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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

『ガラスの仮面』の考察 ー同心円上に物語が進む理由とはー

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漫画『ガラスの仮面』では昔あったことと"似たできごと"が複数回、繰り返されてきました。 たとえば

  1. 北島マヤの手が速水真澄の顔にふれる
  2. 星を二人で観る
  3. 速水真澄が北島マヤにコートをかける
  4. 2人がばったり出会う
  5. 速水真澄が北島マヤを守るために抱きしめる
  6. 北島マヤが速水真澄を抱きしめる

等が思い浮かびます。

参考:『ガラスの仮面 30 Kindle版


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「2人で星を観る」に関しては、別記事「漫画『ガラスの仮面』の物語完結のカギは速水真澄のIT化・前編」で既に考察しました。

夏目漱石『明暗』と同じように漫画『ガラスの仮面』は同心円上に物語が進んでいきます。そして同じような事を繰り返してゆっくり進んでいた物語がだんだん加速していき、最後は直線的に結末へと進んで行くのではないか、と考察しました。 

私見では永井孝尚さんの『売れる仕組みをどう作るか トルネード式 仮説検証(PDCA) 』の表紙に登場している、"PDCAのスパイラル(=3次元の円錐のようなスパイラル)"で捉えるのが良いのではないかと考えています。

同じようなシチュエーションを繰り返しながら、円の直径が徐々に短くなっていき、話の展開が早まっていくという考えです。

スパイラルの参考画像:
売れる仕組みをどう作るか トルネード式 仮説検証(PDCA) 』より
 
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実際、2008年に別冊花とゆめで連載が再開されてから、単行本の発売ペースは上がっています。41巻から42巻が出るまでに6年、42巻から43巻が出るまでに4年かかりました。しかし43巻以降発売のペースが上がりました。

  • 41巻:1998/12
  • 42巻:2004/12/16
  • 43巻:2009/1
  • 44巻:2009/8/26
  • 45巻:2010/9/30
  • 46巻:2010/10/29
  • 47巻:2011/7/26
  • 48巻:2012/2/25
  • 49巻:2012/10/5

41巻から49巻までの間は、おおよそ半年から1年に1冊は発売されています。過去の未刊行原稿と重複するストーリーもあるためかもしれませんが、物語の進展が43巻以降はスピードアップしています。

それにともなって過去に起きたエピソードと既視感がある出来事が発生します。しかし類似したことが起こることによって、過去と現在では登場人物の状況や考え方が変わり、それにともなって行動も変わっていきます。

参考:『ガラスの仮面 37巻(kindle版)


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速水真澄と北島マヤは自分の感情に向き合い、相手に素直に感情を伝える。相手を思いやるという課題に取り組んでいる様が伺えます。

本来の自分と社会的な立場を演じている自分との葛藤に向き合いながら、北島マヤは阿古夜という仮面をかぶって速水真澄に愛の告白をし、速水真澄は大都芸能社長・速水真澄という仮面を外して北島マヤに想いを伝えています。

仮面をかぶることで本音を伝える。そして仮面を外すことで本音を伝えるという現象が起きています。

参考:『ガラスの仮面 26巻(文庫版)

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『ガラスの仮面』という物語は演じるをテーマにした漫画であり、そして仮面・ペルソナを利用することで感情に向き合い本来の自分に向き合う漫画でもあります。演じることは別人の仮面をかぶることでありつつ、心を開放するという間逆な要素を内包しているようです。

単行本47巻は「奇跡の人」のヘレン・ケラー役で北島マヤが主演女優賞を受賞した時のダンスシーンや梅の里で星を見た時など、過去にあったことと類似したことが登場しました。シチュエーションは類似しているにもかかわらず、北島マヤの言動は変わっています。それによって北島マヤが少女から大人の女性に成長していたことを速水真澄は自覚させられます。

同心円上にゆっくり伏線を張りながら進んでいた物語は物語完結に向けて単行本47巻以降、急速に進展しつつあることが読み取れます。

>>「『ガラスの仮面』の考察 ー北島マヤが速水真澄の顔に触れる意味ー」につづく

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