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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

【書評】小俣 光之 『プログラムは技術だけでは動かない  プログラミングで食べていくために知っておくべきこと』

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プログラミングで食べていくために知っておくべきこと

私はノン・プログラマーですが、挑戦的な書名『プログラムは技術だけでは動かない ~プログラミングで食べていくために知っておくべきこと』に惹かれて購入しました。仕事で成果・利益を上げるために、社会人全般が知っておいた方が良い知恵・考え方が書かれています。ですので、自己啓発本としても楽しめます。

この本は、

  1. 技術力があるのに、仕事では通用しない人がいるのはなぜか ←問題提起
  2. プログラマーに必要な仕事力について ←解説
  3. どうしたら、プログラミングで生涯、稼ぎを得る人材になることができるのか ←問題の解決法

について、書かれています。

参考:小俣 光之『プログラムは技術だけでは動かない ~プログラミングで食べていくために知っておくべきこと

※上記書籍のリンクURLはAmazonアソシエイトのリンクを使用しています。

プログラマーとして、社長として活躍する著者・小俣 光之 さんの体験に基づく本なので、読みやすいです。社会人として知っておくと良いことが書かれているので、プログラマー以外の職業に付いている人も、役立つ内容です。

構成は、

  1. なぜ、技術力はあるのにいつまでも仕上がらないのか
  2. 意味の無いルールやプロセスに縛られるとうまくいかない
  3. 理想を詰め込んだ製品は喜ばれるわけではない
  4. 人とのつながりが技術を生かす
  5. 付加価値の高い仕事を得るには
  6. 「2人プロジェクト」で新しいことを成功させる
  7. 受託開発から製品開発・販売へ
  8. 自分で事業部を立ち上げ、運営する
  9. 日本の製品を世界で動かす
  10. 一生、プログラマとしてメシを食っていくには

の10章立てです。

特に面白かった点

なぜ、技術力はあるのにいつまでも仕上がらないのか

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プログラマーに限らない話ですが、第1章の

「どれだけ立派なプログラムを開発しても、だれにも使われなければ意味があるのかな?」という感じに優しく諭されたのです。(前掲書 21頁より引用)

は、ものを売る業種、サービス業、広告関係など他業種にも共通する話ではないでしょうか。

「自分が売れる! 」と思って開始したサービス・商品が売れないことは多々あります。「他人からこういうのはない? 」と言われて作った製品ほど売れたという事例も参考になりました。

また、「時間がたつほど、相手の要求水準は高くなる(前掲書 35頁より引用)」も考えさせられました。

できるだけ丁寧に仕上げたい気持ち、完璧に仕上げたい気持ちが大きすぎると、時間をかけすぎてしまいやすい。そのため、「仕上がった」と思っても作り直しになることがあり、素早い対応がしにくくなります。

むしろ、早く状況を把握して、まちがった方向に行かないように意思疎通を図れる方がはるかにうれしいと考えています。(前掲書 37頁より引用)

懲りすぎずに、応用性の高いプログラムを、素早く対応していくためのコツが書かれています。

人とのつながりが技術を生かす

第4章の「部下に不安がらせないように質問の意図を伝えた方が良い(前掲書 89~91頁参照)」というところや、「話し合いが紛糾したときにどう対応した方が良いか(94~97頁参照)」も他業種で役立ちそうな点です。社外の人脈を作りたい人にお勧めです。

受託開発から製品開発・販売へ

そして、製品事業・製品開発をしている場合、「製品で稼げるまでの間、どうやって食いつなぐのか」は、シビアな問題です。

私が見聞きした範囲だけでも、

  • 請負の仕事から抜けられなかったり、
  • 自社製品がこけて大変なことになっている例

を見かけます。

そのような場合の解決方法は、

受託仕事で稼ぎながら、製品開発も続ける(前掲書 165頁より引用)

それを可能にする方法は、前掲書164~165頁でご確認ください。

日本の製品を世界で動かす

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第9章・タイの通信事業の実話も、興味深かったです。タイの国民の1/3以上がLINEユーザーというデータも驚きですが、通信回線がパンク状態なのに動画視聴率は世界2位という話も驚きでした。

国によってニーズが違うことを踏まえて、

  • すでにタイに進出している知人に協力を求めたうえで、国外進出
  • ネットワーク系のプログラミングが得意という強みで、タイの通信回線のパンク状態を改善する取り組み

という取り組みにチャレンジ。良いパートナーを見つけるためには、第10章の「自分が何を得意か知ってもらう」という活動も欠かせないでしょう。

一生、プログラマとしてメシを食っていくには

昔は幅広くなんでもできる人が重宝されていたようですが、最近はオフショア開発が浸透し、人件費が安い海外の国の専門家に依頼する方が安くできるようになりました。「不景気で武器になるのは、結局『得意分野』(前掲書 231頁)」を心したいものです。

まとめ

本記事では書ききれませんでしたが、

  • リーダーとして部下にどう接したら良いのか
  • 製品の価格の設定について
  • プロトタイプを効率よく作る方法

など、実話に基づいた様々なTIPSが書かれています。

テクニカルな話題だけでなく、ビジネス、キャリア開発・自己啓発に関する話題も多めです。私のようなノン・プログラマーにも楽しみながら読むことができます。著者の体験に基づいたお話ですので、ノンフィクションとしても面白いですよ。同じ著者の以下の本と読み比べるのも、通な読み方でおもしろいかもしれません。

参考:小俣 光之 『プログラミングでメシが食えるか!?―成功するプログラマーの技術と仕事術
479801558X
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今回紹介した書籍

小俣 光之『プログラムは技術だけでは動かない ~プログラミングで食べていくために知っておくべきこと

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