「共創」とは何をすることか
「共創(あるいは協創)」という言葉を目にする機会が増えている。これは、企業が、様々なステークホルダー、すなわち、お客様やビジネス・パートナーと協働して共に新たな価値を創造するという概念「Co-Creation」の日本語訳だ。この言葉が語られるようになったのは、ビジネス・スピードの加速や業界の垣根を越えた厳しい競争の出現により、もはや一企業だけで市場のニーズに応え競争優位を生みだし続けることは困難となったからだ。
そんな「共創」を実践するとは、次の3つの価値をステークホルダーと共有することであろう。
技術の共有:ステークホルダーにはない圧倒的な技術力を提供すること。ITは事業の差別化や競争優位の実現する武器であり、コア・コンピタンスとなった。しかし、どこの企業にも幅広く高い技術力を持つ人材が揃っている訳ではない。そこで、自分たちの得意分野としての技術力を極め、これを提供し、彼らの不足を補うことが、価値となる。
「技術力」とは、ブロックチェーンやAIなどの新しい技術を駆使できる能力ばかりではない。少ない手間で最大のパフォーマンスを発揮できる力もまた技術力だ。例えば、実現したい機能を可能な限り少ないステップ数でコーディングできる力やクラウドを駆使して必要なシステムを1日にいくつも構築できる力だ。ビジネス・テーマが決まれば、そんなテクノロジーを駆使したビジネス・プロセスをデザインできる力も必要とされる。
価値の共有:ステークホルダーと一緒になって、この取り組みを成功させたいという誠実さと熱意を示すこと。そのためには、相手の目指すゴールに共感し、その実現に一緒になって取り組む覚悟を持つことだ。そして、相手のビジネスを成功させるための共通の価値観を共有できなくてはならない。
お客様からすれば、自分たちの一大事を一緒に取り組もうというわけなので、自分たちと同じ価値観を共有できる信頼に値する人格が求められるのは当然のことだろう。
体験の共有:私たちはいま、コロナ・パンデミックに遭遇し、不確実性のなんたるかを身をもって実感している。このパンデミックが収束しても、今後同様の災禍に見舞われる可能性は排除できないし、ビジネス環境の流動性は、従来にも増して高まることは、避けることはできない。そんな不確実性が私たちの日常となれば、私たちは変化に対して即応できるスピードや俊敏性を身につけなければ、生き残ることは難しい。アジャイル開発やDevOps、クラウド、そしてコンテナやマイクロサービス、サーバーレスなどの技術が注目されるようになったのは、そのようなビジネス環境がもたらす必然性があるからだ。こんなITを使いこなすノウハウを彼らの教師となり、模範を通じて体験的に提供できることは大きな価値であろう。
このような3つの共有を通じて「この人たちと一緒に取り組みたいと」と相手に惚れさせ、一緒になってビジネスを生みだすことが「共創」の実践であろう。
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