事業部門へのアプローチを営業の自助努力に期待する愚行
「もっと、事業部門にアプローチせよ!」
情シスだけを相手にしていては、もはや数字を増やすことができません。だから次は事業部門へ行けということなのでしょうか。そのための看板として、DXを掲げるわけですが、実態が伴わないDXにどれほどの説得力があるというのでしょうか。
DXとは、デジタル・テクノロジーを駆使して、事業の業績を改善、向上させる取り組みです。IoTやAI、クラウドやネットワークなど、デジタル・テクノロジーの急速な進化と、これに伴うITアーキテクチャーの非連続的な変化が起きようとしています。この現実に対処するには、新しいテクノロジーに向きあうだけでは難しいでしょう。そんな時代にふさわしい、人の考え方や組織の振る舞い、あるいは、働き方の常識をも変えてゆかなければ、DXの実現は見通せません。ましてや、自らがこの変革に取り組まずして、「お客様のDXの実現に貢献する」など、無理な話です。
この現実を受けとめることなく、これまでのやり方の延長線上で、何とかしようとしている経営者や管理者が、事業部門へのアプローチを営業の自助努力に任せ、精神論や根性論で、竹槍でB29を撃墜するかのごときことを求めるのは、いささか筋が通りません。
営業にとって数字の達成は絶対です。数字に結びつくのであれば、積極的に取り組むでしょう。しかし、そんな見通しもなく、限られた時間の中で、確実に数字をあげなくてはなりません。そんな状況にあるわけですから、これまで同様に数字が読める情報システム部門に時間を割こうとするのは、自然なことでしょう。
そもそもどこに行けばいいのでしょうか、どんな案件があるのでしょうか。そんな顧客を、自分で開拓しろというわけです。実に効率が悪く、モチベーションは高まりません。当然、数字の読めるこれまでの仕事に埋没してしまうのは無理からぬ話です。
そもそも、営業にデマンド開拓を過度に依存するのは現実的ではありません。営業の役割は、既存の顧客の案件を刈り取り、数字にすることです。既存の顧客の文脈から、新たな案件を創出することもりますが、まったく新しい顧客から案件を見つける、あるいは創り出すとなると、相当の覚悟と努力、そしてスキルが必要となります。これを根性論というか、精神論で、すべての営業に一律求めるというのは、まったく合理性の欠く話しでしょう。
本来、このような仕事は、マーケティングの一部であるデマンド・センターが担う仕事です。デマンド・センターの役割は、「見込み客データの収集(Lead Generation)」、「見込み客の啓蒙と育成(Lead Nurturing)」、「見込み客の絞り込み(Lead Qualification)」だ。これら一連の手順を行い、「案件創出(Demand Generation)」することが、デマンド・センターの目的です。
「ここにおよそ〇〇〇円規模の確度の高い案件があります。具体的には、こんな状況であり、お客様はこんな期待を持っています。」
具体的な数字が見込める案件があれば、営業のモチベーションは上がります。案件を探さずとも既に案件があり、営業目標の達成にも貢献できるとなれば、営業は、積極的に案件獲得に向けて努力するでしょう。当然、営業効率は上がり、営業一人当りの売上や利益は、向上します。
かつては、情シスに頼り、言われたことを誠実にこなしていれば、数字は達成できた時代もありました。しかし、ITが社内業務の合理化や効率化の手段から、競合他社との差別化や顧客の創出、体験価値向上のために使われる時代となり、意志決定の重心は、情シスから事業部門へと移りはじめています。加えて、テクノロジーの進化とITアーキテクチャーの変化に、伝統的な営業スタイルでは対処できなくなりました。もはや営業の役割は、顧客に新たな時代の到来を告げ、これにどう対処すべきかを提言し、顧客の事業の未来を教える教師となることでしょう。これをきっかけに、顧客と対話をはじめ、一緒になって課題やテーマを見つけ出してゆくことだろうと思います。
経営者や管理者が、テクノロジーの進化とITアーキテクチャーの変化を深く理解し、現場がこれにふさわしい動きかできる仕組み作ることです。そのための努力を怠り、事業部門の開拓を営業個人に丸投げし、そのための勉強の機会も自助努力に頼るというのは、おかしな話しです。
テクノロジーの進化とITアーキテクチャーの変化にもっと真摯に向き合うべきです。そして、これにふさわしい営業プロセスに定義し直すべきです。
仕組みを作り、組織を自律的に機能させることが、経営者や管理者の役割のはずです。その役割を棚上げし、精神論と現場の自助努力に期待するのは、そんな彼らの怠慢であると言われても、仕方がないかも知れません。
【募集開始】第35期 ITソリューション塾
オンライン(ライブと録画)でもご参加いただけます。
ITソリューション塾・第35期(10月7日開講)の募集を開始しました。
新型コロナ・ウイルスは、肺に感染するよりも多くの人の意識に感染し、私たちの考え方や行動を変えつつあります。パンデミックが終息しても、元には戻ることはありません。私たちの日常は大きく変わり、働き方もビジネスも変わってしまうでしょう。これまでの正解は、これからの正解と同じではありません。ならば、事業戦略も求められるスキルも変わらざるを得えません。
本塾では、そんな「これから」のITやビジネスのトレンドを考え、分かりやすく整理してゆこうと思います。
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この塾では、知識だけではなく実践ノウハウについても学んで頂くために、現場の実践者である下記の特別講師をお招きしています。
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ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー
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新規プレゼンテーション・パッケージを充実させました!
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新入社員研修
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講義・研修パッケージ
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとこれからのビジネス*講義時間:2時間程度
> 自動車関連製造業向けの研修パッケージ
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【改訂】総集編 2020年8月版・最新の資料を反映(2部構成)。
【改訂】ITソリューション塾・プレゼンテーションと講義動画 第34期版に差し替え
>これからのビジネス戦略
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ビジネス戦略編
【改訂】デジタルとフィジカル p.9
【改訂】イノベーションとインベンションの違い p.10
【新規】DXを支えるテクノロジー p.18
【改訂】DXはどんな世界を目指すのか p.19
【新規】「モノのサービス化」の構造 p.46
【改訂】ビジネス価値の比較
【新規】ビジネス価値のシフト p.48
【新規】自動車/移動ビジネスの3つの戦略 p.49
【新規】ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用 p.137
【新規】ナレッジワーカーの本質は創造的な仕事と主体性 p.138
【新規】コンテクスト文化から考えるリモートワーク p.139
【新規】リモートワーク成功の3要件 p.140
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【改訂】IoTの定義とビジネス p.15
サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】ニューラル・ネットワークの仕組み p.68
クラウド・コンピューティング編
【改訂】クラウドに吸収されるITビジネス p.106
【新規】クラウド・ネイティブへのシフトが加速する p.107
開発と運用編
【改訂】開発の自動化とは p.94
【新規】ノー・コード/ロー・コード/プロ・コード p.95
【新規】ローコード開発ツール p.96
【新規】ローコード開発ツール p.97
【新規】ローコード開発ツールの 基本的な構造 p.98
下記につきましては、変更はありません。
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