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[book]小林啓倫さん訳「ウェブはグループで進化する」

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オルタナブロガーでもある小林啓倫さんが翻訳された「ウェブはグループで進化する」を読みました。購入しようと思っていたのですが「欲しいです」と言ってみたら小林さんから頂戴しました。ありがとうございます。

人間の社会活動に関する法則を理解するための入門書とありますが、ネットがからんだ情報の流れを解説し、マーケッターの誤解を解き、効果の出やすい方法も示してくれている本です。鍵となるのは人のつながりやグループ。

そういえば、ハイパーテキストのつながりだったネットは、確かに人が中心となるものものへと変貌を遂げつつありますよね。ネット(オンライン)がオフラインでずっと行われてきた活動に近づいて来た(追いついて来た)というのもうなづける話です。

すごい偶然なのですが、私は、今年も昨年に続いて前期は立教大学にて「情報ネットーワーク論」という講義を受け持ったのですが、授業でも触れた「6次のへだたり」「弱い紐帯(weak tie。この本では『弱い絆』)」「ハブ」「イノベーター」などの用語や現象が図を交え、わかりやすく解説されています。もし学生が今このブログを読んでいたら「先生、この本を参考にしたの?」と言われるかも知れません。

良いなと思ったのは、マーケティングの事例が豊富なこと。こういう事実や現象があるから、こういう事例になるということで、単に事例紹介に終わらず、その背景や人の感じ方なども説明されており、頭に残ります。ネットワーク理論の学問的な本は一般の人やマーケッターにはとっつきにくいところもありますが、これは非常にわかりやすいです。

著者のポール・アダムス氏は、Googleでソーシャルメディアを研究し(それがGoogle+のサークル機能に活かされたとか?)、今はFacebookに転職された方だとか。それだけあって、人のつながりや情報の流れをよく理解している印象を受けます。この本の出版に関する裏話?は本の中にもありますし、小林さんのブログでも言及されているのでこちらでどうぞ。

原書が出たのは2011年11月ということですから、この分野では比較的新しい事例が掲載されている印象です。ただし、筆者がFacebook社員であることから、その分野が多く取り上げられている印象はあります。

マーケッターへのアドバイス的なことを本から少し紹介します。

例えば、インフルエンサーが情報を広めるから、インフルエンサーを見つけようという今まで言われて来た話。実は多くの研究によって、つながりの多さと影響力には相関が見られないのだとか。なので、つながりが多いから必ずしもインフルエンサーではないのですよね。

もしいたとしても、インフルエンサーは非常にまれで、探すコストを考えると、他の手段が良くなることもあるのだとか。実は情報を伝達するのは普通の人であると筆者は書いています。そういえば、フェイスブックでもごく普通の友人の投稿から何かを買ったり、行くレストランを決めたり、見る映画を決めたり、出かける場所を決めたりしていますよね。これからはマーケッターも小規模グループに注目する時代が来るとのこと。このあたりも面白いですね。

それから、妨害型マーケティング。強引に割り込んで来る広告メッセージ、確かにありますよね。これらは効果がなくマーケティング担当者への信頼を落とすだけだとか。このあたりも非常に考えさせられます。

ソーシャルネットワークや人間のつながりに興味のあるマーケッターの人には特にお勧めです。

ウェブはグループで進化する  ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」
ウェブはグループで進化する  ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」 ポール・アダムス 小林啓倫

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