プレゼンテーションで聴衆を引き込む3つのテクニック
プレゼンテーション資料をソフトコピーで配布する人が増えている。私もそんなひとりだが、「ノウハウを勝手に使われてしまうんじゃないか。」、「講演や研修の依頼が減るのではないか。」と心配してくれる人がいる。ありがたいご忠告ではあるが、そんなことは全く気にしていない。
こういう人たちは、講演や講義は、内容だけで成立するものではないことを理解されていないのかもしれない。
講演や研修に行くという行為は、ライブ・コンサートに行くようなもの。わざわざ時間をかけ、お金をかけてエンターテイメントを楽しもうという行為だ。知識を求めているだけなら、本でもネットでも事足りる。わざわざ足を運ぶのは、その場の臨場感や感動を楽しみたいからだ。
資料というのは、プレゼンテーションの道具に過ぎない。もちろん、資料をおろそかにしても良いという話しではない。そのことについては、昨日は書いた通りだ。ただ、その資料を使ってどんなパフォーマンスを演出するかが、プレゼンテーションの醍醐味でもある。
プレゼンテーションがめざすべきは、感動を与えることだろう。心の奥に言葉を届け、行動や意識を変えるきっかけを提供することともいえる。当然、資料の中身もそれにかなうものでなくてはならない。しかし、それだけでは心に届かない。そのためには、「対話」、「共感」、「間合い」を意識しなくてはならない。
対話
会場の反応を読み取り、それに対応すること。頷き、笑い、居眠り、メモなど、相手はこちらの話す言葉に反応してアクションする。例えば、「そうそう」と頷いていたら、「やっぱり、そうでしょ」とこちらも相槌を打つ。ネガティブな話題で自分達もそうだと苦笑していたら、「あっ、これ一般論で、ここにいらっしゃる皆さんには無縁の話ですから。」などといって、笑いを誘う。ある人に向かって「今の話、わかりました?」などと言ってみる。少し首をかしげているようであれば、同じ話題を別の表現でもう一度説明する。このような、会場との無言の対話を心がける。
「何か質問はありませんか?」と声をかけ、「では、ないようですので、次に移ります。」では、対話にはならない。こちらが求める反応ではなく、こちらの話の中から生まれるライブな反応に対応することが「対話」だ。
共感
話を聞く人には、この会場に来た目的や期待がある。また、問題意識を持って参加してくれている。それを自分も理解していると言うことを伝えることが「共感」だ。「今、私たちは×××な状況に置かれています。」、「いま、こんな話が話題になっていますよね。」といった一般論もある。ひとつの企業での講演であれば、「御社ではいまこのような事業にとりくまれ、×××な状況でご苦労されているようですが・・・」、「今の社長の話にもありましたように・・・」なとと、自分も同じ問題意識を持ち、それを理解した上で話しているというメッセージを伝えると、相手も親近感を持って話を聞いてくれる。ただ、くどくどと話してはいけない。
分かっていることをくどくど話されほどつまらないことはない。しかし、現実には、「御社の問題は・・・」、「御社の事業計画は・・・」とやたら話したがる人がいるが、それは辞めた方が良い。さらっと伝え、自分も理解している、同様に感じていると、わかってもらえれば十分だ。
間合い
一本調子で話し続けないこと。話のスピードを変えてみたり、沈黙をはさんでみたりも有効だ。特に、沈黙は大切だ。例えば、ひとかたまりの話をしたあとで、「これ、どう思います?」あるいは、「分かりました?」と問いかけるようにして、すこし黙っている。こうすることで、聞いている人は、頭を整理でき、知識の定着が促される。また、そこに生じる静けさは適度な緊張感が生じさせ、コックリしている人も目を覚ます。
沈黙だけではなく、わざと大きな声をだしてみたり、小さな声でささやいてみたり、そんな演出も織り交ぜながら、緊張と弛緩を生みだす。このようにすれば、聞く人たちの疲労感も軽減される。
「居眠りするのは、受講者の問題だ」という人がいる。しかし、居眠りの8割は講師の責任だ。聴衆に居眠りをさせない言葉と演出を心がけもせず、受講者に責任を帰するのは講師としての自覚が足りない。その努力をしてもダメなときは、なぜダメだったかを顧みて、自らの次なる仕掛けを工夫しつづけなくてはいけない。
プレゼンテーションをうまくやりたいなら、ここに紹介したようなテクニックは大切だと思う。ただ、それ以前に、伝えるべきメッセージをしっかりと持たなければ、テクニックなど何の役にも立たない。そのためには、昨日のブログでも紹介の通り、資料作りにも手を抜いてはいけない。それがあって、メッセージは確固たるものとなり、言葉も磨かれてゆく。そういう言葉の弾丸がテクニックという武器を介して、心の奥に打ち込まれてゆく。
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目次
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- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
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