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New Context Conference 2011 Spring は面白かった

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4/16土曜@代官山DGビルのNew Context Conference 2011 Springに参加した。詳細はUstreamアーカイブがあるので、そちらをどうぞ。
本来はネットとスタートアップがメインのNCCだが、今回は「生活基盤としてのソーシャルメディアの未来」といいつつ震災がテーマになり、だいぶ感じが違ったが、Hacker的な視点から草の根ガイガーカウンタープロジェクトが議論されたり、興味深い内容で面白かった。セッション登壇者も素晴らしかった。

午前は、
9:40 - 10:00     基調講演 Twitter社 Abdur Chowdhury氏
10:05 - 10:50     セッション1-1:ソーシャルメディアとマスメディア
10:55 - 11:40     セッション1-2:ハードウェアとセンサーネットワーク
11:45 - 12:30     セッション1-3:スピードとアジャイルソフトウェア開発

■基調講演 Twitter社 Abdur Chowdhury氏

@abdur は、震災発生時のTwitterトラフィックを可視化したものをプレゼン。こちらのブログにもちょと出てます「『コンテクスト・カンファレンス』にお邪魔してきました(前編)

■セッション1-1:ソーシャルメディアとマスメディア

Abdur Chowdhury氏、伊藤穣一さん、鶴田さん@慶応大/PrayForJapan、ニューヨークタイムズの田淵さん、デジタルガレージの佐々木さん、日経新聞の小柳さん、のパネル。

日経新聞の小柳氏:大津波で避難命令が出た地域に、日経のメイン印刷工場があった。印刷能力は大幅に低下。「もうネットで発信するしかない。紙には頼れない」。紙の新聞のpdfを掲載。しかし被災地はネット環境もないので、「ネット版を印刷して被災地に持っていってくれ」被災地に刷って持って行ってくれ!というツイートをしまくった。

伊藤氏:ハッシュタグはオーバーロード=情報の洪水してしまって機能しなかった。
田淵氏:情報整理をしている個人のツイートを追っていた。
ムーブメントを作るにはハッシュタグはよいが、情報を得るには「信頼できる個人をフォローする」ことですね。

田淵氏:今は情報はあふれており、TEPCOの記者会見も誰でも見られるし、誰でも情報が手に入る。既存メディアの役割はbreaking newsではなくなった。既存メディアの役割は溢れる情報を取捨選択して正しい情報を伝える「キュレーション」になっている。

小柳氏:「炉心溶融」という言葉を使うか。ニューズルームで激しい侃々諤々だった。世の中へのインパクトも考えた。最終版締めギリギリで「使う」と決まった。センセーショナルにしてはいけないが、だが事実は伝えないといけない。極めてヒューマンな判断だった

伊藤氏:blogのときがそうだった。マスで話されていないこともblogで議論されていたりしているが、Twitterはどうか
小柳氏:Twitterは「揮発性メディア」。一方で紙は「積み重ねのメディア」。トップに記事にしてから継続して調査もする。そのバランスが大事。

NHK倉又氏:NHKをUstをした人がいて、 @nhk_pr が英断で認めた→組織としても承認→ニコ生から「なんでだ」といわれたので駆け回ってそれもOKにした→その後オフィシャルでUstも。ここまで一週間。災害報道は色々なツールを使ってやる。放送は届かないと意味がない
一般の番組が始まって、蓋をしたが、今後公共放送のモノとしてやっていかないと、と痛感したそうだ。

佐々木氏:マスメディアもTwitterやfacebookを使い情報を配信。情報の受け手は「マスコミはこう言ってる、専門家はこう言ってる・・・」と吟味して情報の自浄作用が働いた。マスコミとソーシャルは敵同士ではない。

鶴田氏:pray for japan.jpサイト立ち上げ、すごい反響。すぐにボランティアが翻訳を始めた。被災地の在日外国人9万人。日本語の情報がない中で、母語で不安な気持ちを取り除く役割を果たせたと思う。
鶴田氏:出版の印税を震災支援に。震災への直接でなく、活動をしている団体への寄付をして活動を継続して行えるようにしていきたい。
伊藤氏:まだ公がNPOへの支援が少ないがこれをきっかけになればと思う

■セッション1-2:ハードウェアとセンサーネットワーク

慶応の村井純教授、Ray Ozzie氏、chumby社のディレクターAndrew Huslage氏、Iospectora - International Medcom社のDan Sythe氏によるセッション。

Aaron Huslage @rdtnprobes さんはCrisis Response Specialistで、ガイガーカウンターを作り、作り方を教え、クラウドソーシングで数値を公開する草の根プロジェクト RTDN.org を。RDTNのブログ


YouTube: rdtn_earthquake.mp4

あと、We (@tkohackerspace) are looking for iPhone dev for RDTN.org proj. Let's add it to your rig. :) とのツイートも・・・iPhoneガイガーカウンターも披露された。
これがiPhoneをガイガーカウンターにするアダプタ(出所http://yfrog.com/hsaw9pxj)
Iphonegaigeraw9px

