NPO法人は活躍できるのか!? 課題と事例
(一年余り前、「NPO法人とソーシャルビジネス活動の関係性」なるテーマで丸和育志会から依頼された、文献等のリサーチからのまとめの、さわりをここに紹介します。まとめペーパー(全14ページ)はこちら。)
2021年に内閣府が実施したNPO法人調査の結果が、令和2年度 特定非営利活動法人に関する実態調査(令和3年8月31日公表)としてまとめられています。本調査では、NPO法人の抱える課題として、
・人材の確保や教育
・後継者の不足
・収入源の多様化
・法人の事業運営力の向上
がトップ4となっています。
NPO法人の現状と問題や課題
NPO法人の金と人
・財務・資金的な難しさ
多くのNPO法人が収入の確保、そして財務・資金面で苦しんでいます。NPO法人は寄付や助成金、補助金に依存しやすいため、安定した資金確保が難しい面があります。特に経済的な不況や寄付意欲の低下などの影響を受けやすく、寄付が得られにくいことがあります。また、助成金や補助金の申請が難しい点もあります。また、多くのNPO法人は人員や資金の制約から、大規模なプロジェクトや広範な社会課題、そしてソーシャルビジネス的な積極果敢な事業に取り組むことが難しい点があげられます。
・人材の確保や教育の必要性
多くのNPO法人が財務的な制約・困難を乗り越えるべく、無給職員の活用や職員給与の抑制など、手を尽くしているが、その限界ならびに質やモラールの問題もあります。一部のNPO法人は、必要な専門的なスキルや知識を持つスタッフを確保することが難しい場合があります。そして、適切な人材と人のマネジメントなくして、ソーシャルビジネス的なパフォーマンス重視の営利事業に取り組むことは容易でないでしょう。
・後継者問題
多くのNPO法人が後継者問題を抱えています。NPO法人ならびに活動の継続性が問われ、さらには長期的なビジョンやプランが持ちにくい問題があります。また、後継者問題をそのままにして、ソーシャルビジネス的な事業に取り組むことは現実的ではないでしょう。
NPO法人の経営的課題: 以下のような経営的課題があげられる(規模が大きいとなおさら)。
・組織運営の不備
適切な組織運営が行われていない場合、活動が効果的に進まず、メンバーやボランティアとのコミュニケーションが不足することがあります。適切な人材の確保やトレーニングも課題となり得ます。
・戦略の欠如
具体的で戦略的な計画が不足している場合、組織は目標達成に向けた方針を見失うことがあります。課題の選定や戦略の策定が不十分であることが挙げられます。
・プログラムの不適合
提供されているプログラムや活動が、対象の課題やニーズに十分に適合していないことが問題となります。調査やモニタリングが不十分なままプログラムが進行することがあります。
・組織文化やリーダーシップの問題
組織文化やリーダーシップが課題に適していない場合、メンバーやボランティアのモチベーション低下や組織内の摩擦が発生する可能性があります。
・効果的なコミュニケーションの不足:
メンバーやステークホルダーとの効果的なコミュニケーションが不足していると、進行状況や成果の共有が不十分で、組織の目的や進捗が理解されにくくなります。
これらの課題に対処するためには、組織全体での改善が必要です。改善策としては、組織のミッションと戦略の再評価、適切な資金調達戦略の立て直し、組織運営の効率化、コミュニケーション強化、スキルや知識の向上のためのトレーニングなどが挙げられます。ソーシャルビジネス的な活動に取り組むなら、なおのことこれらマネジメント力が問われます。しかし、現実的にこれらが十分に実施できるNPO法人は限られるでしょう。
もう一つの課題
内閣府「NPO法人に関する世論調査」は、世論の行政に対する要望として、1位「情報提供の充実」に次ぐ2位は「悪質なNPO法人の排除」と示しています。つまり、よく分からない悪いNPO法人も多い、と一般に認識されていると言えましょう。これでは、ソーシャルビジネス的な活動に取り組む以前の問題が横たわっていることになります。
NPO法人のあり方:事例
まとめのペーパーでは、特定非営利活動法人 エル・コミュニティ(福井県鯖江市)の事例を紹介しました。若者による地域活性化のための活動を支援する団体として、特定の地域や分野にとらわれることなく、若者の意見を地域社会に反映させる仕組みづくりとその促進、多様な人材と学びあえる場と新たな地域ブランドの創出を目的として活動している特定非営利法人です。
行政からの収入はわずかで、竹部代表は、「税金に依存しないNPOを。」と意識して各事業に取り組んでいます。大企業とのアライアンスなどを積極的に獲得しており、グローバルな大手ソフトウェア企業SAPとのコラボレーションを複数実施しています。
エル・コミュニティは、NPO法人という形態の制約の中でも、ソーシャルビジネス的な活動が追求できる可能性を示している例かもしれません。
2025年1月末締め切りで、採択者には支援金100万円+伴走支援を提供する「鯖江ITスタートアップ支援事業」を行っているので、ご興味ある方はご応募ください(筆者もメンターの一人)。
なお、日本ではNPO法人が注目されていますが、諸外国での「NPO」は多様な組織を含んでいます。様々な形の組織が社会の問題に対して、活躍する道をつくりたいものです。