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プロジェクト「うてな」はかくしてはじまった

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20161228日に、八ヶ岳南麓の拙宅が完成した。大工さんには、新年はここで過ごしたいとお願いし、最後はかなりの突貫工事だった。おかげで、新しい家で新年を迎え、そしていまでは、週末と連休、あるいは長期の休みには、そちらで過ごしている。たぶん年の半分はそちらで過ごしているだろう。

講義や講演のオンライン開催が常態化した私だけであれば、もっとそちらで過ごすこともできるが、相方の仕事の都合で、そういうわけにはいかない。しかし、都会と田舎の往復はメリハリがあり、決して悪いものではない。

そんな、標高1000mほどの八ヶ岳南麓に居を構えることになったのは、相方の出入りする近所のブティックのオーナーが、そこに別荘を持っていたことがきっかけだった。

彼女が趣味にしている絵画のアトリエを持ちたいと、自宅近くにアパートの一室を借りようと考えていた。その話しをブティックのオーナーに話をしたところ、こんな話が飛び出した。

「アパート借りるなんて辞めなさい。500万円も出せば、八ヶ岳南麓に中古の別荘を買えるから。ローン組んだら、この辺りのアパートの家賃より安くなるわよ!」

そして、早速、彼女の別荘に伺い、知り合いの不動産屋さんに物件を紹介してもらうことになった。

20165月のゴールデンウイーク、森に囲まれた一角にある彼女の別荘に伺った。新緑の美しい季節であり、八ヶ岳ならではの深い青空とのコントラストや、木の香ただようヒンヤリした空気に魅了され、一瞬にしてその土地を気に入ってしまった。

実は、私は、高校の頃から登山を始め、八ヶ岳や南アルプスの縦走は経験していた。また、大学時代、ボーイスカウトの隊長をやっていたのだが、子どもたちを連れてのキャンプや登山にも八ヶ岳界隈に出かけることが多かった。そして、そのころから漠然と、いつかは八ヶ岳に住んでみたいという想いをいだいていた。

そんな昔からの想いも重なり、もうここしかないと、無意識のうちに決心を固めていたのかも知れない。

地元の不動産屋さんに案内をされ、500万円くらいの中古別荘を何軒か見てまわった。しかし、流石に500万円くらいの物件は、森の中の窪地で別荘と言うよりも「小屋」と言ったところが多く、バブルの頃に建てられた安普請ばかりだった。八ヶ岳南麓の高原の心地よさを堪能するにはほど遠いし、建て替えるとなると、解体や廃棄、整地にかなりの費用がかかるという。ならば、頑張って、更地を買ってこじんまりでもいいから、好きの家を建ててはどうかという話になった。

そして、彼女はまた別の知り合いの地元不動産屋さんに話をしてくれたところ、彼女の別荘の直ぐ裏の土地が空いているというのだ。赤松林を伐採して開いた土地で、森に囲まれた南に落ちる緩やかな傾斜地であり、南アルプスも望むことができる場所でもある。しかも、彼女が20年以上も居を構え、「本当にいいところだ」と再三聞いていたし、破格の金額である。もうここにするしかないと即決した。

そして、これまた彼女の知り合いの地元の工務店を紹介してもらい、その年のうちに我が家が完成することになった。

210526_自宅.jpg

5月にはじめてその地を訪れ、6月に土地を購入し、12月の末には入居するという、なんとも高速な展開となったが、これもまた、人の縁に助けられた物語である。

さすがに、500万円とはいかなかったが、二人で働いてもいるしローンも低金利で借りることもできる。「自宅(国立)界隈のアパートの家賃」より安いとはいかないものの、あまり変わらない費用で購入することができた。しかも相方のアトリエだけではなく、私も住まわせてもらっている。まあ、いい買い物をしたと思っている。

そんな、八ヶ岳南麓に居を構え、この地の森と土と空気と空に、すっかり魅了され、とにかく時間があれば、行くようになった。

「ここにリゾートオフィスを作ったら、沢山の人が来てくれるのではないか。仕事にも集中できるだろうし、心も癒やされるはずだ!」

ふと、そんな想いが心に浮かんだ。それはいい考えだ!絶対にみんなに喜んでもらえる!と勝手に妄想を膨らまし始めたのが、コロナ禍前の2019年のことである。

そして、地元の古民家を借りて、そこを改修して、オシャレな「古民家リゾートオフィス」を作ろうと思い立った。

そうと決まれば、行動あるのみ!自宅のことでお世話になった地元の不動産屋さんや工務店、庭を作ってもらった庭師さんなどなど、古民家を借りたいので紹介して欲しいとお願いして回った。しかし、一様に彼らの反応が暗いのである。そして、いろいろと話しを聞くと、事情が分かってきた。

この辺りは、田んぼや畑、森に囲まれた里山集落で、とても心地のよい田舎である。立派な塗り壁の古民家も少なくない。しかし、古民家を含む住宅の6割が空き家なのだという。家主の多くは、都会に出て仕事をしていて、ここには住んでいないのだ。

ならば、貸してもらえそうなものだが、貸してくれるところがない。その理由は、家財道具が置いてあるし仏壇もある、盆暮れや正月には帰ってくる家である。いずれはここに戻り終の棲家と考えている人もいるようだ。そんな事情もあって、他人に貸したくはないないと言うのが理由だった。

思わぬ壁に突き当たってしまった。そして、コロナ禍である。私の妄想もここで潰えたかと、なったわけだが、思わぬ展開が待っていた。

***明日に続く

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