頼れるのは自分自身しかない時代:「社会的価値」を高めるにはどうするか 1/2
経団連の中西前会長は、2019年4月、「企業が今後、終身雇用を続けているのは難しい」という趣旨の内容を述べ、雇用のあり方を見直す方針を示しました。
終身雇用を前提とした日本型雇用が制度疲労を起こしていることは誰もが認めるところですが、それを公言することは、政治的には難しく、経済界トップがこうした発言をあえて行ったというのは、それだけ企業が置かれた状況が深刻であることを示しているといえるでしょう。
そんな中、政府は高齢化と公的年金の財政悪化に対処するため、現在65歳までとなっている企業の雇用義務を70歳まで延長し、事実上の生涯雇用制度へのシフトを進めようとしています。しかし、実態は役職定年の強化、定年後に再雇用されても給料は大幅に下がり、場合によってはグループ内の派遣会社の社員となり、まったく別の会社に派遣されるという可能性も少なくありません。見かけは定年延長であっても、実質は転職と変わりのない扱いとなることも多いようです。
また、「45歳以上の希望退職」の話しをよく聞くようになりました。これは45歳あたりが、年功序列型給与の恩恵を受けてきた最後の世代だからで、45歳以上の年代を減らし、年齢に関係なく能力と成果に基づく公平な給与体系という、新しい秩序へと転換を図りたいとの思惑があるからでしょう。
そんな中、トヨタ自動車の豊田章男社長が次のような話をして話題になりました。
「トヨタの看板がなくても外で勝負できるプロを目指してください」
その真意は、どこででも働ける人材、すなわち、社内的な評価ではではなく、社会的な評価を高められるように自らを磨き続けてほしいということであり、自らの意志で行動し自律できる人材は、組織をさらに強くするという想いが込められているのでしょう。そして、それは、同時に、そういう人材に魅力を与えられない会社からは、彼らは去って行くことを自らに戒めた言葉と言えるのではないでしょうか。
このような社会情勢の中で、NTTグループは専門職を対象にした新しい人事制度「アドバンスド・スペシャリスト制度」を開始しています。制度上は報酬の上限はなく、3000万円を超える可能性も十分あるとしています。ただ、いいことばかりではなく、退職金はなく企業年金の運用もできなくなること、会社と本人との間で話し合ってKPIを設定し、KPIを達成できないと、基本的には報酬が下がるなど、かなりチャレンジングな制度だそうです。そうなると、ますます「どこででも働ける」能力が問われることになることは言うまでもありません。
また、テクノロジーの進化と相まって、ライフスタイルや医療・衛生・栄養が改善し高齢化を助長しています。日本の場合、平均寿命は10年間で2〜3歳伸びてゆくと言われており、いまの20歳代の人たちは、100年人生が当たり前になるかもしれません。
もはや、終身雇用という幻想に期待できません。100年人生は当たり前になろうとしています。そんな時代だからこそ、どこででも働ける自分になること、すなわち「社会的価値」を高めてゆくことに、真摯に向き合わなければならないのです。
私自身、還暦を過ぎ、この現実を身につまされる思いで向きあっています。わかりやすく言えば「恐怖」です。この「恐怖」に目をつぶっていても逃れることはできない以上、どうすれば自分の社会的価値を高められるかに向きあうしかありません。会社や組織という看板など、守ってくれるものは何もありません。自分の行動や発言が世の中に晒されるわけで、それ次第では、仕事や収入が大きく変わってしまいます。
私は、36歳の時にサラリーマンを辞めて独立しました。その時は勢いであり、まあ何とかなるだろうと気楽に考えていました。しかし、世間はそんなに甘いものではありませんでした。いろいろなことがありましたが、だからこそ覚悟ができたと思っています。本当の覚悟は、様々な経験があったからこそ築かれるものです。
転職する、あるいは独立するかどうかを考えている人がいらっしゃるかもしれません。私は、そんな想いを応援したいと思います。ただ、ひとつ考えて欲しいことは、それが自分の「社会的価値」を高めることができるかどうかです。
「社会的価値」とは、会社や地域の文脈に依存せず広く社会に求められる存在であることを意味します。そのためには、リスクを冒してでも、自らを世間に晒し、様々な人のつながりやいろいろな経験を通じて、自らの覚悟を育ててゆくことなのだろうと思っています。それは、必ずしも転職や独立をしなくてもできることです。
もちろん、そんな機会も与えられないほどにブラックな職場であるのなら、とっととそんな会社を辞めて環境を変えた方がいいでしょう。でも、もしそうでないとすれば、自分は、「社会的価値」を高めることに関心を持っているのか、そのための行動をしているのかをまずは問うべきかも知れません。
確かに環境が変われば、気分も一新して、頑張れる気になるかも知れません。しかし、それはきっかけにすぎません。成り行きでは「社会的価値」を高めることはできません。そのための行動を起こすことは、自分の意志であり、まわりが与えてくれることではありません。たとえ、環境が変わっても、また同じことを繰り返すだけになってしまいます。
