AMD 2010 Financial Analyst Dayの感想
AMDが定例の2010 Financial Analyst Dayが行われました。Financial Analyst DayにおいてCPU等のロードマップの更新が行われたため、感想を書いてみます。
・モバイル系
モバイル系ロードマップは以下になっています。
Starsコア(K10)のLlanoがMainstream~Performanceで配置され、BobcatコアのOntario(9W)とZacate(18W)がEssentialとHD Notebookカテゴリを担当します。
2012年にはLlanoの後継のTrinityがnext-generation Bulldozerコアで登場します。Ontario/Zacateの後継は、Krishna/Wichitaでenhanced Bobcatとなり28nmの製造でリフレッシュのようです。Krishna/WichitaがTSMCなのかGFで製造なのかは明確に記載が見つかりません。TSMCの製造能力に疑問を持っているAMDがどちらを選択するかでOtario系の今後のシェアが決まりそうな予感がします(GFのbulkの製造も大丈夫かどうかわかりませんが)。
Trinity世代でようやくがBulldozerコアがモバイルにも浸透します。これは想定されたためそれほど意外なロードマップではないと思います。
Bobcatは以前よりクリアなダイ写真が公開されました。
左側がCPUだと思われます(上下がL2っぽい)。右側はIO系でしょうから、中央付近で最も場所をとっているところがGPUでしょう。そう思うとCPUは非常に小さいことになります。
Ontarioは75平方mmです。Ontarioに搭載されているGPUはRadeon HD 5450系だと言われています(UVD3にはチェンジされていると思いますが)。
Radeon HD 5450のダイサイズは62平方mmと言われています。BobcatコアはL2を含めて7.6平方mmみたいです。2個分は13.2平方mmとなります。両者を足し合わせるとちょうど75平方mm程度になります。CPUとGPUをつなげるクロスバーなどは設置しないといけないと思いますが、最適化などを行えば同サイズで収まるのではないかと思います。
APUを搭載したOntario系もLlano系もCPUよりもGPUにふったと言われていたため、武器を前面にだした製品のようです(Ontario系はちょっとふりすぎな感じもしなくもありませんが)。
また、Tabletsのカテゴリの進出は、2011年にはほんの少しだけしかはみ出ていないところ考えると、AMDとしてメディアタブレットへ本格参戦は2012年Wichita系からのように見えます。これは9WではARM系と戦うにはまだまだ多いのかも知れません。
・デスクトップ系
デスクトップのロードマップは以下になっています。
一番驚いたのは、Ontario系がデスクトップのSFFカテゴリに入っているところです。SFFのカテゴリは非常に売れているわけではありませんが、一定のシェアを確保しています。今までは省電力タイプを割り当てていましたが、2011年からBobcat系で行うようようです。Ontario系がMac mini等に搭載されると面白いのではないかと思います。
次に驚いたのが2012年に出荷予定のPerformanceカテゴリのKomodoです。CPU部分のNext-Generation Bulldozerなのは当然としてもAPUが搭載されていることが明確に記載されています。サーバカテゴリではAPUの文字は見られません。
AMDはサーバのローエンド版とデスクトップのPerformanceカテゴリは同じ製品を使いまわしてきました(HTのバスとか一部disableにしていたりしていると思いますが)。ですが、ここでようやくまったく違う製品を出してくるみたいです。それだけモジュール化で開発コストが減ってきたバリデーションを増やすことができるようになったのでしょうか。
・サーバ系
サーバ系のロードマップは以下になります。
毎年2コアずつ増やしているますが、気になるのは2012年に出荷予定のSepang/Terrmar系のコア数です。CPUのコア数は1を除く奇数はあまり存在しません。近年ではXbox 360のCPUが3コアなのが有名でしょう(AMDの3コアは4コアのうち1コアをdisableしているため除外)。
Xbox 360のCPUは4個目を置けそうな場所にL2キャッシュを配置しています。必要なコア数とシングルスレッドの性能の兼ね合いでキャッシュかCPUコアを選択していると思われます。
Bulldozerのダイ写真が以下になっています。
Bulldozer系は2コア1モジュールのため、8コアは4コアのShanghaiと同様に中心の点対称の配列になっています。6コアOpteron(Istanbul)は、4コアのShanghaiにL2の逆側に2コア足し感じで線対称的にコアを配置しました。
このため、Valencia/Interlagos系の次はInstanbul系のように線対称にして12コア化するものだと思っていました。ですが予想が外れて奇数の5モジュール(10コア)です。
加えるコアを90度回転させてくっつけるのもあるのかもしれませんが、複雑なCPUでそのようなことをしているのを見たことがありません。またIntelの様に直線に並べる可能性もありますが、今までのAMDのCPUを見ているかぎりその選択肢もないでしょう(CPUコアのサイズ等を考えると)。
このため、Valencia/Interlagos系は、Dunnington系の様にコアを配置できる場所にL3を配置する構成のするのかも知れません。
もしくは、将来的にCPUコアの変わりにAPUを搭載する案などもあるのかも知れません。
サーバのロードマップには2012年までにAPUの名称が見えません。ですが資料の中では"Fusion for Servers"の単語も見えます。このため、APUの搭載時期を考えているのではないかと思います。2012年まではAPUの普及が未知数すぎるためサーバCPUに搭載するリスクがありすぎるため控えていると思いますが、プロセスも1世代進んだころにはAPUの需要があれば搭載したいのかも知れません。
デスクトップ・モバイルにはAPUの搭載はトレンドだと思いますが、サーバCPUへの搭載は今のところ未知数すぎますが、HPC分野でNVIDIAのTeslaの躍進を考えるとサーバCPUにAPUを搭載するのは前倒ししてもいいように思えます。
・GPUロードマップ
既に発表されている分も含めて1Q'11分が公開されました。
NVIDIAの様に長期的なロードマップを公開されず、非常に近い将来しか公開されませんでした。Radeon HD6xxxシリーズ以降はまったく分かりません。GPUの開発スパンが短いため致し方ありませんが、残念です。
・まとめ
AMDは2011年に今のCPUのラインナップを大幅に変更します。Llanoが遅れているのは残念ですが、一番気になっていたBulldozerのZambeziの出荷が2Q'11なのは好材料に思えます。またOntario系がすでに出荷されていることを考えると1Q'11に製品が発表されそうです。AtomやCULVに対抗してどの程度の性能及び価格で出てくるのか気になります。
Bulldozer等が、ライバルに対して十分な性能と出荷量が確保されれば2011年はAMDにとって面白そうな年になりそうです。
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