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Aさんへの手紙 〜講演依頼メールへの返信〜

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商社系企業(IT企業ではない)から、研修会社を通じて、講義のご依頼を頂いた。研修会社の担当者Aさんは、入社23年目程度の女性。当初、1ヶ月前に講義のための最終教材を納品して欲しいとの依頼があった。しかし、ダウンロード・ページをこちらで立ち上げて、ダウンロード頂くので、こちらに任せて欲しいと連絡した。

これに対し、次のような返信があった。

「事前に内容確認のうえ必要に応じてお話し頂きたい項目があれば追加をお願いしたいので、せめて1週間前には最終教材を送って欲しい。」

そこで、Aさんに次のようなメールを送った。

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Aさん

ネットコマースの斎藤です。

この度は、お手間をおかけして申し訳ありません。

関係者の皆様の仲立ちをされ、いろいろとご配慮も必要であること、承知しております。

ありがとうございます。

さて、教材の事前の共有につきまして、僭越ながら、私なりの考え方を整理させて頂きます。

まず、講義の目的は、「伝えること」ではなく、「期待する結果を達成すること」です。

つまり、「伝える内容=アウトプット」を作ることではなく、「結果の達成=アウトカム」が目的です。

このアウトカムつまり講義の結果として期待する「あるべき姿」については、先般の打ち合わせで、私は、次のように理解しました。

「新入社員やITに詳しくない方々に「DXとそれを支えるITが、自分たちの事業や仕事において、どれほど重要であるかを理解させ、どのような行動を起こせばいいのかに気付かせ、きっかけとなる動機付けを与えること」

このアウトカムを達成するという目的のための手段=アウトプットが、講師の「語り」と「教材」です。

この2つの手段のうち、もっとも大切なのが「語り」です。「教材」つまり今回の場合はプレゼンテーション資料と言うことになりますが、これは「語り」を支える補助的手段です。もし、教材だけでよければ、講師が話す必要はありません。

「語り」において、もっと大切なのは、受講者とのコミュニケーションです。残念ながら、オンラインではかなり制約がありますが、可能な限り想像力を発揮して、インタラクティブに講義を演出することが大切になります。

そんな状況にあっても、アウトカムを達成することが、講師の使命ですから、そのためのインストラクション・デザインを考え、講義の全体のストリーや演出を考えることになります。

改めて、講義とは何かを整理すると、次のようになります。

  • 講義の目的はアウトカムの達成すること。
  • アウトカムを達成するために、最適なインストラクションをデザインする。
  • デザインされた講義の中で、「語り」と「教材」の最適な組合せを配置する。
  • 特に重視すべきは「語り」。その「語り」をうまく行うために教材を作る。
  • 「語り」すなわち「トーク」と「演出」は受講者とのコミュニケーションによって変化する。但し、講義の「アウトカム」については、ずらさない範囲で対応する。
  • 「語り」が優先されるので、教材通りにはならない可能性が高い。

さて、このような前提に立って、この度のご依頼について、考えていただきたいのですが、「内容を確認したい」とのご意向ですが、「確認」するためには、「基準」が必要です。例えば、「誤字脱字がないかを確認する」となると、その基準は「正しい綴り」ということになります。この度の「内容確認」となりますと、「期待するアウトカムの達成」と言うことになります。

つまり、「内容確認」が、「アウトカム達成」という基準に照らして「こんな言葉を入れて欲しい」あるいは「このような項目を追加して欲しい」ということであれば、これはぜひともお願いしたいと思います。

ただ、それは1週間前ではなく、できるだけはやい段階でお願いできれば、有り難く思います。だからこそ、先般の打ち合わせで、この講義の「あるべき姿」つまり「アウトカム」について、時間をかけて確認したわけですし、現時点でお渡しできるサンプルをご提示させていただきました。

しかし、もし「内容確認」が、「アウトプット」だけの話しであれば、困ってしまいます。

そもそも、受講者の反応や質問を踏まえて、話す内容は変わります。そのためプレゼンテーション教材にない話しもするでしょう。また、教材に書かれていることを全て話すことはありません。あくまで教材は語りのためのツールですから、最終的な教材をご覧頂き、講義で伝えることが、必ずしも全て分かることはありません。ですから「最終教材を見て確認する」というのは、いずれにしても難しいと思うのです。

