新入社員研修で伝えていること 独学の大切さ
新入社員研修で伝えなくてはならないと感じていることとして、「インデックス」と「凄さ」について、これまでのブログで書きました。この記事では「独学」について考えてみます。
変化の速いITに関わる上で、最新の動向をいち早く掴み、自分の武器にできるかどうかは、仕事の成果に直結します。ひいては、社会的格差を拡げることになります。
しかし、ビジネスの現場では、そのような最新のテクノロジーを直ちに使うということは、限られています。仕事の8割は、現状の維持や変更・追加ですから、現場にしか関心を持たず、世の中の変化に目を向けなければならない切実感はありません。
しかし、時間が経って何気なく世間を見れば、浦島太郎になっている自分に愕然とすることになります。世の中の常識とはかけ離れてしまい、会社の中では通用するけど世間に通用せず、結果として、自分の人生の選択肢を狭めてしまいます。
私は、ITに関わる仕事をしている人たちに、ITの最新動向やビジネス環境の変化について講義をしています。そんな人たちが、あまりにもITのいまの常識を知らないことに驚かされることがあります。例えば、次のようなことです。
- Armとは何か、何に使われているのか
- コンテナ、マイクロサービス、サーバーレスとは何か、仮想化との違いや関係
- 人工知能、機械学習、ディープラーニングの関係
- アプリケーション、プラットフォーム、インフラストラクチャーの違いや関係
- SaaS、PaaS、IaaSの違い
- 境界防衛を前提としたセキュリティとゼロトラスト・ネットワークを前提としたセキュリティの違い
- アジャイル開発の思想と手法、ウォーターフォール開発との違い
- DevOpsの意味と何をすることなのか
まだまだ挙げればキリがありません。ここにあげたことは、何ら新しいことでもありません。しかし、このようないまの常識を持たないままに、新しいテクノロジーやサービスが登場しても、その価値やビジネスへの影響を考え巡らすことはできません。ましてや、基盤モデルや生成AI、LLMといった新しいテクノロジーやApple Vision Proといた、これまでにない製品の登場が、今後の自分たちの日常や社会、ひいてはビジネスにどのような変化を強いるのかを想像することもできません。まさに浦島太郎です。
新しいことばかりではありません。ITに関わるならば、数学や統計学、コンピューターサイエンスなどの基礎を作っておかなければ、新しいことの意味や価値を正しく評価できませんし、新しい常識にすぐに対応することはできません。「新しいこと」とは、そのほとんどが基礎の応用です。基礎があれば、新しいことを迅速に自分知識の構造に組み入れることができます。
「仕事とは、生活のためのお金を稼ぐ苦役」と捉えていれば、そんなことはどうでもいいことです。自分に与えられた「苦役」を我慢しつつもひたむきにこなしていけばいいわけです。しかし、「仕事とは、自分の人生を豊かにするための成長の機会」と捉えているのなら、そして、その機会をITの仕事に求めたのなら、会社の常識ではなく、世の中/社会の常識に関心を持ち、知識やスキルを磨かなければ、社会的な価値を貶めてしまいます。
同じ会社で一生働きそこに骨を埋めるにしても、転職して新たな機会を求めるにしても、それぞれの選択の中で、自分価値を高めるには、基礎といまの常識、これからの常識は、土台です。
そのような常識を学ぶ機会を会社が与えてくれるなんて、期待すべきではありません。会社というのは、いまの仕事のパフォーマンスを高めることには、いろいろと世話を焼いてはくれますが、個人としての社会的評価を高めることや、会社の仕事には直接的、あるいは、直ぐには影響を与えないことには、何もしてくれません。事実、社内研修の予算配分は、新入社員研修と役職昇進時の研修に集中しています。実務に直結することには、投資しますが、そうでない時期の研修は、極めて限られているのが実情です。つまり、会社の仕事に直接関わらないことはやりませんよと言うことです。それは、当然のことです。そんなことを会社に期待することはできません。
「会社で評価される人間になるな!社会に評価される人間になれ!」
新入社員研修で必ず伝える言葉です。会社に評価されるレベルになっても、それでは世間では通用するとは限りません。逆に、社会で評価されれば、それは、結果として、会社でも評価されます。そういうところを目指して、自分を成長させるには、独学による自助努力しかないわけです。
笑い話のようなことですが、40代半ばの方が転職面接で、「あなたが自信を持ってできることは何ですか?」と聞かれたそうです。そして彼は、「部長ができます!」と自信を持って答えたそうです。彼がいた会社の中では、「部長ができる」は、評価されるかも知れません。しかし、社会的にはなんの評価にもなりません。当然、転職はうまくいかなかったようです。
新入社員の時代には、社会人の常識、この会社の常識、最低限の仕事のスキルを身につけることに精一杯であり、こんなことを考える余裕などないと思います。ただ、いつまでもそれではいけないし、そんな期間は直ぐに過ぎてしまいます。2、3年も経てば、自他(他とは社内の人や上司)ともに「一人前」に会社の稼ぎの大半を占めるルーチンワークをこなせるようになります。これで満足して、「学びを辞めてしまう人」もそれなりにいます。
しかし、常に社会の常識に目を向けて、会社の基準ではなく、社会の基準で自分を冷静に見つめられる人は、いつまで経っても「一人前」感を持つことができず、不足を感じ、学び続けるでしょう。そして、「部長ができます!」なんて、恥ずかしいことを言わなくても済むだけの、世間に通用する社会的価値を身につけているはずです。
