モノのサービス化とは何か 1/5
「モノのサービス化」という言葉が、広く使われるようになりました。しかし、それが、既存製品をレンタルするビジネス程度に理解されている場合も少なくありません。
このような理解が、間違っているとは言えませんが、「モノのサービス化」の本質を説明しているとは言えません。そこで、「モノのサービス化」とは何か、なぜいま注目されているのかを、5回に分けて解説しようと思います。
ビジネスは「モノが主役」から「サービスが主役」の時代へとシフトした
高度経済成長の時代には、ビジネスは「モノが主役」でした。たくさんのモノを作り、それを売りさばくことで、企業は収益を上げてきました。そんな「モノ」の価値は、そこに作り込まれた「機能」や「仕様」によって決まります。そのため、メーカーには、魅力的な「機能」や「仕様」を実現する「モノづくり」が求められ、私たちは、対価を支払って、モノを所有することで、その価値を手に入れます。
そんな時代は、もはや終焉を迎え、「サービスが主役」の時代を迎えています。「サービス」の本質は、「効用や満足という価値を直接顧客に提供すること」です。「モノが主役」の時代には、モノを購入して所有することでしか、価値を手に入れることはできませんでした。しかし、「サービスが主役」の時代となり、私たちは、モノを持たなくても価値を直接手に入れられるようになったのです。私たちは、対価を支払って、サービスを使用することで、価値を手に入れることができるのです。
モノであれば、購入・所有したわけですから、気に入らないからと手放すと、購入のために支払ったコストが無駄になるだけではなく、代替するモノを購入するために新たなコストがかかりますから、なかなかできません。従って、対価を支払う前に、モノの「機能」や「仕様」を十分に吟味し、十分に納得したところで購入します。メーカーも購入してもらうために、多大なコストと時間をかけて、「機能」や「仕様」の魅力を高めることに努力します。
一方、サービスは、一旦は使って気に入らないからと、使うことを辞めたとしても、大きな負担にはなりません。もっといいサービスが登場したら、そちらに乗り換えることも容易です。サービス提供者は、そうならないよう、使い続けてもらわなくてはなりません。つまり、顧客の体験価値を常に高い状態に維持し続ける努力が必要となるのです。
体験価値とは、「心地よい・使い易い」、「もっと使いたい」、「ずっと使い続けたい」と、サービスを利用する体験を通じて、顧客に感じてもらうことです。
製品やサービスを通じて得られる体験のことをUX(User Experience)と呼びます。つまり、サービスを使い続けてもらうためには、UXを顧客にとって、魅力ある状態に維持することが必要となります。
そんなサービスの実態は、ソフトウェアですから、体験価値を維持するには、ソフトウェアを更新し続けることが必要です。「継続的な改善」、「最適を維持」、「顧客の期待を先回り」し、魅力的なUXを維持し続けることが大切です。「コトづくり」とは、このような取り組みのことを言います。
アジャイル開発やDevOpsが、注目されるのは、顧客や現場からのフィードバックをうけて、高速に改善し続けるためのノウハウが詰まった開発や運用の考え方やプラクティスの体系だからです。魅力的なUXを維持し続けるためには、大変有効と言えるでしょう。
*** 明日に続く
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