誤解がないように申し上げておきたいのは、1週間前に事前にお渡しするのが嫌だと言いたいのではなく、その必要性があるかどうかということです。

先ほども書きましたように「アウトカム達成にはこのような内容が必要だ」とのお考えであれば、早い段階でお知らせください。成果達成のために、こんな内容にしたほうがいいというアイデアも大歓迎です。それを考慮して、資料を作りたいと思います。それを考える素材は先日、送らせていただいたコンテンツで十分かと考えています。

ただ、限られた時間や対象者の知識レベルという制約もあります。その中で、「アウトカム達成」のための最適なインストラクションをデザインしたいと思います。

ところで、最終教材の作成にギリギリまで時間を頂きたいと申し上げたのは、アウトカム達成のために最後まで完成度を高めたいからです。もちろん1週間前にできているものがあれば、お渡しすることは、何ら問題はありません。しかし、最後まで改善を繰り返したいと思いますので、その時の内容が、そのまま使われることはありません。

いろいろと勝手なことを申し上げ、申し訳ありません。Aさんにとっては、大変な講師を担当することになったと、苦笑いされているかも知れませんが、ご容赦ください。ただ、真っ当な講師であれば、私だけではなく、当然、このようなことを考えると思います。是非、今後のための参考にしてください。

一番大切なことは、この度の講義によって「アウトカム」が達成することです。そのために、努力する所存ですし、ぜひ建設的なご意見やアドバイスを頂ければと思います。それについては、いつでも大歓迎です。

形式ではなく、本質を考えてください。そして、ご一緒にいい講義を作っていければと思っています。

ITソリューション塾・第35期(10月7日開講)をまもなく締め切ります。

今期は、最終講義・特別補講の講師として、クレディセゾン・常務執行役員・CTOである小野和俊さんにもお越し頂き、下記テーマでお話し頂くとともに、ディスカッションしようと思っています。

「日本の大企業にデジタルの風を吹き込むには」

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【特別講師】
■アジャイル開発とDevOpsの実践
    戦略スタッフ・サービス 代表取締役 戸田孝一郎 氏
■日本のIT産業のマーケティングの現状と"近"未来
    シンフォニーマーケティング 代表取締役 庭山一郎 氏
■ゼロトラスト・ネットワーク・セキュリティとビジネス戦略
    日本マイクロソフト CSO  河野省二 氏
【特別補講】
■日本の大企業にデジタルの風を吹き込むには
  クレディセゾン・常務執行役員・CTO 小野和俊氏

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日程 初回・2020年10月7日(水)~最終回・12月16日(水)
毎週18:30~20:30
回数 全10回+特別補講
定員 100名
会場 オンライン(ライブと録画)および、会場(東京・市ヶ谷)
料金 ¥90,000- (税込み¥99,000)
PCやスマホからオンラインでライブ&動画にて、ご参加頂けます。
資料・教材(パワーポイント)はロイヤリティフリーにて差し上げます。

詳しくは、こちらをご覧下さい。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー

【9月度のコンテンツを更新しました】
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新規プレゼンテーション・パッケージを充実させました!
・「新入社員研修のための最新ITトレンド研修」の改訂
・そのまま使えるDXに関連したSI事業者と事業会社向けの講義パッケージを追加
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新入社員研修
【改訂】新入社員のための最新ITトレンドとこれからのビジネス・9月版
講義・研修パッケージ
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとこれからのビジネス*講義時間:7時間程度
> SI事業者向けの研修パッケージ
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとこれからのビジネス*講義時間:7時間程度
> 事業会社向けの研修パッケージ
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【改訂】総集編 2020年9月版・最新の資料を反映(2部構成)。
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ビジネス戦略編
【新規】平安保険のデジタル活用 p.6
【新規】Withコロナ時代に求められるITベンター/Sierの能力 p.8
【新規】デジタルとデジタル化とDXの関係 p.17
【新規】DXとCXとEX p.23
【新規】属性データと行動データ p.54
【新規】データとモノ/コト・ビジネスの関係 p.55
【新規】タッチポイントの役割分担 p.56
【新規】モノ・コト・体験の関係 p.57
【改訂】DX案件の獲得にソリューション営業は通用しない p.180
【新規】これからの営業とエンジニアに求められること
サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【改訂】人工知能の2つの方向性 p.12
クラウド・コンピューティング編
【新規】クラウド・サービスの「作り方」による費用の違い p.121
ITインフラとプラットフォーム編
【新規】ファイヤーウォールとVPNのセキュリティ・リスク p.104
下記につきましては、変更はありません。
 ITの歴史と最新のトレンド編
 テクノロジー・トピックス編
 サービス&アプリケーション・基本編
 サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
 開発と運用編
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