「若者たちよ、蜂起せよ!」詳説・経営者編
先日のプログ「若者たちよ、蜂起せよ!」について、その詳説として、「エンジニア編」と「営業編」を投稿したが、今日は経営者が、若者たちの「蜂起」をどうすれば促すことができるのかを、3つの観点から考えてみたい。
最初に申し上げたいことは、経営者自身が、最新のITトレンドに関心を持ち、積極的に学ぶ努力を惜しまないことだ。
若者たちが活躍できていないITベンダーには、経営者の「常識の劣化」が、障害になっているケースが、多々見受けられる。
若くて優秀な人材が、アジャイル開発やDevOps、サーバーレスやコンテナ、マイクロサービスといったいまの常識を使うことを提案しても、その意味や価値を理解できなければ、話にもならないし、右から左であろう。そうなれば、彼らの意欲を削ぐだけではなく、彼らは、会社へのエンゲージメントを失い、流出を助長することになる。
もちろん、経営の視点に立てば、事業の継続と成長が重要であるから、大きなリスクを冒したくないのは当然であって、むやみに新しいことに飛びつくリスクを冒したくないというのは、理解できる。しかし、ITに求められるテクノロジーの土台が、大きく変わりつつある現実と真摯に向き合わなくてもいいということにはならない。
直ちに取り組むにしろ、あるいは、すこし時間をおいて取り組むにしろ、いまの常識を踏まえて、自分たちの経営の筋道を描くことが、経営者の役割であろう。
従来のテクノロジーを前提にした工数需要に頼る仕事は、顧客の事情や景気の変動に大きく左右される。つまり、経営者が自分で自分の未来を描くことができないことを意味している。そういう企業の事業計画は、エンジニアのいまの頭数と採用/退職に伴う変動から、来期の工数を算出し単金をかけ算することでしか、導き出すことはできない。それは「捕らぬ狸の皮算用」であって、お客様や景気に左右されるわけで、自らの努力で付加価値を高め、あるいは、新たな事業で新たな収益の源泉を確保することとは違う。
いまのテクノロジーの動向を見れば、「作らない技術」へと確実に向かっている。また、この「作らない技術」を土台に、お客様の内製化も広がりつつある。これは確実に工数需要を減退させる動きであり、いまの経営の基盤を揺るがす動きだ。だからこそ、この現実をテクノロジーの動向から客観視し、自分で自分の「未来をつくる物語=戦略」を描くことが、経営者の役割であろう。
そのためにも、経営者自身が、最新のITトレンドに関心を持ち、積極的に学ぶ努力を惜しまないことだ。「新しいことが分からない」のならは、分かる人に経営を譲るべきだ。あるいは、分かる人を腹心に持ち、役割を分担すべきだろう。
もうひとつは、事業区分を明確に分けることだ。新しい時代に合わせた事業戦略を進めようとすれば、自ずと旧来のやり方に拘る人の抵抗に遭う。もちろん、彼らの経験値とお客様との積年の信頼関係は、大切な経営資産ではある。従って、旧来のやり方で収益を上げる独立した事業部門や別会社を立ち上げて、そこで活躍してもらうのが、良いかもしれない。そして、新たな事業戦略は、それとは切り離して、採算性を高める必要があるだろう。
旧来のやり方と新しいやり方を同じ組織に置いて、事業目標の達成をその組織に任せれば、手慣れたやり方で何とかしようとするのが、人の常である。特に、その事業部門を担う責任者が、「旧来のやり方のベテラン」あるいは、「旧来のやり方に拘り新しいことを学ぼうとしない人」であれば、ますます新しいことへの取り組みが、後回しにされてしまう。だから、明確に事業区分を分けることが、実効性のあるやり方ではないか。
最後に、人材の流動性を高めることだ。上記のようなやり方ではやっていけない人たちは、自ずと別の道を探して、会社を去って行くかも知れない。それは仕方のないことだし、まだまだ、旧来のやり方を大切にする企業もあるから、そういう企業で活躍してもらうことも、そういう人たちの幸せであろう。
一方で、新しいことに果敢にチャレンジする事業に取り組み、それを発信することはとても大切なことだ。新たな人材を呼び込むきっかけになるだろう。それは「こんな事業をやっています」という宣伝ではなく、新しい技術やノウハウの勉強会であってあったり、コミュニティ活動であったり、参加する人たちに自発的な成長の機会を与える取り組みが望ましい。そういう取り組みを、社員自身に企画、運営させることだ。そういう機会を社員に与えることにより、自発的に自らの能力を磨き、社員自身の成長の機会にもつながる。
そうすれば、社員にとっては、自らを成長させてくれる企業であるとの想いが高まり、会社へのエンゲージメントも高まるだろうし、そういう想いが外部へも伝わり、同類の人たちが集まり、新しい取り組みを支える基盤が、厚くなっていくはずだ。
このようにして人材の流動性を高め、結果として、未来を支える人材を中心に、会社全体の体質が変われば、会社としての成長の基盤が積み上がっていくのではないだろうか。
こんな話しは、都合の良い妄想に過ぎないと思われるかも知れない。ただ、世の中の常識は、大きく、そして急速に変わろうとしていることだけは間違いない。コロナ禍は、この動きを確実に加速する。
しょせん妄想であるとしても、これからを考えるきっかけになればと願っている。