えっ!営業の質問にタブーはない?
「えっ!競合会社のことを、お客様に聞いちゃってもいいのですか?」
新入社員向けの営業研修で、質問することの大切さについて次のように説明したら、冒頭の質問が返ってきた。
「営業の大切な仕事のひとつは、質問することです。質問をしなければ、どのような提案が、お客様にはふさわしいかが分かりません。競合他社はどんな内容でいくらの提案をしているのか、そもそも使える予算はいくらあるのか、採用するかどうかの判断基準は何かなど、提案に必要な情報を聞くことから始めなければ、営業は、仕事を始められません。」
競合他社のことや予算についての話しは、「聞いてはいけない」あるいは「聞くことがはばかれる」と言う人がいる。
そう考えるのは、それが、タブーだと、根拠なく思い込んでいるためだからではないか。
「営業のミッションは、お客様を幸せにすることです。競合他社について、質問するのは、競合他社よりも、魅力的な提案をするためです。予算や判断基準を事前に確認しておけば、駆け引きに余計な時間をかける必要がなくなります。お客様にとっては、そちらのほうがメリットがりますよね。お客様を幸せにするためにやっているのですから、自信を持って、ためらうことなく質問をして下さい。」
昨日のブログで、「インタビューとは、仮説検証のプロセスである」という話を書いた。この「インタビュー」を「質問」に置き換えても意味は同じだ。つまり、質問とは、「自分は、こうすべきだと考えている」という「自分の正解」を予め用意しなければ、十分な情報をお客様から引き出すことはできない。
まずは所与の情報から自分の正解を作り、それを相手にぶつけることで、情報を引き出し、そこで手に入れた情報を素材に、自分の正解をアップデートし、それをまた相手にぶつけて情報を引き出す。その繰り返しによって、相手が納得し、合意できる正解を見つけ出す過程が、提案活動であろう。例えば、次のような質問だ。
「御社のシステム開発に関わられている、A社さんであれば、AWSを得意とされていますから、AWSをベースに提案されているのではないですか?今回のシステム規模であれば、XXX万円程度の見積になると思うのですが、いかがでしょうか?」
そんな質問への反応を見て、自分の質問をアップデートする。それを繰り返しながら、合意できる内容をお客様と一緒に探ってゆく。
意味のない詮索やプライバシーに関わることは論外だが、お客様を幸せにするためなら、質問にタブーはない。その自信を持たずして、営業は務まらない。
「お客様を幸せにしたい。」
そんな感情を持つことが、質問へのためらいをなくす原動力だ。では、どうすれば好きになれるのか?まずは、ネットやメディアを駆使して、公開されている情報から徹底して相手を想像することだ。その想像を使って「自分の正解」を作る。それをぶつければ、さらに深い情報が手に入る。それを使ってまた「自分の正解」を作り相手にぶつける。それを繰り返してゆくうちに、相手が好きになってゆく。
なんだ、それは、さっきの質問のし方と同じではないかと思われるだろうが、その通り、同じだ。つまり、相手を知ろうとすればするほど、相手が好きになってゆく。そんな努力なくして、相手を好きになることなどできないことは、恋愛も同じであろう。
質問にタブーはない。タブーを越えることが、相手の懐に入り、信頼を勝ち得る手段でもある。それをうっとうしいと感じ、嫌がる人もいるだろうが、それは縁がなかったことと、諦めればいい。これもまた、恋愛と同じだ。
お客様の幸せのためと自信を持って、質問をためらわないことだ。失敗もあるだろうが、失敗を重ねる度に、質問力が磨かれてゆくことは、間違えない。