記者会見はリアリティショーになった?
全部ではありませんが、2025年1月27日、ところどころフジテレビの記者会見を見ました。「静止画」会見を受けてのやり直し会見です。メモ的に感想を書いておこうと思います。
この手の会見はその分野で実績の多い「危機管理広報」の専門会社が運営しています。寒い中外で待たされたなどの投稿もXで見ましたが、やはりノウハウがあるからこそ、運営自体はきちんとされていたように見えました。
企業側からの説明も、事前にかなり練習し、台本もあるようで、滞りなく進んだと思います。お辞儀などの角度やタイミングも揃っていました。テレビに映らない状態で司会が内容を読み上げる場面が長かった箇所は気になりました。写っている人の誰の口も動いていないのに、延々と説明が続く場面がありました。とはいえ、これは小さな問題でしょう。
問題はそこからです。
やり直し会見ということで、準備期間も少なく、言えることも少ない中であっても、質問を受け止めなければいけないということで実施されたのではないかと思います。
前回締め出されたことで多くの不満を持った記者、特にフリーランスの方が殺到し質問をすることは予測できました。ですが、その想定を大きく上回って質問が出てしまったように思いました。
記者は記事を書くときに、ある程度ストーリーを想定しており、それを補完する質問をします。質問内容は「自分の記事で想定している読者」が求めていると思われる内容です。
今回時間が長時間になったことで集中力も切れますし、皆さん自分の聞きたいことに集中したことで、前の人が聞いた内容や答えられない内容をしつこく尋ねる場面も多くありました。回答する側も間違える場面も出てきました。
時間や参加人数を限ると不満に繋がるから、延々とやり続けよう、できるだけ最大限の対応をしよう。不満も吐き出してもらおう。そんな事情もあったと思います。立て付けは、ビッグモーターの時の会見と近いように思いました。ただ今回は、言えないことも多く、新たな材料が出てこないために歯切れの悪いものとなり、記者が言いたいことを吐き出す場のような位置付けになった気もします。
取材の方法として、意図的に感情的になって圧力をかけ、相手がポロッと本音を漏らすのを狙う方法もあります。(圧迫面接などと近いやり方ですね)またそれらを意図せずとも、なかなか指してもらえないとか、長時間にわたる疲れなどで記者側の苛立ちもあったように思います。
それから、質問のタイミングは、実は記者の自己アピールの場にもなります。昨今はYouTubeなどで中継されている記者会見が増えています。このような場で、記者が鋭い質問をすることで「この記者はすごい」とオーディエンスに「爪痕」を残すことが可能となります。あまりに長時間であるため、私は全部を見てはいませんが、いじめのように一方的に非難したり追い詰めたりするような質問もあったようで、それらは記者個人のブランディングに逆効果になったかもしれません。
深夜にまで及ぶ長時間の内容だったため、登壇者、記者、運営関係者、視聴者、皆の疲労もかなり大きいように感じました。質疑応答部分に関しては、あらかじめ時間を決めておき、先にオンラインで投稿してもらったり紙に書いてもらってそれを優先しても良かったかもしれません。
司会の采配も非常に難しいと思いました。過度な制限は新たな批判を招きかねず、かといって放任すれば収拾がつかなくなる、という綱渡りの状況でした。
それにしてもオンラインで会見が見られることが増え、4大マスメディアを介さずとも視聴者に現場の「リアル」が届く時代になりましたね。ますますメディアのあり方が問われる時代になったと思います。
それから「失敗した人は皆で責めて良い」「間違いを犯した(と思われる)人や組織には厳しく接していい」そんな悲しい風潮がここ数年SNSを中心に増えているように思います。今回の会見や一連の内容に関する意見にも、そのような動きがあるように感じました。