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【図解】コレ1枚でわかるDXの難しさの理由

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DXのメカニズム」で説明の通り、DXは、「デジタル化で圧倒的なスピードを手に入れること」と「人間力でイノベーションを創出すること」です。そのためには、デジタルを前提に「既存事業」を作り変えなくてはなりません。

「作り変える」とは、いまの仕事の手順や雇用形態、お客様との関係をそのままに、デジタルに置き換えることではなく、デジタルがうまく活かせるように根本的に変えることです。その対象は、業務プロセスだけではなく、ビジネス・モデルや収益構造、事業目的や働き方、意志決定の仕組みや従業員の行動原理など、企業全体の文化や風土にも及びます。

ベンチャー企業やGAFAに代表されるデジタル・ネイティブ企業には、変革すべき「既存事業」がありません。だから、「デジタルを前提」に、すなわち「レイヤー構造化と抽象化」を基礎に据えたDXのメカニズム」が、当たり前に根付いています。つまり彼らには、DXは必要ありません。だからこそ、圧倒的なスピードが生まれ、既存の業界秩序を破壊し、新しい競争原理を生みだすことができるのです。これこそが、彼らの強さの源泉です。

多くの企業は、「既存事業」を抱えています。だから、"デジタルを前提"に変革すること、すなわちDXが必要です。この「既存事業」の存在こそが、DXの難しさの根源です。自分たちが苦労して積み上げたノウハウや仕事のやり方、常識を変えることに、抵抗感を持つのは当然のことだからです。しかも、これまでのやり方で、いまは何とかなっているとすれば、危機感も生まれないでしょう。

しかし、そんな彼らに対抗できなければ、生き残れません。そんな危機的状況に直面していることを自覚すべきです。単発の取り組みとしての「業務の効率化と利便性の向上」と「新規事業で業績に貢献」ではなく、これらを日常の当たり前として、繰り返し、継続できる企業になる必要があります。

この現実を全社で共有し、よほどの覚悟をもって臨まなければ、彼らに潰されてしまいます。だからこそ、DXを経営戦略そのものとして捉え、具体的な業績目標を定めて取り組む必要があるのです。

残念なことですが、現実には、こんな理解と覚悟で取り組んでいる企業は少なく、「デジタルを使うこと」や「デジタルで仕事のやり方を変えること」をDXだと捉えている企業が、まだまだあります。そんな自分たちの現実を受け入れることが、DXに取り組む、第一歩かも知れません。

2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
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