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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

【祝・オルタナティブ・ブログ10周年】"10"にまつわるタロットカードと、"サクセスフル・エイジング"について

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オルタナティブ・ブログが、ついに10周年を迎えました。お祝いとして、今年は10にまつわるタロットカードの話を書きます。なぜタロットカードかといいますと、"サクセスフル・エイジング"に役立つかもしれないからです。

タロットカードについて

タロットカードには、「愚者」「魔術師」「女教皇」「塔」「死」「太陽」「世界」など、人生で経験する様々な出来事を象徴する大アルカナ(22枚)があります。その他、日常生活の細々としたことを象徴した小アルカナ(56枚)があります。合計で78枚です。

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小アルカナにはトランプのスートのように、

  1. カップ(杯) ←ハートに相当
  2. ソード(剣) ←スペードに相当
  3. ワンド(杖) ←クラブに相当
  4. ペンタクル(硬貨) ←ダイヤに相当

の4種類があります。

小アルカナには、1から10のカードに加えて人物のカードがあります。トランプのジャック、クイーン、キングと似ています。

  1. ペイジ(従者) ←10代後半から20代前半くらいの少年の絵
  2. ナイト(騎士) ←20代後半から30代前半くらいで、馬に乗って勢いよく走る青年の絵
  3. クイーン(女王・妃) ←キャリアウーマン系の大人の女性の絵
  4. キング(王様) ←40代以上の貫禄があるリーダーの絵

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タロットカードには、人生の悲喜こもごもが象徴されています。例えば、カップの2は男女二人が楽しそうに乾杯をしています。この二人は何に乾杯しているのでしょうか?

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カップは愛情や感情、感受性と関連があるカードです。カップの2は契約を結んだり、契約が叶うという意味があるそうで、結婚を連想させるカードです。タロットカードの意味は、イラストをよく見ると、ちゃんと細かく伏線まで書いてあるのが面白いところです。

カップの5は地面にカップが五つ転がっていて、黒いマントを着た人はうなだれています。カップから流れている赤い液体は、果たしてなんでしょうか?

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これは血ではありません。正解は赤ワインです。どうやらこの人は飲んだくれてしまって、次の日に思いっきり後悔しているみたいだぞ! と絵から読み取れます。私は親しい人が死んだ悲しみを表している、と長い間勘違いをしていました。

Ⅹ(10)のカード

今回、注目している10のカードは4枚あります。

  1. カップ(杯)の10
  2. ソード(剣)の10
  3. ワンド(杖)の10
  4. ペンタクル(硬貨)の10

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カップの10は、家族で幸せそうに過ごしています。虹がかかっているし、愛があふれて幸せそうです。しかし、ソードの10は凄惨な絵が描かれています。空は真っ暗で、うつぶせになった人に剣が10本刺さっていいます。見ただけでぞっとするカードです。

ワンドの10は、中世ヨーロッパの農民のような服をした人が、大きくて長い棒10本ををお城に向かって引きずりながら運んでいます。ものすごく大変そうです。費用対効果がどう見ても悪そうなのに、この人はなぜ一人で棒を運んでいるのでしょうか。

ペンタクルの10は、カップの10同様に家族が描かれています。ぶどうがたくさん庭に実っていて、お金も家中に実っています。なんだか儲かっていそうなイラストです。

私が購入したRIDER WAITE TAROT(日本遊戯玩具株式会社)の解説冊子によると、各カードの正位置の意味は、

  1. カップ(杯)の10 = 幸せ、平和、満足をうる、ラブ、結婚、家庭
  2. ソード(剣)の10 = 苦しいとき、困難、失望する、家庭の破壊
  3. ワンド(杖)の10 = 重い負担、疲れる、やり遂げることが困難
  4. ペンタクル(硬貨)の10 = 富、相続、金銭を手にする、家を買う

という解説がされていました。

Ⅰ(1)のカード

比較として、1のカードを見てみますと、

  1. カップ(杯)の1 = よろこび、幸せ、ラブ、結婚、満足、楽しい出来事、順調、良い家庭、良い縁談、ファッション、趣味の開花
  2. ソード(剣)の1 = 力で勝ち取る勝利、繁栄、成功、征服、優勝、決断する、スポーツ
  3. ワンド(杖)の1 = ことの始まり、出生、開始、就職、入学、結婚、合同、会の結成、発明、出世、よい別居、新しいロマンス、新しいチャンス
  4. ペンタクル(硬貨)の1 = 大変良いカード。成功、成就、繁栄、幸福、金銭的な満足、コレクション、良い住居

と解説されていました。※RIDER WAITE TAROT(日本遊戯玩具株式会社)の解説冊子から引用

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タロット占いの解説サイトを読み比べた限りでは、雲から出ている手="神の手"を示すようです。杖から芽が出ていたり、カップから愛情の水がこぼれ落ちるほど満ちていたり、ポジティブな印象を受けるカードばかりです。

