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デジタル化がもたらす2つの事業領域:「デジタル化領域の拡大」と「体験/共感価値の提供」 2/2

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「デジタル化」の急速な進展は、ビジネスに大きな変化を強いています。底にはどのようなメカニズムが働くのかを本日と明日の2回に分けて解説します。

第1回

第2回 <= 本日

  • ビジネスの主役がモノからサービスへシフトする
  • DXの2つのビジネス領域

ビジネスの主役がモノからサービスへシフトする

「デジタル化領域の拡大」によって、ビジネスの主役は、モノからサービスへと、大きくシフトします。昨日のブログで紹介した「コスト・バリュー」、「エクスペンス・バリュー」、「プラットフォーム・バリュー」の3つの顧客価値は、この変化を前提にもたらされます。

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かつて、モノが主役の時代には、モノの機能や性能、品質や意匠が、どれほど魅力的かが、収益を左右していました。しかし、サービスが主役の時代になると、顧客の体験や共感の価値、すなわちUXUser Experience/顧客体験)の魅力が、収益を左右します。UXとは、まさにいま必要だった、使うことが楽しい、心地よい、もっと使い続けたいといった体験のことです。

サービスは、いつでも使い始めることができるし、辞めることもできます。モノのように「買ってしまったから」や「既に持っているから」と、簡単に買い換えることができないという制約がありません。

また、サービスは、モノに比べて参入障壁は低く、魅力的なアイデアさえあれば、容易に参入できることから、様々な企業が、業界の枠を越え、さらには、既存の業界の常識にとらわれずに、予期せぬ競争を仕掛けてきます。そんな彼らのスピードは、圧倒的です。

この競争に勝たなければなりません。そのためには、サービスの内容や機能を差別することは当然のことですが、同時に考えなければならないのが、魅力的なUXを提供することです。サービスを利用する顧客の状況の変化にきめ細かく対応し、常に魅力的であり、顧客の日常に必要であり続けることが求められます。

それは、決して「使い勝手が悪い」や「操作が煩雑でわかりにくい」といったことだけではありません。サービスの内容や機能にも関わる話しです。

他社が、魅力的なサービスをはじめたら、その評判はあっという間に拡がり、しがらみなく乗り換えられてしまうでしょう。そうならないためには、顧客の状況やニーズの変化をいち早く掴み、デジタル技術の発展に合わせて、競合他社を超えるスピードで高速に改善を繰り返すことができなくては顧客をつなぎ止めることができないのです。

FAANGMやその他の様々なサービスが、顧客に使われ続けるのは、デジタル技術を基盤に、高速に現場や顧客の状況を掴み、高速に改善を繰り返すことができる圧倒的なビジネス・スピードが、企業や組織の文化や風土になっているからです。

デジタル・トランスフォーメーション、すなわち「デジタル変革」とは、そんな文化や風土へ変革することを意味する言葉です。

DX2つのビジネス領域

多くの企業がDXへの取り組みに関心を持っていますが、その多くが、「デジタル化領域の拡大」に留まっているように思います。しかし、ここで述べたようにデジタル化は、「体験/共感価値の提供」の重要性を高めてゆきます。

「デジタル化領域の拡大」でデジタルにできることは徹底してデジタルに任せ、人間にしかできないことへと人間の役割をシフトさせれば、人間の意識と時間を、「体験/共感価値の提供」に注ぐことができます。例えば、次のようなことです。

  • 顧客に共感し、顧客に応じた丁寧な応対をすること
  • 顧客価値や事業価値を高めるために何をすべきかを考え、テーマや目的を見つけること
  • 信頼と共感でチームをまとめ、彼らのパフォーマンスを最大に引き出すこと
  • 顧客のニーズや期待を先取りし、これまでにはないビジネスや顧客体験を生みだすこと
  • 企業の文化や風土を変革し、そこに働くひとたちの意識や行動を変えさせること

このようなことを実践する手段として、デジタル技術は、大いに助けになるでしょう。しかし、それを実行することは、人間にしかできないことです。

「デジタル化領域の拡大」と「体験/共感価値の提供」は、一対であり、相互依存的です。DXの実践もまた、両者は一対であり、先客や施策に組み入れてゆかなければなりません。

