他人を助けたくない日本人、世界でほぼ最下位!?
(一年余り前、「日本人のビジネス行動(資本主義)観とボランティア活動」のテーマで丸和育志会から依頼され、文献等のリサーチからのまとめから、簡単な短縮版(余談を加えた)をここに紹介します。まとめペーパー(全14ページ)はこちら。)
チャリティーズ・エイド・ファンデーション(英国本部)という慈善団体が、「World Giving Index」という人助けランキングを毎年公表しています。100カ国以上の人々を対象としたインタビュー調査の項目は、この1カ月の間に、「Helped a stranger=見知らぬ人/助けを必要としている知らない人を助けたか」、「Donated money=(慈善団体に)寄付をしたか」、「Volunteered=ボランティアをしたか」の3つです。
2022年のレポート(2021年調査)では、総合で日本は119カ国中118位です(最下位はカンボジア、米国は3位、中国は49位、ドイツは55位、韓国は88位)。日本は項目別で、「Helped a stranger」が118位、「Donated money」が103位、「Volunteered」が83位と、いずれも低い順位です。
この調査でインドネシアが1位ですが、イスラム教の「喜捨」という慈善の教えの影響があり、複数のアフリカ勢が上位に入っているのは、伝統的に「ウブントゥ」という助け合いの哲学があるとも言われています。つまり、宗教や文化の影響が大きいのです。
例えば、日本にはお返しルールがありますが、欧米ではキリスト教会がそれを否定し(金持ちはお返しできるが、貧しい人はできないから)、現世では見返りを求めない無償の贈与の文化があります。見返りを求める「有償の贈与」、すなわち「お返し」ルールが強固に残っていることに、筆者も違和感を覚えます。
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「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(内閣府、2018年)は、7カ国で13〜29歳の若者を対象にボランティア活動に対する興味の有無を尋ねましたが、日本のボランティア意欲は最下位でした。他国に比べ、困っている他者に冷淡な日本人と指摘する研究者もいます。
困っている人は自分の力でなんとかすべきと、自助と自己責任を強調するのが日本人の特徴と言う学者もいます。駅の階段で困っているお年寄りを助けないのは、その人が顔見知りではなく、見知らぬ人だから、つまり内輪には優しいが、そうでない他者には冷たいと指摘しています。
また、ボランティアポイント制度が2020年度に599市区町村に拡大しました。本来ボランティアは、自発性・無償性・公共性が特徴ですが、日本では実質的に低廉な労働力として有償ボランティアが多用されています。
なお、ボランティアできない理由の一つが、長時間労働です。少子化の原因の一つとも言われていますが、日本社会の構造的な問題です。
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余談ですが、筆者が仕えたCSK/セガ・グループを率いた大川功氏は、寄付について日本はジェラシーがあるなど難しさを語っていました。そこで、名前が出ないような寄付や米国MITへの寄付をしていました(早稲田大は母校であり、学位のこともあって、名前を出しての寄付)。
また、2011年の東日本大震災の直後、一助になればの一心で物資を集めて被災地に届ける活動をしている友人のチームを、おかしなことをしていると警察に通報しようとした人がいました。人助けを曲解(悪いことをしていると思う)する文化が、どこかにあるのかもしれません。
文化を変えることはなかなかできませんが、新たな文化をつくることには少しづつでも努めたいと思います。