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モノのサービス化とは何か 2/5

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「モノのサービス化」とは何か、なぜいま注目されているのかを、5回に分けて解説。今回はその第2回目です。前回は、ビジネスが「モノが主役」から「サービスが主役」の時代へとシフトしたことについて述べましたが、今回は「モノのサービス化」によってビジネスの価値の重心がどのように変わってきたかを解説します。

「モノのサービス化」によって変わるビジネス価値の重心

GAFAMBATHなどの新興のサービス事業者は、前回に紹介したサービスの特性を理解し、徹底して顧客の体験価値/UXを高めることで、ビジネスを拡大してきました。しかし、モノづくりを生業としてきた企業も、もはやこの流れを無視することはできなくなりました。「モノのサービス化」が叫ばれるのは、そんな背景があるからです。自動車メーカーを例に、この「モノのサービス化」について、整理してみましょう。

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「モノが主役の時代」には、車両/ハードウェアに実装された「機能」や「仕様」が、価値を生みだし、これがビジネスを差別化する役割を果たしていました。しかし、車両/ハードウェアは、法律や規制もあって機能や仕様を差別化するにも制約が課せられます。また、テクノロジーの高度化と複雑化もあり、主要な機構や部品については、それぞれを専業とするサプライヤー/部品メーカーに依存する割合も増え、自動車メーカーが、独自に車両/ハードウェアで差別化することが難しくなりました。もちろん、それらを組合せ、すりあわせて、魅力的な「機能」や「仕様」を実現する努力を自動車メーカーが放棄したわけではありませんが、圧倒的な差別化を生みだすには、限界があります。

そんな状況の中で、差別化の重心をソフトウェアへ移しはじめています。「先進運転支援システム/ADAS」や「自動運転システム/ADS」に、各社が注力するのは、そんな背景があるからです。

しかし、各社がソフトウェアで競い合えば、やがては、顧客にとっては十分であり、各社同じようなレベルとなり、ここでの差別化も難しくなります。だから、自動車メーカー各社は、差別化の対象をサービスへとシフトしようとしているのです。

2018年の年初、トヨタの豊田章雄社長は、ラスベガスで開催されたCESというイベントで、「自動車をつくる会社」から、「モビリティカンパニー」に転換すること、そして、世界中の人々の「移動」に関わるあらゆるサービスを提供する会社になるという宣言をして話題となりましたが、そこにはそんな背景があったのです。そして、いまトヨタは、かつて、会社の理念を表していた"Drive your Dreams"から"Mobility for All"へと、大きく舵を切りつつあります。ソフトバンクとの合弁で設立したMonet Technologyや、東富士に建設する実験都市であるWoven Cityも、この新しい理念を体現するための取り組みなのです。

サービスを差別化の対象にしようとの取り組みは、トヨタだけではありません。日産のEasy RideMercedes-BenzBMWが合弁で取り組むReach Now、移動サービスを目的としたWhimなどの独立系の企業が参入し、競争が激しくなりつつあります。

サービスが差別化の対象になれば、サービスによって得られるデータもまた、差別化の対象として、大きな価値を持つようになります。ここで言う「データ」とは、属性データだけではなく、顧客がいま置かれている状況を理解するための行動データです。さらにそれらを噴石することで、主義主張、趣味嗜好、人生観や悩み、ライフログ、生活圏などを含めて顧客を深く知るためのデータを捉えようとしています。これらを効果的に収集し、UXの改善を継続することが、顧客ひとりひとりにとって魅力的な差別化を生みだし、顧客の満足を維持し続けることになるのです。

*** 明日に続く

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本塾では、そんな「これから」のITやビジネスのトレンドを考え、分かりやすく整理してゆこうと思います。

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【新規】ローコード開発ツール p.97
【新規】ローコード開発ツールの 基本的な構造 p.98

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