***

【まもなく受付終了】ITソリューション塾・第36期 2月10日開講

2月から始まる第36では、DXの実践にフォーカスし、さらに内容をブラッシュアップします。実践の当事者たちを講師に招き、そのノウハウを教えて頂こうと思います。

そんな特別講師は、次の皆さんです。
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戸田孝一郎氏/お客様のDXの実践の支援やSI事業者のDX実践のプロフェッショナルを育成する戦略スタッフサービスの代表
吉田雄哉氏/日本マイクロソフトで、お客様のDXの実践を支援するテクノロジーセンター長
河野省二氏/日本マイクロソフトで、セキュリティの次世代化をリードするCSO(チーフ・セキュリティ・オフィサー)
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また、特別補講の講師には、事業現場の最前線でDXの実践を主導され、「DXグランプリ2020」を受賞されたトラスコ中山の数見篤氏(取締役・経営管理本部長兼デジタル戦略本部長)にも、その実践のノウハウを語っていただきます。

DXの実践に取り組む事業会社の皆さん、ITベンダーやSI事業者で、お客様のDXの実践に貢献しようとしている皆さんに、教養を越えた実践を学ぶ機会にして頂ければと準備しています。

コロナ禍の終息が見込めない状況の中、オンラインのみでの開催となりますが、オンラインならではの工夫もこらしながら、全国からご参加頂けるように、準備しています。

デジタルを使う時代から、デジタルを前提とする時代へと大きく変わりつつあるいま、デジタルの常識をアップデートする機会として、是非ともご参加下さい。

詳しくはこちらをご覧下さい。

  • 日程 :初回2021210()~最終回428() 毎週18:3020:30
  • 回数 :全10回+特別補講
  • 定員 :120
  • 会場 :オンライン(ライブと録画)
  • 料金 :¥90,000- (税込み¥99,000

全期間の参加費と資料・教材を含む

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー

【1月度のコンテンツを更新しました】
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・DXについてのプレゼンを充実しました
・ゼロトラスト・ネットワークについてのプレゼンを改訂しました
・コンテナとKubernetesについてのプレゼンを分かりやすくしました
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研修パッケージ
・総集編 2021年1月版・最新の資料を反映
・DXの基礎を最新版に改訂
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ビジネス戦略編
【新規】クラウド・サービスなどで使われる料金制度 p.17
【新規】プラットフォーマーと言われる企業の略称 p.18
【改訂】時計の速さと時代の変化 p.78
【新規】ソフトウエア・ファーストの必然性 p.79
【新規】DXとイノベーション p.84
【新規】デジタル・トランスフォーメーションのBefore/After p.194
【新規】共創の実践サイクル p.195
【新規】「共創」の目的 p.196
【新規】コロナ禍後を見据えた3つの変革施策 p.216
【新規】お客様のDXに貢献するためにやるべきこと p.217
【新規】DXを実践するとはどういうことか p.218
サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】AIマップ・AI研究は多様 フロンティアは広大 p.21
【新規】AIマップ・AI研究の現在 p.22
開発と運用編
【新規】ウォーターフォールとアジャイル についてのパッケージを追加 p.55-61
ITインフラとプラットフォーム編
【改訂】サーバー仮想化 p.106
【改訂】サーバー仮想化とコンテナ p.107
【改訂】仮想マシンとコンテナの稼働効率 p.108
【改訂】コンテナのモビリティ p.109
【新規】コンテナ・オーケストレーションとは p.110
【新規】Dockerとkubernetes p.111
【新規】モビリティの高いコンテナ p.112
【新規】セキュリティの考え方の変化・境界防衛モデルp.120
【新規】セキュリティの考え方の変化・境界防衛モデルの破堤 p.121
【新規】セキュリティの考え方の変化・ゼロトラストモデル p.122
【新規】境界防衛モデルとゼロトラスト・モデル p.123
【新規】セキュリティの考え方の変化・ゼロトラストモデル p.124
【新規】ゼロトラストによる安全なシステム設計 p.126
【新規】ゼロトラスト・アーキテクチャーの7原則 p.127
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】向上でのデジタル・ツイン p.27
【新規】データの種類と取得方法 p.60
【新規】データ取得のためのプロセス設計 p.61
【新規】データ活用の前提はData Virtuous Cycle を実装すること p.62
クラウド・コンピューティング編
【新規】政府共通プラットフォーム/政府共通ネットワーク p.35
下記につきましては、変更はありません。
・ITの歴史と最新のトレンド編
・テクノロジー・トピックス編
・サービス&アプリケーション・基本編
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