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"Grouped"が『ウェブはグループで進化する』として出版されます。

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今年1月、"Grouped"という変わったタイトルの本をご紹介したことがありました。それから半年、嬉しいことに本書に翻訳者として関わることができましたので、宣伝も兼ねて再度ご紹介させて下さい。邦訳のタイトルは『ウェブはグループで進化する ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」』になります。

ウェブはグループで進化する  ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」 ウェブはグループで進化する ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」
ポール・アダムス 小林啓倫

日経BP社 2012-07-26
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本書の著者であるポール・アダムス氏は、プロダクトデザインやユーザーエクスペリエンス・デザインの分野でキャリアを積んできた人物で(ダイソンで掃除機のデザインに携わった経験もあるのだとか)、直近ではGoogleからFacebookへと移籍しています。そんな経歴からか、フォーチュン誌から「シリコンバレーで最も引っ張りだこな一人(one of Silicon Valley's most wanted)」と評されたことも

Google時代、アダムス氏はGmailやYouTubeなど様々なプロダクトに関わっていましたが、それと並行して担当していたのがソーシャルメディア研究です。実は彼の研究が基礎となって生まれたのが、Google+で友人をたばねる機能である「サークル」の概念。本書の原題では「サークル」ならぬ「グループ」という単語が使われていますが、「友人によって構成される小集団」の存在がこれからのオンライン・コミュニケーションにとって重要であるというのが本書の主張であり、まさに「サークル」機能はこれを具現化するものと言えるでしょう。

ならばなぜ本書は"Circled"という題にならなかったのか――それには理由があります。実はアダムス氏は"Social Circles"という題名の本を2011年7月に発表する予定でした。ところがアダムス氏自身が、出版前にGoogleからFacebookへと移籍。その結果、Googleの要請で"Social Circles"の発表は中止され、同書はお蔵入りの運命をたどることに。そして書かれたのが"Grouped"というわけで、完全に同一ではないにせよ、"Social Circles"から多くの部分が転用されているのではと推測されています。

そんなバックストーリー満載の本書ですが、内容もなかなか刺激的。アダムス氏は近年におけるソーシャルメディアの流行をブームとして捉えるのではなく、むしろオフライン世界での人々の行動にオンライン世界が近づいていることの現れであると捉え、ウェブの新たな進化が起きていると主張します。そして「文書のつながりとしてのウェブ」から「人間を中心としたウェブ」へと再構成されることで、これまで以上の価値が生み出されると共に、その中では私たちのような一般の人々(そして私たちが形成する無数のグループ)も重要な存在になることが解説されます。

こうした理由から本書は、「強い影響力を持つ人物を探し出し、彼らに働きかけることでマーケティング・メッセージを拡散できる」というインフルエンサー理論(マルコム・グラッドウェルのベストセラー『ティッピング・ポイント』でお馴染みですね)に対して懐疑的な立場を取り、「事実ではなく願望にもとづくもの」という強い表現で批判しています。その代わりとして掲げられるのが、小規模なグループが連鎖しているというネットワークの構造を理解し、それが持つ特性を活かしてマーケティング・メッセージを伝えるというアプローチ。その裏付けとして、アルバート・ラズロ・バラバシやダンカン・ワッツといった研究者らによるネットワーク理論、ジョナ・レーラーやダン・アリエリーらによる神経科学・心理学の研究、さらにアダムス氏の現在の職場であるFacebookにおけるデータなどが適時紹介されています。

果たして現状に即しているのは、インフルエンサー理論なのか、はたまたグループ理論なのか。ぜひ本書を読んでアダムス氏の主張に目を通していただきたいのですが、もう1つ本書が優れているのは、ここからもっと深く考えてみたい方々のために参考文献がまとめられている点です。アダムス氏自身、本書は「第一歩」に過ぎないと宣言しており、より理解を深めるために本書が参照した多くの文献・論文・古典的名著に目を通して欲しいと述べています。幸いなことに、日本語訳されている本も数多く掲載されているので、この夏休みにさらなる知的探求へと導くガイドブックとなってくれることでしょう。

先に述べたような話題性もあり、米国で大きな注目を浴びた本書。しかし様々な騒動がなかったとしても、第一線でソーシャルメディアの研究・開発に携わっている専門家の著書として、高く評価されていたはずです。ぜひお手に取っていただければと思います。

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