お母さんは家にいなくて良い---ヤンママと子どもが幸せになるための「元祖ヤンママ、8つの習慣」(1)
"お願いだから、もう、子どもを殺さないで欲しいのです~「児童虐待の実際」"の続きである。
<元祖ヤンママに育てられた私の記憶>
私が小学校低学年の頃ことだ。学校が終わり、外で遊んだ後、自分でカギを開けて家に入ると、きれいに片付けられた誰もいない部屋のテーブルに、母が作ってくれた二人分の「夕食」が置いてあった。たまに、疲れて食事を作れないこともあったようだが、そんな時はお金が置いてあった。
そしてテーブルには、
「あたためて食べてください。きょうも、おそくなるから、ねててね」
「エスミ(近所の売店)でパンをかって食べてください。ごめんね」
などとメモがあった。
私は夕食を暖めて食べ、風呂に入った後、テレビを見たり宿題をしたりしながら、毎日、夜11時過ぎ頃まで「カギを開ける音」を待った。
母は「水商売」につとめていたため。家に帰ってくるのが、夜の11時過ぎになるからだ。また、彼氏と遊んでいて遅くなることもあった。
夜8時過ぎには、弟が寝てしまうため、
夜9時から11時は、わたし一人でテレビを見るのが習慣になっていた。当時は、毎日どこかのチャンネルで映画をやっていた。「大脱走」「ベンハー」「猿の惑星」「2001年宇宙の旅」など1960、70年代の映画は小学生時代に、すべて見ただろう。
しかし、夕方までしっかり遊んできた小学校低学年の子どもにとって、11時過ぎまで一人で起きているのは極めて難しい。
歌をうたってみたり、走ってみたり、逆立ちをしたり、一人でウルトラマンごっこをしたり、冬に窓を開けっ放しにしたり、いろいろな工夫をしながら母の帰りを待っていたが、気がつくとコタツや台所のイス、廊下などで寝てしまうことが常だった。
一度寝てしまうと、となりの家が火事になった時でさえ起きなかった私だが、母が帰ってきた時の
「カギを開けるわずかな音」
で、目が覚めた。
そして、母が帰ってきた「カギの音」がした瞬間に私は飛び起き、寝ていたことがばれないように目をふきながら、主(あるじ)が帰った時の犬のように廊下を走って、元気に「お帰り~」と言いながら、扉が開いた瞬間に母に抱きついた。
お酒やタバコ、香水、ミートソースなど、いろいろなものが混じった匂いがしたが、とにかく抱きしめてもらって、顔を埋めたかった。
母は
「まだ起きてるの?だめじゃない、早く寝なきゃ~」
と言いながら、いつも私をギューっと抱きしめ、抱っこして布団に連れて行ってくれた。そして、私は安心して布団に入り、風呂から出てくる母を待ちながら深い眠りに入るのである。
子どものころは、母と顔を会わせる時間は短かったが、私は本当に幸せだった。
母が「水商売」であることも、平日はほとんど「会えない」こともまったく苦にならなかった。 あたたかい布団と食べ物があり、待っていれば母が抱きしめてくれる。
これほどの幸せが、どこにあろうかと子ども心におもっていた。
そんな昔のことを、
「ケンちゃんには本当に、かわいそうなことをした」
と、母はいつも言うが、私は本当に幸せな記憶しかない。
そして、今、私が幸せな人生をおくれているのは母のおかげだと、心から感謝している。 さらに、母からもらった幸せを、今度は私が自分の子どもと妻に与えようと努力をしている。
19歳で結婚し、20歳で私を生んだ
「元祖ヤンママ」
である母は、今では68才のおばあちゃんになった。
沢山の彼氏と次々と付き合ってきたが、なかなか再婚せず、結局、45歳で大手通信会社のやさしいサラリーマン男性と再婚し、息子の一人はIT会社を作り上場させて会長になり、もう一人は最大手外資系IT会社の部長となった。
そして、その息子(つまり、私)も幸せな家族を作り、そのうちの二人の孫娘は女子大生となった。
早く子どもを生んでいるため、孫が"母が結婚して子どもを生んだ年齢"になっているのだ。
母が泣くところを何度も見た。 私がやること、私がやらないことで、どうしても許せないことがあるときには、怒るかわりに抱きしめてその思いを語った。語りながら泣いていた。 彼氏のことや、仕事での嫌な事も、私に泣きながら話した。
大切なお母さんを泣かせてはいけないと思った。
<幸せな人生をおくれるヤンママになるための7つの習慣>
前回の記事で書いたが、「児童虐待」の家庭環境として、もっともの多いのが
・ヤンママの母子家庭
・同居人の彼氏
という組み合わせである。 仕事と子育てに追われ、自由がなく、母親失格だという思いから、精神的、金銭的に追い込まれていくからだそうだ。
しかし、「元祖ヤンママ」である私の母の子育ての中に、今のヤンママが追い込まれずに自分と子どもを幸せにする秘訣を見ることが出来る。
その8つの秘訣とは、
1.子どもを家に残して仕事や遊びをしてもいいので
「一日一回は、子どもを抱きしめる」
2. 用意できないときは、コンビニ弁当でもお金を置いていくだけでもかまわないので、
「子どもの食事を用意してでかける」
3.生活のため、自分の心の余裕のために、水商売でもいいから
「少しでも高い給料がもらえる仕事につく」
4."しつけ"は子どもを叱り、怒りをぶつけ、暴力の元凶、言い訳となるため
「こどもに、しつけをしようとしない」
5.困ったとき、悩んだとき、子どもが言うことをきかないときは
「子どもに相談しよう。我慢できなければ子どもの前で泣こう」
6. こどもとコミュニケーションをとるために、まめに、
「メモ、交換日記でメッセージを伝える」
7. 一年に2、3回でいいから
「外出して親子でおもいきり遊ぶ」
8.彼氏とのつきあいで、家に帰るのが遅くなってもいいから
「彼氏とは外で会い、家には入れない。子どもが高校生になるまでは結婚しない」
である。
これらを見て、「こんなもの子育てとは言えない」と言う方もいるだろう。しかし、お母さんに余裕があってこそ、理想の子育てに取り組めると私は考えている。 まずは、自分に余裕と自由を与え、子どもに最低限の生きる権利と自由を与えたいのだ。
次回、時間があるときに、私の体験をもとに、8つの習慣をもう少し解説をしたい。
<この記事を読んだ方へのお願い>
この2回の記事に限っては、私はアクセス数を期待しない。 しかし、この体験とヤンママとしての母の生き方を少しでも多くのヤンママに見て欲しいと思っている。
ITmediaにアクセスされている方の多くは、このような境遇の女性ではないとだろう。
そこで、たまたまこの記事を読んでいただいた方にお願いがある。 皆さんのまわりに、
・ 母子家庭
・ ヤンママ
がいれば、ぜひ、この記事の内容を伝えていただけないだろうか。1%でも1人でもいいから、子どもを助けたいからだ。
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