピードや割ける時間も計算に入れなければならない。
d)責任感、漢気、チームワーカーとしての心得
想像力や段取り力が高い人でも、他人がいい仕事をすることに全く興味がなければ、ちゃんと引き継ぎをしない。
・折角だから、オレが苦労したところをちゃんと説明していこう
・去るのは心苦しいが、せめてノウハウは残そう
・理屈はともかく、他の人がいい仕事をするのが嬉しい
といった、他者を思いやるスタンスを僕は漢気(おとこぎ)と呼んでいるが、そういう心意気って、仕事をする上で大事ですよね。損得じゃないのだけれど、長期的には損得にも響くという意味で。
e)構想力
本来、引き継ぎは引き継ぐ人の工夫や根性でやるものではなく、組織として引き継ぎを計画していかなければならない。「自然に引き継がれる」が理想。
それについては次回に書こうと思うが、個人能力として必要なのは「今後、この仕事は、誰が、どうやってやっていくのか?」を考える力、つまり構想力である。
将来のために引き継ぐのだから、将来を見通す力が必要、という事ですね。
以上、全部満たしていたら、バリバリ仕事できそうですよね?
ただ、スーパーマンにはなれなくても引き継ぎを頑張ることは今日から出来る。