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他人に頼るな、まずは自分で実践しろ

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研修や講演では、「分かりやすく本質を伝える」ことを心がけているつもりだ。そのためには、ものごとから枝と幹を切り分けて、「幹」がなにか、つまり本質が何かを説明し、それがどのように枝になるのかを論理的に説明しようと心がけている。

本質が分かれば、それを自分たちの仕事に当てはめて考えれば、自分たちは何を目指せばいいのか、つまり、自分たちの「あるべき姿」を描きやすくなる。その「あるべき姿」が決まれば、自分たちにふさわしい、具体的なHow Toつまり手段を見つけることが容易になる。

手段だけでは、それをすることが目的化してしまうリスクが高い。また、やり方の巧拙が過度に意識されてしまい、目指すべき「あるべき姿」を見失うことにもなりかねない。だからこそ、「枝葉」を徹底してそぎ落として、「幹」すなわち、「本質」を素っ裸にすることで、「あるべき姿」とそこに至る「手段」を分けて考えられるように心がけている。

しかし、私ができることは、しょせんここまでだ。その実践は、この話を聞いた本人に委ねられている。残念ながら、講義を聴いて、実践しようとする人は、少ないように思う。もちろん、そうだと言い切れる裏付けはない。しかし、それほど間違ってはいないだろう。

例えば、ある地方団体で話をさせて頂いたことがある。その話しを聞いた人たちからは、よく分かった、自分たちも実践したいとのご意見、ご感想を頂いた。その翌年、同じところで同様の話しをしたところ、まったく同じ反応であり、そして「なかなかできなくて」という言葉が添えられていた。

DXが大はやりのご時世になり、これをテーマに話をして欲しいという依頼も多い。しかし、たぶんアメリカの大統領選挙の結果が、なぜバイデン氏になったのかを解説したようなもので、理解はできるが実感がないということに似ているかも知れない。

もちろん、これは、聞く側の問題だけではない。話す側も彼らの経験や知識、置かれている状況を十分に考えて、話していないからだということもある。しかし、例えそれができたとしても、とうしても越えられない一線がある。それは、「体験による実感」だ。

ITソリューション塾の講師にアジャイル開発やDevOpsの実践者がいる。並の実践者ではない。多くの企業で事業の立ち上げを成功させ、世界的な人材育成プログラムや資格認定制度の制定にも関わっている方である。

「やってみなければわかりません。」

彼は、そう言って次のようなたとえ話をしてくれる。

スクリーンショット 2021-07-07 6.23.21.png

「芋虫が見る世界と蝶が見る世界はまるで違うはずです。蝶が芋虫に、自分の見ていること、感じていることを説明してもきっと伝わりません。蝶になって、はじめて、蝶の語る真実が、体験を通じて、実感として分かります。アジャイル開発やDevOpsを、本当の意味で理解するにはそれしかありません。」

このような話しの後には、必ず次のような質問がある。

「うちの会社は、頭が固くて、いままでのやり方を変えることが、なかなかできません。どうすれば、彼らを変えられるのでしょうか。」

この質問への答えは、結局はこれになる。

「まずは、自分でやってみたらどうですか?」

だれかに許しを得なければ何もできないのであれば、もうそれは、人間の居場所ではない。とっとと辞めてしまった方が、自分の人生にとって健全であろう。しかし、決してそんなことはないはずだ。自分だけで、あるいは、自分の組織で、できることがあるはずだ。自らできることを実践し、その成果を見せればいい。批判もあるだろうし、しばらくは人事評価も下がるかも知れない。しかし、正しいとであれば、成果は伴う。そして、共感者も次第に増えてゆく。それが一定の閾値を超えたとき、組織全体が動き始める。「彼らを変える」最も現実的で有効の手段はこれしかない。ただし、忍耐は必要だ。

ある企業で、社長も含む経営幹部の会議があり、DXについての話をしたことがある。コロナ禍前のことなので、先方の会議室に伺って、話をしたのだが、受付で持ち込むPCの機種とシリアル番号のチェックを求められた。実は、この会社には以前にも伺ったことがあり、その時は始業前の早朝で受付がまだ不在であり、守衛室を経由して入館したのだが、その時はPCのチェックはなかった。

