NVIDIAの次世代TegraであるKal-Elの感想
NVIDIAから、次世代TegraであるKal-Elのホワイトペーパーが公開されました。
この情報が公開されるまでKal-Elが不思議なチップでした。プロセスルールは前世代と同じ40nm、CPUのコア数が倍に増えてGPUも強化されるけど、消費電力は減少するとありました。CPUはTegra 2から変更がないため(Cortext-A9)、消費電力が減少する要素がまったく思い当たりませんでした。
今回の資料でCompanion Coreが1個搭載することで低負荷時にそのコアが動作して、消費電力を下げるとあります。
ARM系チップで携帯電話などに搭載されるCPUは、アプリケーション用のコアと通信用のコアを搭載して、待ち受け時には通信用の低消費電力だけ動かして省電力を実現するものがありますが、Kal-Elはそれをもっと高度に対応したもののようです。
スマートフォン・メディアタブレットでは、基本的には待ち受け中、音楽再生、ビデオ再生のときはCortext-A9のコアをフルに使うことが無いため完全にとめることができれば消費電力を下げることができるのでしょう。
ただ、一つ思うことは軽いサイトをブラウザで見るときはCPU負荷はそれほどかからないと思うのです。そのときに負荷が重くないときは動かないのでしょうかね。今のノートPCを見ているとブラウザで見ているときぐらいはもっと省電力でも良いような気がしないでもありません。
また、性能も公開されています。
ARM系チップでデファクトスタンダードなベンチマークであるCoremark PerformanceでKal-El(1GHz)が11,667と出しています。
Core i5-2410M(2.3GHz)が11,737なのでそこそこ高速に見えます。マルチスレッドベンチなので、シングルスレッドの性能は考慮する必要はありますが。
MicrosoftのイベントでARM系のWindows 8端末は触ることができない上にあまり速くなかったと言われています。ARM系への調整がまだ不十分なことと2012年にはCorterx-A15レベルのCPUとDirextX 11対応GPUを搭載されるため解消すると言われていますが、Coremark Performanceの結果だけ見ればそうは思えません。このあたりはどうなのでしょうか。
ただしでKal-Elは1.5GHzまで伸びると言われているので、もっと高性能にはなりそうではありますが。
ベンチ結果の中でMoonBat JavaScript Benchmarkがあります。これはSunSpiderをWeb Workerでマルチスレッドで処理するベンチマークです。結果は、CPUコア数に比例するため相応に向上しています。マルチコアをアピールするにはちょうど良いベンチなのでしょう(知らなかった...)。
性能に関してはGPUの強化が大きいのかゲーム系ベンチが概ね倍以上になっています。この結果だけ見るとTegra 2ではけっこう苦しかったんだなぁと思わなくもありません。逆に言えば、NVIDIAがAndroidマーケットとしてTegra Zoneを展開していますが、今後のKal-El登場でさらに高度なゲームが登場するかも知れません。Androidマーケットで成功するにはゲームかなと思ったりもしていますが、NVIDIAはどこまで成功させることができるか見ものです。
このように見てみるとNVIDIAがかなりTegraに注力しているのか見えます。私は、NVIDIAとしてはWindows 8に向けてデスクトップPCまでTegra系を浸透させるのではないかと思っていたのですが、モバイル系(スマートフォン・メディアタブレット)へもかなりプッシュしています。確かにスマートフォンの勢いを考えればそれが正しい選択に思えます(メディアタブレットのAndroid系が...)。
このあたりNVIDIAの姿勢がどの程度他のメーカやゲーム関連のエコシステムに影響を与えるのか興味が尽きません。