Dan Sytheさんはチェルノブイリ/スリーマイルのRaditaiton Detectionにも関わった方。 ガイガーカウンターの製造や放射物の監視システムを開発。高性能ガイガーカウンターをもってきてくださったが、ただいまの東京の数値はDanさんの地元ハワイより数値が低い、と。火事がおこった時に人をパニックにさせたくはないが、火事があるということをきちんと知らせたい、人に必要とされる正確な情報を伝えたい、と。
Danさん:センサーによって計れる物が違う。発電所の中の強力なガンマ線を計測することを主体としたセンサーではαとかβとか弱いのは感知されにくい。ソースが何か、どういうセンサーを使っているかを知ることが大切。マスメディアは何を聞けばよいのかわかっていない場合もある。より詳しい市民はいるので、彼らがもっとマスメディアにどんな質問をすればよいのかを教えられればよいのだが。なんでもSv/h単位にして報道するのはまとめすぎで、実際には複数の異なる計測センサーのデータが必要。
Danさん:放射能データは町に一個レベルではダメ。風によっても雨によっても場所によっても異なる。たくさんの国民がガイガーセンサーを持つべきでガイガーカウンターを手作りする人も増えている。センサーを使う知識、データを読む知識も国民が身につけないといけない。ちなみにロシアでは一般市民がガイガーカウンターを所持するのは違法とか。

また、600台のセンサーをkickstarterで寄付を集めて、日本に提供するプロジェクト進行中。まだ寄付が足りません→Kickstarter

■セッション1-3:スピードとアジャイルソフトウェア開発

Paul Campbell(HyperTiny), Paul. Michelle Levesque, David and PhilとJoiのセッション。

Paul Campbellさん:HyperTinyは短時間で最低限利用可能なレベルの製品を開発することに特化したアジャイルウェブ開発チームの二人組。Skypeで話しながらどんどんソフトを作っていき、いじりながら直していく。

Michelle Levesqueさん:元々はCitizenLabにいてキルギスタンの投票を監視するシステムを作ったりしていたハッカー。前職のGoogleの「難しすぎて解決できない問題はない」という考え方が好きだった。難しい問題にはアプローチを変えてやればいい。

Joi:日本の経営とITについて。銀行は情報システムで予算の大きさ競っていた。企業の規模が大きくなり、歴史が長くなると、意思決定者が「実務レベルで何をやっているか」がわかりにくくなる。
@shonjo:「リアリティ減るとイノベーション減る」 @joi 伊藤さん、大組織幹部とハイパーレスキュー消防を例にオーナーシップの大切さを話す中で。
Joi:Less is More に日本も変わっていくのでは。今まで、日本ではお金を使ってるとすごい/偉いと思われていた。今はどれだけ安く作れるか、どれだけコストセービングできるかの方がすごいのに、ものすごいお金をかけている物と比べて軽視される。

開発の議論では、イノベーションはハッピーな中から、Rubyでハッピーなプログラマーの環境を、という視点。日本には苦しみの美学あるが、そうじゃなくて。また、ソフトウェアも、最低限の機能でまずはローンチし、進化させるアプローチを。

EvernoteのPhilは、日本はイノベーティブだ!と元気付けるようなエールを送る発言が多かった。Phil Libinについて詳しくは、こちらをご覧下さい→「Phil Libin, Evernote CEO @Teclosion/NCC 2011 Spring

■午後の部

□unconference

パノラマで被災地を記録したQTVR Diaryの二宮章さんのセッションが迫力あった。
こちらからパノラマがみれる。
京都からパノラマ撮影を行う二宮氏:360度の景色写真であるPanoramaVRの狙いは疑似体験と、再体験。パノラマは現在静止画がメインだが、近日に動画対応する。定点から360度見渡せるようになる。そうなったときに一気に普及するのではないかと思っている。パノラマVR動画は2年ぐらいで実用化が進む。その関連技術を利用したSNS的ポータル「LiveMotionVR.com」サイトを公開する予定。

山崎富美 @Fumi さんは、4/10のTEDxEarthquake9.0のプレゼン資料をもとに、さらに深堀。Hack for Japanプロジェクトはすばらしい。

□ライトニーングトーク

外村さんとJoiさんが紹介:被災した日本に寄付だけでなく元気になってもらおうと、起業家10人を米国で1週間コーチするプロジェクト発足。アイデアや創造性ある人を。スポンサーやボランティアも募集中。外村さんによると、事前にしっかり計画されたものでなく、こういうやり方もありだよ、ということを実地で分かってもらうといいとの意図もあるそうだ。シリコンバレー的である、午前のソフト開発のアプローチと似てる。

Paul Campbell のプレゼンは、アイディア賞。出所 http://plixi.com/p/92871139
Paul

□Open Network Lab 二期生プレゼン

GroupeLago.com サークルにいるメンバーのtwitterなどのやりとりをアグリゲートして、サークルの雰囲気が入る前に分かるサービス

Frenzee デジタルコンテンツの発掘アプリ

compath 写真共有アプリ。時間、場所、感情などからサジェストされる仕組み

Wondershake 位置情報を使ったネットワーキングサービス。これが優勝。リーダーの鈴木さんは、昨年のfoursquare CTOディナーにDave Mcclureに誘われていったら同じテーブルに・・・で、翌日ONLab前田さんとランチ時に、「若いのもイイヤツいるなぁ」と言ったら、「誰それ」と聞かれ、「鈴木さん」と答えたら、当然知ってたということもあり。プレゼンは圧勝だった。Teclosion 2011 Springでも優勝。でも、これからですよ、慢心しないようにね。

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<参考>

New Context Conference 2011 Spring (#ncc2011s) まとめ (2011.04.16)

一人シリコンバレー男「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2011 Spring 『震災後のソーシャルメディアのお話』」

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