Ⅴ(5)のカード

次に、1と10の中間・5のカードを見てみます。

  1. カップ(杯)の5 = 愛のない交際、見合い結婚、不完全、欺まん
  2. ソード(剣)の5 = 失敗、破壊、反対者の力、降格、おくびょう
  3. ワンド(杖)の5 = よく働く、闘争、訴訟、努力を続けること
  4. ペンタクル(硬貨)の5 = 失業、貧乏、孤立、さまよう、金銭や友人に恵まれない

と解説されていました。RIDER WAITE TAROT(日本遊戯玩具株式会社)の解説冊子から引用

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どのカードもシビアな現実を示しているかのような、厳しい状況が描かれています。特にペンタクル(硬貨)の5は、怪我をした人とうつむく付き添いの人の様子が見ていてつらいです。世間の目から逃げようと、いたたまれずに急いで通り過ぎようとしているかのような印象を受けました。

タロットカードが示すもの

1のカードはこれから何かが始まったり、若者がエネルギッシュに人生を切り開いている様子がうかがわれます。しかし、中間の5のカードは、挫折を経験したり、議論・戦いをしていたり、欺瞞だったり、貧困だったり、困難や先が見えない苦しさを連想させます。

10のカードまでいくと、幸せになるか不幸のどん底かは人それぞれですが、行き着くところまで到達した結果が示されている印象を受けます。ここまで分析してみて気がついたのは、タロットカードは心理学者・ユングが人生を太陽の運行に喩えたのと同じ事をしているのではないか、という疑問です。

"サクセスフル・エイジング"に向けて

ユングは人の一生を毎日の太陽の運行にたとえました。午前中の太陽は天高く上るにつれて広い範囲を照らします。上昇し拡大していく自分に誇りを感じます。しかし、頂点を極めたのちは下降するしかありません。毎日登る太陽と違って、一回限りの人生を生きている個人は自分の南中点の予測ができないため、転換は突然やってきます。しかし、自分が人生の午後に入ったことに気づいたならば、午前中の価値と理想を変えなければなりません。世界に惜しみなく降り注いだ光を、今度は自分自身を照らすために回収しなければなりません。過去を懐かしんだり青年期の生き方に固執したりするのではなく、人生後半の現実から目をそらさずに、これまでの人生で社会的地位や人づきあいや家族のために捨て去ってきた自分の一面を真剣に考察することが必要になります。

※『キーワード心理学5 発達』新曜社 p.124より引用

タロットカードは占いを通して、ユングが言いたかったことと同じ事を伝えようとしているのではないか、と思うようになりました。

前掲書によると、人間は35歳前後で中年の危機と呼ばれる人生の転換点にぶつかることが多いそうです。仕事などでスランプになったり、今までやってきたことを大幅に変えたりするそうです。残りの人生をどうやって生きていこうか、現実的に考える意識が強くなるからなのでしょうか。

子どもがいる女性の場合は、子が自立して実家を出たあとに、鳥の巣症候群と呼ばれる抑鬱状態を経験する場合があります。自分は何のために生きてるのか、私の役割は何なのか、わからなくなると、虚無感を抱えて悲嘆に暮れたり、希望を持つことができにくくなってしまいます。

生きていると、絶望するような出来事も時に起ります。タロットカード78枚には、いいことも良くないことも、人生で経験する様々なことが描かれています。したがって、占いを通して自分の人生に向き合い、改善するヒントを得ることができるのではないか、と考えるようになりました。

『キーワード心理学5 発達』には、"サクセスフル・エイジング"という言葉が紹介されています。

長生きが一般化した現在、単に長生きするだけでは幸運と言えなくなりました。現在では加齢に適応し幸福な老年期を送るサクセスフル・エイジングが求められています。
※前掲書 p.128

カップのカードは人との交流を、ワンドのカードで知性や労働を、ソードのカードは人生を切り開いたり、人生の厳しさに向き合うことを、ペンタクルスのカードは豊かさを表しているように感じています。

1から10のカード、人物が描かれたペイジからキングのカードに向かって、人が子ども期から老人期に向かって成熟するまでを描いています。幸せを感じるのに必要な要素を、タロットカードは示している気がしています。

歳をとればとるほど幸せになるにはどうしたらよいのか。単なる占いとしてだけでなく、各数字に着目してタロットカードを見てみると、自分の人生に向き合い、考える際に役立つ気がします。

加齢に適応しながら幸福な人生を過ごすヒントになるのではないでしょうか。今回の話はあくまでも、雑談として受け止めて下さいね。

参考文献など

高橋 晃『発達 (キーワード心理学シリーズ)

▼小アルカナ TARO.com Japan
http://jp.tarot.com/tarot/article/about-tarot-cards-minor-arcana

▼栗原類×濱口善幸のタロット見習い 連載一覧
http://cocoloni.jp/culture/20526/

▼タロットキーワード一覧 きつねのタロット占い
http://www.kitsune.ne.jp/kitsune/tarot/keyword.html

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