オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

【図解】コレ1枚でわかるSIビジネスが薄利な理由

»

SI事業は、「アプリケーションを受託開発する事業」、「ネットワークやサーバーなどのハード導入に伴い構築を行うエンジニアリング事業」、そしてそれらの「保守サポート事業」の大きく3つのタイプに分けることができます。

zu.png

「アプリケーションを受託開発する事業」と「保守サポート事業」は、そのコストのほとんどが、人件費で占められています。しかも、我が国においては、人材の流動性が低いこともあり、その人件費が固定費化されてしまいます。そのため、ユーザー企業や大手SI事業者は、これらの人件費を下請事業者に委託し変動費として、コストの調整弁として使ってきたのです。この階層関係が、どんどんと下層に引き継がれてゆき、下へ行けば行くほど低賃金で働かされることになります。世に言う「多重請負」です。

しかし、人月単価は年々ディスカウントされてきており、非常に薄い利益しか取れていない状況となりつつあります。そのため一つの案件での利益管理を厳密に行う必要が出てきており、各社「赤字案件撲滅プロジェクト」など案件ごとの利益率管理を実施し、必死に案件ごとの利益を確保するように試行錯誤している状況です。

またリーマンショック以降、多重請負が社会問題となっており、徐々に多重請負について自主規制がかかってきています。そうすると調整弁役を担ってきた下請事業者を増やしていくことは難しく、また不景気になったからといって、そう簡単に、下請け業者を切ることができなくなってきました。

そのため、正社員も下請け業者も、予測した稼働人員のギリギリしか確保せず、しかも、少々稼働がオーバーしても、現状の人員で案件を回すことにより、高い稼働率を維持するようになっています。利益率が低いため、不稼働人員が発生すれば、直ちに赤字となるので、エンジニアは常にマシンのように限界まで働いてもらわなければならないのです。

また、安定的な高稼働率を維持するためには、安定的な受注が必要です。安定的な受注がないと稼働率が維持できず、すぐに不稼働が発生し赤字に転落します。中堅以上のSI事業者は、多くの営業人員を抱え、必死に安定的な受注を得るために営業活動に注力しています。

このように、今までのSI事業は、「安定的な受注」「人員の高稼働率」に支えられてきたといえるでしょう。

このような状況をコスト構造から見てみると、図にあるようにコストのほとんどが、人件費や外注加工費用、ハードウェア・ソフトウェアの仕入れ費用です。外注加工費やハードウェア・ソフトウェアの仕入れ費用は、自社ではほとんどコントロールできないコストです。また人材の流動性があれば人件費はコントロール可能なコストになりますが、我が国では固定的となっており、これもコントロールが難しいコストとなっています。このようにコスト構造を読み解くと付加価値率は高いのですがが、コントロールできるコストの割合が非常に低く、利益が出にくいビジネスとなっていることがわかります。つまり、現在のSIビジネスは、「必死に働いても薄利なビジネス」だと言わざるを得ない状況にあるのです。

関連記事 :

【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 増強改訂版

スクリーンショット 2017-04-24 12.36.16.png

  • 何ができるようになるのか?
  • どのような価値を生みだすのか?
  • なぜ注目されているのか?

「知っている」から「説明できる」へ
実践で「使える」知識を手に入れる

  • IoT とインダストリー4.0
  • AR とVR
  • 人工知能と機械学習とディープラーニング
  • サーバ仮想化とコンテナ
  • ネットワーク仮想化とSD-WAN
  • アジャイル開発とDevOps
  • マイクロサービスとサーバレス

キーワードは耳にするけど、
それが何なのか、何ができるようになるのか、
なぜそんなに注目されているのか理解できてなかったりしませんか?

【若干名募集】ITソリューション塾・東京と大阪

東京・5月16日/大阪・5月22日 ITソリューション塾 まもなくスタートです。

「最新」のトレンドって、なんですか?

