森の仕事場でカルチャーを体験的に学ぶ
人材育成の仕事に関わりながら、難しいと感じるのは、カルチャーを教えることだ。
講師が講義で伝えることができるのは、どうしても知識やスキルに留まってしまう。演習やワークショップなどで、学んだことを試して確認することで、知識やスキルの定着を図ることもできる。しかし、仕事への姿勢や人とのコミュニケーション、思考のプロセスや発想方法などは、その人の価値観や生き様など、形式化しにくい部分は、講師が教えられるものではない。
確かに、講師は、あるべき論や精神論を語ることはできるし、受講者はなるほどと分かったつもりになってくれる。しかし、カルチャーというのは、理解に留まっていては何の役にも立たない。「意識することなく、ごく普通にやっている」状態にならなくては意味がない。これは、教えられることではなく、自らが体験し、気付くこと、そして、なるほどと思って試してみて、それを繰り返し、当たり前にできるようになる時間が必要だ。
私がいま取り組んでいる「森の仕事場」は、そんなカルチャーを学べる場所にしたいと思っている。
ITソリューション塾を、もう13年続けている。その間のテクノロジーの発展は、目を見張るものがあるが、そこに参加する人たちのカルチャーは、さほど大きく変わっていないと感じている。
例えば、アジャイル開発やDevOps、クラウドやサーバーレス、マイクロサービスやコンテナといったテクノロジーのキーワードは、昨今注目されているが、それを何かを知識として説明はできても、それをどう使いこなすかとなる、そういう技術を使いこなすための感性や発想方法、あるいは、ITと業務との関係がこれまでとは違ってくることを会得しなければならない。
もちろん、長期間の実戦経験なくしては、真の意味での会得は難しいが、それがどういうことなのかを体験してみなければ、その入口にさえ立つことはできないだろう。
ITソリューション塾の講師にアジャイル開発やDevOpsの実践者がいる。並の実践者ではない。多くの企業で事業の立ち上げを成功させ、世界的な人材育成プログラムや資格認定制度の制定にも関わっている方である。
「やってみなければわかりません。」
彼は、そう言って次のようなたとえ話をしてくれる。
「芋虫が見る世界と蝶が見る世界はまるで違うはずです。蝶が芋虫に、自分の見ていること、感じていることを説明してもきっと伝わりません。蝶になって、はじめて、蝶の語る真実が、体験を通じて、実感として分かります。アジャイル開発やDevOpsを、本当の意味で理解するにはそれしかありません。」
つまり、芋虫でしか世界を見たことのない人たちに、蝶になる体験をさせて、世界を見てもらう体験をしてもらえばいいというわけだ。そうすれば、その後の体験から得られる知識は大きく変わってくるはずだ。
新しい時代のカルチャーを持っている人が指導者となり、新しいテクノロジーを実際に使い、共に参加する人たち教え合い、気付き、驚き、また試してみる。そういう「体験の共有」の場を作ることは、大いに意味のあることだと思っている。
確かに、それをわざわざ時間をかけて山の中にやって来てやる必要があるのかという考えもあるだろう。職場の近くのホテルや研修施設でいいではないかとの考えもある。
開き直るつもりはないが、それでいいという人たちは、それでいい。しかし、日常の喧騒から離れ、森の力に癒やされる環境で、「体験の共有」ができるのなら、その方がいいという人もいるに違いない。
これからの時代であれば、基本的な知識はオンラインで学ぶことができる。まずはそこで知識を得て、「森の仕事場」で実践し、蝶の視点を体験する。そこには、同じ志を持つ人たち、しかも企業文化の異なる各社から集まっている。そんな人たちと体験を共有して、刺激し合えば、新しい感覚や視座を持つことができるのではないか。
そんなプログラムも実践できればと、妄想は膨らむばかりだ。
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