インタビューの出来映えで営業力が見える
「改めて、お客様にインタビューしてみます。」
あるIT企業の営業研修でのこと。こちらが用意したフォームに従い、参加者に、担当する営業案件について整理して頂いた。ある参加者が、それを説明してくれたのだが、憶測と期待が入り交じった、とても曖昧な説明だったので、事実はどうなのかと尋ねたところ、こんな回答が返ってきた。
長年の担当営業であり、情報をもらう知己も少なからずいると言うが、それにしては、あまりにも知らなすぎる。
「どうやって、インタビューをされますか?」
すると、その参加者は、次のように回答した。
「このフォームに書いてあることを質問してみます。」
なんとも、残念な回答だ。
本来インタビューというのは、可能な限り情報を集め、自分が予め用意した正解を、相手にぶつけてみて、その反応を得ることだ。例えば、こんな感じだ。
「御社の売上に占める国内店舗での比率は、昨年度、50%を超えていましたが、コロナ禍で国内店舗の売上高が大幅に落ち込んでいるのではないでしょうか。この厳しい状況に対処するには、以前も話されていた店舗とオンラインでの販売を一元化し、顧客が店舗で商品を確認しオンラインで注文できる機能や、店舗でもオンラインでも顧客が容易に選択して購入できる機能など、店舗とオンラインの連携機能の実現が、急務だと思うのですが、ご検討はどこまで進んでいるのでしょうか?」
その答えは、YesかNoかであろう。あるいは、私は担当外なので、詳しく分からないという回答が返ってくるかも知れない。
Yesなら、具体的な進捗状況や課題など、さらに深掘りして聞けばいい。
Noであれば、その理由を聞くか、他の質問を予め用意しておくといいだろう。例えば、「では、経費削減のためには、現行の業務プロセスを徹底してデジタル化して、事務処理に関わる様々な経費を大幅に削減することが必要ではないかと思うのですが、そちらについては、いかがでしょうか?」といった質問ができるだろう。
分からないであれば、分かる人を紹介して欲しいと頼めばいい。
インタビューとは、こんな仮説検証のプロセスである。
もし、「それは、ちょっとまだ話せないなぁ」と言うことになれば、お客様との信頼関係ができていないと言うことだ。「長年の担当営業」であれば、そんなことにならないと願いたいところだが、こんな反応が、返ってくるようであれば、あらためて、自分の営業としてのこれまでのお客様との関わりを大いに反省し、出直すしかない。
昨日のブログでも紹介したが、営業力の土台は、知識力である。テクノロジーのこと、経済のこと、経営のことなど、世の中の常識に照らし合わせて、物事を考えることができなくてはならない。そんないまの常識に照らし合わせて、お客様の事業や経営はどうなっているかや、こんなところに課題があるのではないかと、考えを巡らせ、どうすればお客様を幸せにできるのかを、徹底的に考え抜き、仮説を組み立てることが、できなくてはならない。
この程度の質問ができないとすれば、これは大いに憂慮すべきだ。「長年の担当営業」であるなしにかかわらず、営業という仕事の一丁目1番地であろう。
確かに、フォームに書かれた質問事項を聞けば、それなりの答えは得られるかも知れないが、それを掘り下げてこそ、真の課題やニーズを探り当てることができる。それを見つけられてこそ、魅力的な提案ができる。なによりも、そうやって掘り下げてこそ、お客様にも気付きを与えることができ、「よくぞそのことを気付かせてくれた」と感謝もされる。
インタビューとは、仮説検証である。そのための訓練の場は、日常の会議や打合せ、講義や講演などでの質問の機会など、いくらでもある。そんな機会を、ただメモを取るだけ過ごすのは、なんとももったいない。もっと、積極的に自分の質問力を磨く機会にすればいい。
インタビューを侮るなかれ。インタビューの出来映えで、営業力を見えてくることを、心得ておいてはどうだろう。