世の中は「最新」であふれかえっています。ただ、その中で、私たちのビジネス・チャンスに結びつく「最新」は、限られています。
中には、私たちのいまのビジネスのあり方を否定し、事業の変革を迫る「最新」もあります。

それを見分け、味方に付けてゆくためにはどうすればいいのでしょうか?

ITソリューション塾は、そのためのお手伝いをしたいと思っています。
わかりやすく、誰もが理解できるように説明するつもりです。

参加するには、「覚悟」や「決心」は不要です。毎週参加するという行動が、自ずと「覚悟」や「決心」を固めてくれます。
まずは「カタチ」がは入れです。それが、次のステージへと自らを押し出すきっかけになるはずです。

IT業界の方、情報システム部門の方、ITを差別化の武器として活かしてゆきたい事業部門や経営に関わる方のご参加をお待ちしています。

ITソリューション塾

最新版(4月度)をリリースしました!

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

LIBRA_logo.png

新入社員のための「最新トレンドの教科書」も掲載しています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*クラウドについてのプレゼンテーションをインフラ編から独立させました。
*使いやすさを考慮してページ構成を変更しました。
*2017年度新入社員研修のための最新ITトレンドを更新しました。
*新しい講演資料を追加しました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
クラウド・コンピューティング (111ページ)
*「インフラとプラットフォーム編」より分離独立
【新規】クラウドによるコスト改善例 p101-108

開発と運用(68ページ)
【新規】管理運用の範囲 p.37
【新規】サーバーレスの仕組み p.40

インフラとプラットフォーム(211ページ)
*クラウドに関する記述を分離独立
【新規】多様化するデータベース p.127
【新規】クラウドデータベース p.156-158

IoT(101ページ)
【新規】IoTはテクノロジーではなくビジネス・フレームワーク p.16
【新規】LPWA主要3方式の比較 p.52

人工知能(103ページ)
【新規】自動化と自律化が目指す方向 p.14
【新規】操作の無意識化と利用者の拡大 p.21
【新規】自動化・自律化によってもたらされる進歩・進化 p.22

テクノロジー・トピックス (51ページ)
【新規】RPA(Robotics Process Automation) p.17

サービス&アプリケーション・基本編 (50ページ)
*変更はありません

ビジネス戦略(110ページ)
*変更はありません

ITの歴史と最新のトレンド(14ページ)
*変更はありません

【新入社員研修】最新のITトレンド
*2017年度版に改訂しました

【講演資料】アウトプットし続ける技術〜毎日書くためのマインドセットとスキルセット
女性のための勉強会での講演資料
実施日: 2017年3月14日
実施時間: 60分
対象者:ITに関わる仕事をしている人たち

【講演資料】ITを知らない人にITを伝える技術
拙著「未来を味方にする技術」出版記念イベント
実施日: 2017年3月27日
実施時間: 30分
対象者:ITに関わる仕事をしている人たち

詳しくはこちらから

LIBRA_logo.png

新刊書籍のご紹介

未来を味方にする技術

これからのビジネスを創るITの基礎の基礎

  • ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
  • ITで変わる未来や新しい常識を、具体的な事例を通じて知って欲しい!
  • お客様とベンダーが同じ方向を向いて、新たな価値を共創して欲しい!
人工知能、IoT、FinTech(フィンテック)、シェアリングエコノミ― 、bot(ボット)、農業IT、マーケティングオートメーション・・・ そんな先端事例から"あたらしい常識" の作り方が見えてくる。2017年1月6日発売
斎藤昌義 著
四六判/264ページ
定価(本体1,580円+税)
ISBN 978-4-7741-8647-4Amazonで購入
未来を味方にする技術

人工知能、IoT、FinTech(フィンテック)、シェアリングエコノミ― 、bot(ボット)、農業IT、マーケティングオートメーション・・・ そんな先端事例から"あたらしい常識" の作り方が見えてくる。

Comment(0)