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ポストSIビジネス:「新規事業の進め方、全然違うかなと思いました」というご意見

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先日(1月14日)投稿した以下のブログに、「全然違うかなと思いました」というコメントをK氏より頂きました。

>> ポストSIビジネス:新規事業を成功させるプロジェクトの進め方

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K氏は自らも会社を立ち上げ、新規事業の開発にも関わられた経験も豊富で、彼の話にはいつも沢山のことを学ばせて頂いております。このご指摘も、そんな経験を踏まえた、なるほどと思えるものばかりで、多くの気付きを頂きました。

K氏と小職のやり取りは、新規事業に取り組む方にとっても参考になるのではと思い、そのまま転載させて頂きます。

【K氏】毎日興味深く拝見してます。なるほどウンウンと毎日思ってましたが、今日は全然違うかなと思いました。KPIも四半期も。むしろ今回の提言はダメパターンの典型かなと。

【K氏】 また、やりたいとか言ってても、任命したら死ぬんじゃないかなと。もし本当にやることが見えてたら、よほどのバカか賢くない限り、不満を抱えてる組織ではやらないかなと。

【斎藤】 おっと、そうですか ^^;  ただ、オーナーシップ、つまりは責任の所在を明確にしなければなかなかうまくいかないのも確か。どうすればうまくすすめられますかねぇ 。

【K氏】 今回の組織提言は日産ゴーン改革とかで出てきたクロスファンクショナルチームに読みましたが、これはわかりやすい課題解決にいいと思います。経費削減とか既存事業の収益拡大とか。でも、ゼロ〜イチのところは圧倒的な個性とスルー力を持った1人ないし最大で2人がバイネームかつこいつないしこいつらでダメならしょうがないというコンセンサスを得られてないと精神が持たないかと思います。

【斎藤】 なるほど・・・新規事業に於いては、組織や体制そのものと言うより、誰がやるかといった問題の本質だと言うことでしょうか。既存を改革する場合とまったくのゼロからイチを生みだす場合とは、その本質が異なっているということですね。リーダーシップ、発想力、あるいは、押しの強さとはみ出すセンスといったところでしょうか・・・

【K氏】 成功とみなす条件は、精緻に決めれば決めたほど戻れなくなります。むしろ従事者のモチベーションを観察して後ろ向かない限りgoなぐらいかなと。始めたらやってる本人が一番わかりますし、そこに言葉ではウソをついても隠しきれないから、任命者もよくわかるハズ。

【K氏】 「誰」はあるきっかけを得るまでの精神的な持続に資するファクターで、持続的にもがければ「何」をするか見つかり、そこまでくればクロスファンクショナルチームの立ちあげ時期と言えるかも。

【斎藤】 既存を改革することの「成功」とゼロからイチの「成功」は違うということはよく分かります。前者には予め何をもって成功とできるかのKPIを持つことができますが、後者ではそれが存在しません。つまり、自分がそれを成功と見なしうるかを自分で判断しなければならないし、またそれを第三者から客観的に認められることでもある。また、途中でピボットもするでしょうから、なかなかKPIなど決められない、ということですよね。

【斎藤】 最初は「誰か」に依存し、ゼロがイチになったら、組織や仕組みが支える。そんな組合せによって新規ビジネスを起ち上げ、それをそこで終わらせることなく拡大させてゆくシナリオということになるのかもしれませんね。

【K氏】 「誰」は「何」が見えるまで粘れるかの組織的な資質で、粘る体力があれば重要度は下げられる。しかし何をおいても先にKPIありきならば粘りを放棄させやすくなるか、従事者を発狂させるかになるかなー。運って大事ですがそれを呼び込むのも生き残ってのことなので。

【K氏】 方便として引導渡すためのKPI設定は経営者の腹の中だけに確実に持つべきとは思います。

【斎藤】 「経営者」と「新規事業開発の責任者」の腹の据わり具合が、うまくいくかどうかを大きく左右すると思っています。しかし、これについては、仕組みや教育で何とかできるものではなく、そういうひとをその役割に据える力量が問われていると言えますね。新規事業がなかなかうまくいかないのは、そんなところに本質的理由があることは確かだろうと思います。

【K氏】 経営者も自分が何やってるか、何をやろうとしてるかちゃんとわかってる場合は少ないんじゃないでしょうか。ただ漠然としてるところに、何人か、何回か、失敗しても自分まで死なない程度の実験を繰り返せるかが勝負。従事者の目が死んだらバッサリやり方かえて、従事者が死んだら(比喩として)残る組織がおかしな不満を持たず、そして鱠を吹かないように。かなと。

【斎藤】 「失敗」の取り扱い方とでもいうのでしょうか。伝統的な(?)日本企業は、失敗は減点で、時にして致命的マイナスとして評価されることがあります。経営者は口頭では「好きなように、思い切ってやりなさい」とはいっても、自分の価値基準で「正しいこと」をやっている範囲であれば、好きなことをゆるされるのですが、それ以外は赦さないし、もしそれで失敗しても助けてはくれない。新規事業の壁は、こんなところにあるのかも・・・

【K氏】あと、持論として抜擢や選抜は実績ないところを潜在的能力の発掘を持って行うから抜擢なので、そうじゃなければ褒賞で、そこにダイレクトな成果として実績を求めるのは矛盾だと思います。今までの人とやり方でうまくいってないからこそ、新しいことを新しい人材でチャレンジするべきなのでしょうから。

如何でしょうか。私は、この議論を通じて、次のような気付きを得ることができました。

  • 既存を改革する取り組みとゼロからイチを生みだすアプローチは、本質的に異なる。
  • ゼロからイチを生みだすアプローチは、それを「誰」がやるかが重要。
  • ゼロからイチを生みだしたあと、それを大きく育てるときとではやり方を変えなければいけない。
  • ゼロからイチの新規事業に予め「成功の基準」や「KPI」を定められるわけがない。
  • 「抜擢や選抜は実績ないところを潜在的能力の発掘を持って行うから抜擢なので、そうじゃなければ褒賞で、そこにダイレクトな成果として実績を求めるのは矛盾だ」・・・その通り!

ご参考まで。

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