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知識や経験があるだけでは講師は務まらない

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「今日の受講生(新入社員)は、ダメだねぇ。集中力もなく、こちらの話をちゃんと聴こうとしない。怒りましたよ。ちゃんと話を聞ききなさいと。大切なことを話してるんですから。」

あるベテラン講師が、こんな話をされていました。

私は、「受講者が集中力を保てない理由の9割は、講師側に責任がある」と考えています。特に新入社員はそうですが、ものごとの大切など、そもそも分かっていません。例え理屈では理解できても、体験的に、感覚的に分かっていない彼らに、「これは大切なことなんだから、ちゃんと聴きなさい!」と怒鳴ったところで、仕方のないことです。そんな彼らに、無理強いして話を聞かせることができたとしても、果たして教育効果は期待できるのでしょうか。

「講義は演出8割、コンテンツ2割」だと、私は思っています。講義を楽しみ、講義にのめり込ませるための演出なくして、プロの講師とは言えません。残念ながら、「この分野で長年経験を積んできた人」というだけで、講師は務まらないと思っています。もちろん、経験の蓄積に意味がないなどと申し上げるつもりはありません。ただ、古い知識をそのままに、汚い資料で蕩々と話し、挙げ句の果ては、「ちゃんと聴きなさい!」では、受講生も可哀想です。知識と共に講義力を磨かなければ、講師としての役割を果たせないことを自覚しなければなりません。

新入社員については、特にその工夫が大切なのです。現場を知らず、何が大切かを身体で分からない人たちですから、そこから伝えなくてはなりません。その前提に立った演出を考えることが大切になります。

もちろん、これだという正解はなかなかありませんが、私なりの最近の工夫をいくつかご紹介させて頂きます。

事前課題・事前テスト

研修の内容に即して事前課題または、講義直前テストを行うようにしています。正解を期待するのではなく、受講者自身が「如何に自分は分かっていないか」に気付かせることを目的にしています。容赦なく難しい質問を投げかけることです。もちろん、いくらでも調べてもらって結構なのですが、調べてもすんなり答えが見つからない内容を作ることが肝要です。

「これはヤバイ!」

そう気付いてくれれば目的は達成です。そういう意識を持って講義に臨んでもらえれば、主体的に学ぼうという意欲が生まれます。

本日の達成目標と達成したかどうかの確認

「今日は、この講義が終わってどうなっていたいですか?」

講義の冒頭、数人のグループごとにこのテーマについて議論してもらいます。そして、それを発表してもらい、ホワイトボードに書き出します。

グループ・ディスカッションをせず、「だれか、意見はありませんか?」では、なかなか意見が出てきません。だから、3〜4人くらいの少人数で5分くらいディスカッションをさせて、それから意見を求めるいいでしょう。

講義をどのように役立てたいかを自分たちに決めさせるのです。そして、自分にとっての講義を彼らに作らせる取り組みです。

講義の最後に、最初に掲げた目標が達成されたかどうかを確認します。そして、必要なことは補足すれば良いでしょう。

質問を考えさせるグループ・ディスカッション

「何か質問はありませんか?」

これでは、訊かれた方もたまったものじゃありません。「何かといわれても・・・」と感じるのではないでしょうか。

そこで、講義の節目にやはり数人のグループで「質問を考えるディスカッション」をしてもらえます。そして、質問を考えてもらいます。

グループで会話することで、きちんと理解できていなかったことが露わになり、自主的な教え合いが始まります。また、議論を通じて「なるほどそういうことだったのか」と知識の定着がすすみます。そういう議論の上の質問ですから、なかなか的を射た質問が出てくるようになります。

注意すべきは、「これはどういう意味ですか?」というような「調べればすぐにでも分かる質問」です。「それは、自分で調べてください。」あるいは、「次の休み時間に調べて、みんなに発表してください。」と促します。

また、議論は、立ったままさせることも効果的です。立つことで、脳の違う部分が刺激されるのでしょうか、ストレス解消と議論への集中力が高まるようです。

上記以外にも、受講者の疲れ具合を見ながら適宜休憩を取る、教室を歩きながら話をするなども効果的です。また、なによりも、対話を心がけることです。それは、質問をするということではなく、問いかけるように講義を進めると言うことになるでしょう。蕩々と一方的に話をするのではなく、緩急を付け、笑いをはさみ、時には真剣に訴えかける。そんな演出も大切になります。

講義とは、知識を伝えることではありません。知識を得たいという意欲を引き出し、彼らが主体的に知識を取り込めるようにお手伝いをすることです。簡単なことではありません。ただ、そういう工夫を怠っては、講師としては失格だと思います。

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目次

  • 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
  • 第1章 クラウドコンピューティング
  • 第2章 モバイルとウェアラブル
  • 第3章 ITインフラ
  • 第4章 IoTとビッグデータ
  • 第5章 スマートマシン

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