まずは行動することです。「まずは覚悟を決めてから」などと行動を先送りしてはいけません。行動すれば、その結果として、覚悟は固まります。「どこででも働ける」能力とは、そんな行動習慣を持っているかどうかです。
では何をすればいいのでしょうか。いろいろと理屈を考えるのではなく、自分の感性に従って「面白そうだからやってみる」ことから始めることです。これをやれば給与が上がる、待遇が良くなるではありません。ITに関わる仕事をしている方ならこの意味がよく分かると思いますが、いまの流行なんて長続きしないのです。自分の向き不向きも、過去の限られた経験の中での勝手な思いこみです。それが正しいという保証はどこにもありません。だから面白そうなことに飛びつき、徹底していじり倒し、また新しいことが登場したら、また飛びついてみる。そういう感性が必要なのだろうと思います。
そうすれば、それにまつわる情報は集まり、人のつながりは増え、アウトプットの機会も与えられ、自分を世の中にさらけ出す機会はどんどんと増えてゆきます。自ずと、自分の向き不向きも見えてくるでしょう。結果として、自分の覚悟は固まり、社会的にも存在感を高められるようになるはずです。
そういう人材は、いまの会社も求めているし、どこでも働けますから、選択の自由は拡がります。ますます、自分の「社会的価値」を高める機会が増えてゆく、成長のサイクルに乗ることができます。
そんな「社会的価値」を高めるためのツールについては、明日のブログで紹介しようかと思います。
今年は、例年開催していました「最新ITトレンド・1日研修」に加え、「ソリューション営業の基本と実践・1日研修」を追加しました。
また、新入社員以外の方についても、参加費用を大幅に引き下げ(41,800円->20,000円・共に税込み)、参加しやすくしました。
どうぞ、ご検討ください。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー
【4月度のコンテンツを更新しました】
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・「AIとロボット」を「AIとデータ」に変更し、データについてのプレゼンテーションを充実させました。
・戦略編をDXとそれ以外の内容に分割しました。
・開発と運用に、新しいコンテンツを追加しました
・テクノロジー・トピックスのRPA/ローコード開発、量子コンピュータ、ブロックチェーンを刷新しました。
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研修パッケージ
・総集編 2021年4月版・最新の資料を反映
・DX基礎編 改訂
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ビジネス戦略編・DX
- 【新規】データとUXとサービス p.17
- 【新規】デジタル×データ×AI が支える存続と成長のプロセス p.68
- 【新規】DXとは圧倒的なスピードを手に入れること p.72
- 【新規】IT企業とデジタル企業 p.155
サービス&アプリケーション・先進技術編/AIとデータ
- 【新規】データの価値 p.129
- 【新規】情報とビジネスインテリジェンス・プロセス p.130
- 【新規】アナリティクス・プロセス p.131
- 【新規】データ尺度の統計学的分類 p.135
- 【新規】機械学習とデータサイエンス p.136
- 【新規】アナリティクスとビジネス・インテリジェンス p.137
- 【新規】ビジネス・インテリジェンスの適用とツール p.138
- 【新規】アナリティクスのプロセス p.139
- 【新規】ETL p.140
- 【新規】データウェアハウス DWH Data Warehouse p.141
- 【新規】データウェアハウス(DWH)とデータマート(DM) p.142
*「AIとロボット」から「AIとデータ」に変更しました。
開発と運用編
- 【新規】クラウドの普及による責任区分の変化 p.25
- 【新規】開発と運用 現状 p.26
- 【新規】開発と運用 これから p.27
- 【新規】DevOpsの全体像 p.28
- 【新規】気付きからプロダクトに至る全体プロセス p.29
- 【新規】アジャイル開発のプロセス p.37
- 【新規】アジャイル開発の進め方 p.39
*ローコード開発については、RPAの資料と合わせてひとつにまとめました。
テクノロジー・トピックス編
- 【改訂】ブロックチェーン、量子コンピュータの資料を刷新しました。
- 【改訂】RPAとローコード開発を組合せた新たな資料を作りました。
下記につきましては、変更はありません。
- ITインフラとプラットフォーム編
- クラウド・コンピューティング編
- ITの歴史と最新のトレンド編
- サービス&アプリケーション・基本編
- サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT