ARMの64bitの未来
"ARM TechCon 2011"でARMは、64bitアーキテクチャ(ARMv8)を発表しました。ARMv8の実際の製品は2014年ぐらいになるそうです。ただし、既にメモリは40bitまで拡張できるCortex-A15/7が発表されているため、メモリが足りないわけではありません。
現在(2011年)のスマートフォンの搭載メモリが1GBに到達している程度ですので、2年で2倍のペースで進んでも2014年は別段遅い時期ではありません。メモリ拡張も済ませているため、実質メモリ問題になることはありませんが。
省電力のためもには64bit化は不必要な気がしないでもありませんが、サーバ向けには必須のため、2014年程度に導入は妥当だと思います(もう少し早くてもよかった気がしないでもありませんが)。浮動小数点演算も倍精度に対応するようですし、消費電力あたりの性能と多コア化すればHPC向けに対応できる可能性があります。
ARM系チップをサーバに採用する話は少し前から出ています。"ARMのサーバの可能性"でも書いていますが、ARMのウェブサイトで稼動していたり、MarvellのARMADA XPはこの分野に目指しています。また、"HP、ARMベースのサーバーを来月にも発表か"と言うニュースもあるようです。
現在ARM Cortex-Aチップは製造数・販売数はスマートフォン・メディアタブレットの興隆による多くなっています。2012年にはWindows 8の登場でさらに多くなることが予想されます(最初はタブレットのみだと思いますが)。残る市場はサーバ及びその上に存在するHPCのみです。
エクサスケールのスパコンで一番問題になっているのは性能よりも熱です。スパコンの性能指標の一つにGreen500があるのは、決してエコのためではなく今後の展開を見据えたものになっています(運用コストも関係しているけど)。
またデータセンターのPUE(データセンタ全体の消費電力/IT機器の消費電力で1.0が最良の値)も気にされている現状です。さらに、寒い地域にデータセンターを建設を行っているWEBサーバメーカもあるほどです(これがいいことなのか分かりません。環境にどの程度影響を与えるのでしょうか)。
このため、ARMが目指している省電力のサーバ/HPC市場は決して無いわけではありません。いえ、潜在市場は非常に大きい可能性があります。
また、過去のIT業界で概ね下克上が成功しています。メインフレームはRISCによって市場を奪われ、そのRISCはx86に市場を奪われました。ムーアの法則のペースで性能向上するため、性能が低くてもキャッチアップは出来ます。
また、安いチップの方が市場規模が大きいため開発力を高めることも出来るメリットもあるでしょうし、消費電量を増やして性能上げることは簡単でも、消費電力を下げることはそれほど簡単ではないのでしょう(Atomがその顕著な例でしょう)。
現在CPUのアーキテクチャ的にはx86は絶大なる支持を得られていますが、将来もその地位が安泰である保証はどこにもありません。IT業界の過去の歴史を紐解けば多くの覇者が挑戦者に敗れたかは、枚挙に暇がないほどです。
このため、ARMのサーバは一定のシェアを奪うことになるでしょう。そのときの各プレイヤー(NVIDIAやMarvell等)やライバルのIntel/IBM/Oracle/AMDはどうなっているでしょうか。2014年には面白状況になっているかも知れません。