GPU競争の行方(2010冬)
"GPU競争の行方"以降でAMDとNVIDIAでフラグシップのGPUをリフレッシュしました。そこで、トランジスタ数とダイサイズの比較をしてみます。
・トランジスタ
・ダイサイズ
前回からリフレッシュされたデータは以下になります。
NVIDIA | Nov-10 | GeForce GTX 580 | 40 | 3000 | 520 |
AMD | Dec-10 | Radeon HD 6900 | 40 | 2640 | 389 |
性能に関しては、"イマドキのイタモノ"を参考にすると以下になります(GeForce GTX 480がない...)。
GPU | 3DMark Vantage (Graphics Test) Extreme |
3DMark 11 (Graphics) Extreme |
TDP |
Radeon HD 6970 | 10,477 | 1,601 | 320.8 |
Radeon HD 6950 | 9,006 | 1,413 | 261.5 |
Radeon HD 5870 | 8,201 | 1,397 | 271.7 |
GeForece GTX 580 | 12,761 | 1,771 | 392.9 |
GeForece GTX 570 | 10,876 | 1,521 | 353.4 |
Radeon HD 6970に関しては消費電力あたりの性能向上が良くありません。Radeon HD 6950は消費電力の性能は最もよく見えます(3DMark系は)。このため、Radeon HD 6950のCrossFireは消費電力はGeForece GTX 580並にも関わらず性能は飛びぬけています。
NVIDIAがビックダイ戦略をとったため、コストパフォーマンスはRadeon HD 48xxからはAMDに傾いていましたが、Radeon HD 6970は補助電源が8+6ピンになりビッグダイ系の様に見えます。AMDの戦略にぶれが生じたのでしょうか。
この問題は、TSMCが32nm世代をスキップしたためだと言われています。Radeon HD 6970は、32nm世代を使用する予定だったようですが、スキップすることになったため40nmを使用せざるを得ませんでした。Radeon HD 6970は、このおかげで消費電力あたりの性能は向上させることができず、しぶしぶ現在の仕様に落ち着きました。ムーアの法則どおり進むことがIT業界を支えている重要なファクターですが、それが出来なければ今回のような結果になります。
NVIDIAはGF100でいくつかのミスがあったため、そのやり直し版であるGF110で改善してきましたが、AMDのRadeon HD 6970はそういった意味ではうまくアップデートできていませんでした。
また、NVIDIAがビックダイ戦略に固執していた最も大きな理由であるGPGPUへの進出は、"Top500 CPUアーキテクチャの推移の考察(2010.11)"にようやく花開きました。さらに、IBMとAmazonからGPUを使用したクラウドサービスが公開されました。
2010年の春の時点で、GeForece GTX 480シリーズの発売が遅れていたためNVIDIAは大丈夫なのかと危ぶまれていましたが、半年も経過すると事情が大幅に変わりました。ハイエンドの消費電力は相変わらず多いですが、コストパフォーマンスの差は両社の製品で大きく違いはありません。
GPGPUと言えば、CUDAでNVIDIAで一定の広がりを見せています。AMDのOpenCL&Direct X11へのコミットは効果が出ているようには思えません。Radeon HD 6900でGPGPUへの対応をより強化されましたが、効果が出るのは時間がかかりそうです。
GPUが更新されても今のところゲームのベンチしか比較されないところが、現在のGPGPUの広がり具合を示していると思われます。もう少し他の利用が多くなることを期待したいです。
2010年末の両社の競争の足をひっぱたのはTSMCの32nmキャンセルですが、その事情も2011年には前に進みます。AMDはこれで経済的なダイに移行できると予想されますし、NVIDIAはたぶんビックダイ戦略を貫き通すことでしょう。
2010年のGPU競争は、前半はAMDが、後半NVIDIAが優勢だったように思えます(これは私の主観)。GPU競争の次のターンはどこが勝利するのでしょうか?
GPGPUとしての確固たる地位を築いたNVIDIAでしょうか、それともAPUを搭載するCPUを出すAMDでしょうか?伏兵として予想よりもパワフルなGPUを搭載するSandy Bridgeで参戦するIntelでしょうか(次のターンはなくても、次の次かな?)。それともダークホース的なARMのMali T604でしょうか。ついでにMali T604は、DirectX 11(ARMでDirectX 11をサポートするのは、Windows Phoneか、Xboxモバイルあたりがターゲットとしているのでしょう)をサポートするそうです。
2010年の状況や過去の結果を見るとGPUは優れた製品を出すと一気にパワーバランスが傾くため次の勝負の行方を予想するのは難しそうです。
関連
・Top500 CPUアーキテクチャの推移の考察(2010.11)・GPUを使ったクラウドサービス開始されますがこのままでいくのだろうか
・GPU Technology Conferenceの感想
・Top500 CPUアーキテクチャの推移の考察(2010.6)
・IBMのTeslaサーバの将来性
キーワード検索
AMD CPU Intel GPU NVIDIA ARM TI Qualcomm Marvell x86 x86 IBM POWER Oracle SPARC 富士通 TSMC GLOBALFOUNDRIES