「成長=経験の密度×時間」
こんな話しもします。「時間」は誰に対しても平等であり、自分の意志や努力で変えることはできません。しかし、「経験の密度」は、自分次第です。早く成長したければ、「経験の密度」を高める以外に手はありません。そのための手段の1つが、「独学」なのです。
「独学」とは、次のようなことをすることです。
- 自分の意志でテーマや目標を設定する
- 誰かに頼ることなく自分で目標を管理し行動する
- 学んだことを実践し、世の中に晒して評価を受け、改善を継続する
では、どうすれば、そんな独学ができるようになるかですが、それは明日書いてみようと思います。
【募集開始】新入社員のための「1日研修/1万円」・最新ITトレンドとソリューション営業
最新ITトレンド研修
社会人として必要なデジタル・リテラシーを手に入れる
ChatGPTなどの生成AIは、ビジネスのあり方を大きく変えようとしています。クラウドはもはや前提となり、ゼロトラスト・セキュリティやサーバーレスを避けることはできません。アジャイル開発やDevOps、マイクロ・サービスやコンテナは、DXとともに当たり前に語られるようになりました。
そんな、いまの常識を知らないままに、現場に放り出され、会話についていけず、自信を無くし、不安をいだいている新入社員も少なくないようです。
そんな彼らに、いまの常識を、体系的にわかりやすく解説し、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうと、この研修を企画しました。
【前提知識は不要】
ITについての前提知識は不要です。ITベンダー/SI事業者であるかどうかにかかわらず、ユーザー企業の皆様にもご参加頂けます。
ソリューション営業研修
デジタルが前提の社会に対応できる営業の役割や仕事の進め方を学ぶ
コロナ禍をきっかけに、ビジネス環境が大きく変わってしまいました。営業のやり方は、これまでのままでは、うまくいきません。案件のきっかけをつかむには、そして、クローズに持ち込むには、お客様の課題に的確に切り込み、いまの時代にふさわしい解決策を提示し、最適解を教えられる営業になる必要があります。
お客様からの要望や期待に応えて、迅速に対応するだけではなく、お客様の良き相談相手、あるいは教師となって、お客様の要望や期待を引き出すことが、これからの営業に求められる能力です。そんな営業になるための基本を学びます。
新入社員以外のみなさんへ
新入社員以外の若手にも参加してもらいたいと思い、3年目以降の人たちの参加費も低額に抑えました。改めて、いまの自分とこれからを考える機会にして下さい。また、IT業界以外からIT業界へのキャリア転職された方にとってもいいと思います。
人材育成のご担当者様にとっては、研修のノウハウを学ぶ機会となるはずです。教材は全て差し上げますので、自社のプログラムを開発するための参考にしてください。
書籍案内 【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版
ITのいまの常識がこの1冊で手に入る,ロングセラーの最新版
「クラウドとかAIとかだって説明できないのに,メタバースだとかWeb3.0だとか,もう意味がわからない」
「ITの常識力が必要だ! と言われても,どうやって身につければいいの?」
「DXに取り組めと言われても,これまでだってデジタル化やIT化に取り組んできたのに,何が違うのかわからない」
こんな自分を憂い,何とかしなければと,焦っている方も多いはず。
そんなあなたの不安を解消するために,ITの「時流」と「本質」を1冊にまとめました! 「そもそもデジタル化,DXってどういう意味?」といった基礎の基礎からはじめ,「クラウド」「5G」などもはや知らないでは済まされないトピック,さらには「NFT」「Web3.0」といった最先端の話題までをしっかり解説。また改訂4版では,サイバー攻撃の猛威やリモートワークの拡大に伴い関心が高まる「セキュリティ」について,新たな章を設けわかりやすく解説しています。技術の背景や価値,そのつながりまで,コレ1冊で総づかみ!
【特典1】掲載の図版はすべてPowerPointデータでダウンロード,ロイヤリティフリーで利用できます。社内の企画書やお客様への提案書,研修教材などにご活用ください!
【特典2】本書で扱うには少々専門的な,ITインフラやシステム開発に関わるキーワードについての解説も,PDFでダウンロードできます!
2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
- 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
- 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
緑の森でヨガを楽しむ!
8MATO塾・番外編
8MATO塾の番外編として、6月11日(日)10:00から8MATOのオープンデッキで、ヨガの体験レッスン(参加費無料)を行います。健康運動指導士、ヨガインストラクター資格取得者の井上陽(いのうえ よう)さんを講師にお招きしてのレッスンです。森の空気を存分に浴びながら、気持ちよく汗を流してください。シャワー室もありますよ。
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神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO
8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。