何のためのPCチェックなのか。しかも、まったく徹底されていない。チェックした情報は、どのように管理され、使われているのだろうか。もともとはデータセンターであった建屋をいまはオフィスとして使っているようだったが、PCを持ち込むという行為が特別だった時代の過去のルールが、見直されることなく、疑問にも持たれず、そのまま続いてきたのだろう。

そんな「実体験」を経営幹部の前で話したら、苦笑いされた。DXを実践するのなら、このような些細なことを見直すことから始めてはどうか。いまとなっては無意味なことがまだ沢山あるのではないか。DXは、企業の文化や風土を変革することだ。何も大仰なことから始める必要ない。デジタルが当たり前の時代になって、意味のないこと、不便と感じること、おかしいと感じることから着手すればいい。そうやって、いまの時代にふさわしい仕事のやり方を追求することだ。その手段として、デジタルを使えば、「はやく、やすく、うまく」できる。ましてやお客様のDXに貢献しますなどと言っているのなら、まずは、そんな自分たちの取り組みから始めてはどうだろう。その実感とノウハウこそが、お客様が一番求めていることではないのかと話した。

それから半年ほど経って、再びその会社を訪れたとき、このルールはそのままだった。

DXとは何かを教えて欲しい、AIをビジネスに活かすには、どうすればいいのか、そのやり方を教えて欲しいと言う人は多い。私にとっては、それが仕事なので、できるだけ分かりやすく、そして、それぞれの仕事の現実を踏まえて、身近に感じてもらえるように話をしているつもりだ。しかし、誰にもそのまま使える成功の方程式などないのだ。

他人に頼るな、まずは自分で実践しろ

偉そうにと、お叱りを受けそうだが、何かを始めよう、成し遂げようとするのであれば、たぶんこれしかないように思う。

新入社員のための 「ソリューション営業の基本と実践・1日研修」

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ビジネス戦略編・DX
【新規】デジタル化とはレイヤ構造化と抽象化/デジタル化以前 p.9
【新規】デジタル化とはレイヤ構造化と抽象化/デジタル化以降 p.10
【新規】デジタル化とはレイヤ構造化と抽象化/社会構造の変化 p.11
【新規】見せかけのDXと本物のDX p.79
【新規】デジタルで"何"を変革するのか p.80
【新規】DXのメカニズム p.107
開発と運用編
【新規】DevOpsのメリット p.70
サービス&アプリケーション・先進技術編/AIとデータ
【改訂】ニューラル・ネットワークの仕組み p.86
クラウド・コンピューティング編
【新規】マルチクラウドのメリット p.77
【新規】クラウド各社のコンテナ展開 p.78
【新規】Googleのマルチクラウド戦略 p.79
【新規】Microsoftのマルチクラウド戦略 p.80
【新規】IBMがRed Hatを買収(2018.10) p.81
【新規】OpenShiftによる統合 p.82
【新規】マルチクラウドへの取り組みの差 p.83
テクノロジー・トピックス編
【改訂】Armのビジネス・モデル p.19
【新規】競合他社の懸念 p.33
【新規】半導体(CPU)を取巻く市場環境の変化 p.34
【新規】半導体を巡るこれからの動き p.35
【新規】Linuxのビジネスモデル p.78
【新規】オープンソース開発の実際 p.79
【新規】OSSのビジネスモデル p.80
【新規】OSSへの誤解 p.81
【新規】OSSは利用者とベンダーの双方にメリットがある p.82
テクノロジー・トピックス編/ブロックチェーン
【新規】NFT: Non Fungible Token/非代替性トークン p.5
【新規】ブロック・チェーンの構造 p.11
【新規】ブロック・チェーンの構造 / Proof of Work p.12
【新規】ブロック・チェーンの構造 / 改竄が困難な理由 p.13
【新規】ブロック・チェーンの種類 p.18
下記につきましては、変更はありません。
 ITインフラとプラットフォーム編
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 サービス&アプリケーション・基本編
 ビジネス戦略編・その他
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