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プロジェクト「うてな」はかくしてはじまった 続き

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昨日のブログでも紹介したとおり、こんなにも沢山の空き家があるのに、貸してもらえません。特に、場所も良くて立派な古民家の空き家ほど、貸してもらえないのです。

もうひとつ、「古民家を改修する」ことの課題が浮かび上がってきました。それは、改修に相当の費用がかかることです。もちろん、できるだけ現状をそのままに使えばいいではないかと、思われるかも知れませんが、長期に人が住んでいない場合やメンテナンスされていない場合は、例え、柱や梁が太い木材で組まれていても、屋根から雨漏りがあったり、壁や天井がカビだらけだったりして、張り替えなくてはなりません。古い建物ですとアスベストなどが使われていることもあり、そうなると撤去や廃棄に相当のコストがかかります。また、「働きやすい空間」を作るとなると、相当の造作も入りますから、これまたコストがかかります。

大工さん曰く、古い家ほど、改築に手間もコストもかかり、ヘタをすると新築並みにかかることもあると言うことでした。

また、古民家カフェのように、一時的な滞在で、その建物の雰囲気を楽しむことが目的であれば、古民家は、大きな価値にはなります。しかし、比較的長期に滞在し仕事をする環境を作るとなると、古民家であることが、逆に制約になることも分かってきました。古民家カフェと同じにようにはいかないのです。

「古民家だぁ〜」と思い込んでいた私にとっては、古民家を借りることができないという現実に直面し、改めて、冷静にこの事実を見つめる機会になったのです。

古民家改築と新築で、あまりコストが変わらないのなら、むしろ、リゾートオフィスにとって理想的な新築を作った方がいいではないか、ということに気がついたわけです。そうとなったら、行動あるのみです。

早速地元の不動産屋さんに、「もう古民家はいいので、土地を探してください。」とお願いしました。もちろん、古民家を借りてオフィスを作ろうと思っていたわけですから、そんなに資金がかかるとは考えていませんでした。そこで、山林でもいいから、リーズナブルで、使えそうなところを探して欲しいとお願いしました。

そんな折に、最初の緊急事態宣言が発出されました。そのことで、八ヶ岳南麓一帯の不動産事情が、大きく変わってしまったのです。

まず、コロナ禍に突入した4月から6月くらいにかけて、地元の不動産についての問い合わせが急増しました。ただ、緊急事態制限で移動を自粛している人が多い時期でしたので、物件が動くことはなく、電話やメールでの問い合わせが増えただけだったそうです。緊急事態宣言が解除され、にわかに人々が動きはじめ、現地に物件を見に訪れる人も増えて、物件が急に動き始めました。また、同時に、既に別荘として使っていた建物に定住しようと言う人たちも増え始めました。そのため、中古の別荘物件は、あっという間に枯渇し、その改修や既に持っていた別荘を定住用に改築する需要も高まり、大工さんが大忙しになってしまったのです。もはや、不動産、あるいは大工仕事はバブルの様相を呈しはじめたのです。

そんな中での土地探しですから、なかなかうまくはいきませんでした。しかし、地元に生まれ育った不動産屋さんであり、自宅のことでもお世話になった信頼できる人にお任せしたことでもあり、気長に待つことにしました。

数ヶ月経ってのことです。その不動産屋さんから「いくつか良さそうなところが見つかったので、見てみませんか?」と電話がありました。おお、やっときたか!と言うことで、すぐに不動産屋さんの軽トラに乗せてもらい、土地を見に行ったのです。

そこで運命の出会いです。最初に見せてもらった土地こそが、今回の「うてな」の森だったのです。風が心地よい高台の森、里山の向こうに広がる山脈の眺望、広い道路から少しだけ奥に入った静かな場所であり、しかも以前から知っていて、とても気に入っていた散歩道の先にある神社の森です。確かに傾斜地ではありますが、建物が建てられないほどではありません。一目で気に入りました。

不動産屋さんから、この森の1/3ほどにあたる900坪ほどの土地だが、どうかと尋ねられ、その場で購入を決めました。900坪というと、とんでもなく大きな土地で、凄い金額になるのではないかとおもわれるかもしれませんが、山林であり傾斜地ですから、不動産物件としては価値が低く、とても考えられない金額でした。ほかにも物件はあるというのですが、もういいからここを買いますから手続きしてくださいと、その場でお願いしました。

後日、相談している地元の大工さんにも来てもらって、この土地を見てもらいました。

「面白いじゃないですか!」

スクェアな平地ではなく傾斜地の森です。普通の大工さんなら、嫌がられるかも知れません。でもその方は、ちょっと変人でチャレンジャーな大工さんだったので、むしろ闘志をかき立てたようです。

「でも、斎藤さん!せっかくだったら、森の一部じゃなくて、全部使いましょうよ。そのほうがもっとおもしろいことがいろいろできますよ。」

はぁ?突然、何を言い出すのか?です。やはり変人です。でも、確かに考えて見ると、森を全部自由に使えれば、いろいろなことができそうです。ただ、残りの2/3はかなりの傾斜地で、崖のようなところも含まれています。普通に建物を建てるには向きません。でも、キャンプ場にするとか、ツリーハウスを建てるならできますよと言うわけです。なるほど、確かにね。そのほうが、「森」を満喫できます。

そうなれば、もう勢いに任せるしかありません。その足で不動産屋に直行し、残りの森も全部買いたいが、どうだろうかと伺いました。

「なんとかなるかも知れませんね。直ぐにでも話をしてみます。」

その土地の持ち主は「さとるちゃん」と言って、その不動産屋さんの子どもの頃から付き合いだったのです。その神社や神社の森は「ガキの頃の遊び場で、さとるちゃんとは、神社でラジオ体操やお祭りもした。」のだそうです。だから相談してみましょうと、直ぐに請け合ってくれました。

「完全に予算オーバーです。かなりの傾斜地でもあり、普通ならほとんど使えない土地ですから、なんとか。そこのところは宜しくm(_ _)m 神社の森、大切に使わせてもらいますから。」

「はい、よくわかりました。」

ということで、しばらくして、連絡がありました。

「斎藤さん、大丈夫です。承知してもらいました。」

ということで、900坪に、さらに1800坪が加わり、「うてな」の森は、2700坪に広がることになりました。

210525_尾根の家々-2.jpg

早速大工さんにそれを連絡し、直ぐにでも概算でいいから、見積を作って欲しいとお願いしました。「森を全部使おう」の言い出しっぺですから、本人も乗り気です。そして、いろいろと考えてもらい、見積が出てきました。

「えええっ?そんなにかかるの???」

「森も全部使えるし、せっかくだから、ドカンとやりましょうよ。そのほうが、集客もしやすいですよ。」

いや、その通りだし、そうしたいけど、この金額は、「まずは自己資金や融資で何とかミニマムスタート」と考えていた金額を大きく越えています。どうすればいいだろうかと、また大問題発生です。資金調達の考え方を変えるしかありません。もう土地も買ってしまったのだから後には引けません。しかし、どうすればいいのでしょうか。

***明日に続く

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