成長を加速させる~4つの成長スタイル~
成長を加速させる~4つの成長スタイル
先日、うちの新人が良いことを言っていた。
「最近プロジェクトでToDo管理を任されているんです。ToDoを棚卸して進んでないものを洗い出して、担当者のところに行って"コレどうですか?"と言えばある程度ToDoは消化されていくんです。ずっとこれで良いと思っていました。でも、少し工夫するともっと進むと気が付いたんです。正直、適当にやっていても仕事としては成り立つんです。でもそれじゃダメなんだと。もう1段工夫できるんだと気が付きました。まぁこれは、A先輩の動きを見ていて気が付いたんです。A先輩がいなかったら、今のレベルの仕事で満足していたと思います。」
なんて素晴らしい気付きを得たのだろうか。おじさんは感動した。この話を聞いて重要な要素が幾つか隠れているなと思ったので、まさに「成長のための備忘録」を残してみようと思う。
成長の4つのスタイルの話だ。
■成長のスタイル①:「受動経験型の成長」
初めての仕事。ToDo管理。やってみた。「どうですか?」と聞くとTodoが進む。場合によってはそれだけでは進まないこともある。だから少しやり方を変えてみた。上手く行った。これが「経験」だ。
人は生きていると色々経験する。
・xxの時に、xxになった。
・xxの時に、褒められた。
・xxの時に、怒られた。
これらが「経験値」として蓄積される。少しずつ状況に対する「答え」みたいなものが積み重なり、熟達していくことになる。そして、同じ状況の2回目なら、1回目より上手くやれるようになる。これが「経験による成長」になるのだが、これは極めて受動的な経験。意図せずやったら上手く行ったというタイプの経験であり、たまたま不可抗力によって得られる経験になる。
■成長のスタイル②:「お手本型の成長」
受動的な経験より速度が早いのが、お手本を見ること。先輩だったり書籍だったり。自分が経験しなくても、誰かが自分より上手くやっていればそれを盗むことでより早く成長できる。
自分がそこそこ上手くやっていると思っていたことも、先輩の仕事を目の当たりにして「もっと上手くやる方法があるんだ!」と知れる。それにちょっとしたショックを受ける。だから、もっと上を目指そうと思う。先輩のテクニックを盗もうと思う。真似ることで先輩のテクニックが自分のものになる。
これが、先駆者の動きから学ぶ成長だ。でもこのスタイルにはいくつか問題がある。
①「俺の仕事イケてる」と勘違いしやすい。
近くに手頃な先輩がいればいいけど、いないことも多い。先輩がいても、その仕事を自分より上手くやっているとは限らない。
適当なお手本がなかったら、そこで現状に満足してしまう。自分より上手にやっている例を見たことがない、見る機会がないから、「こんなもんで良いでしょ?」「俺上手にやってるでしょ?」と感じてしまう。会議の進め方なんてその最たる例だ。グダグダ会議なのに、上手くやってる例を見たことがないから「そんなもんだ」と思ってしまう。そう思った時点で先はない。
②自分の「学ぶ力」が伸びなくなる/「学ぶ力」があると勘違いしやすい。
お手本から学ぶと、自分が努力して成長したように勘違いしてしまう。実際はお手本の真似をしただけで、自ら成長のために工夫し、経験を積んで、気付きを得たわけではないのに。
「学ぶ力」はいくら猿真似しても強化されない。"自分で気付きを得る"ことで始めて強化されていくものだ。自分で学び取る力を育てないとお手本がなくなった時に、確実に行き詰る。
もちろん、"だからスタイル②がダメ"なんて言うつもりはないが、注意しなければならない。
■成長のスタイル③:「積極経験型の成長」
スタイル②の問題を上手く避けるためには、どんな仕事でも"1段上"があると言い聞かせることだ。
自分がやっている仕事の品質やスピードが、どれだけそれっぽく出来ていても。
誰からも怒られず、順調に進んでいるように見えても。
必ず、それより上手くやる方法がある。それより高い品質を叩き出す方法がある。必ず。
現状に満足してしまってはその先はない。この気持を持っている人は、常に工夫をすることが出来る。
まだ見ぬより良い環境、より良いスタイルを目指して自己研鑽することができる。
そしてそこから新しい気付きが手に入る。「お、こうすると、うまくいくっぽい!」という気付き。
スタイル①だけの人と、スタイル③を上手くやれる人では、伸び方が全く違う。優れた先輩がいなくても、優れた手本がなくても自分で伸びるのだから。
これを聞いて「レベルが高いな」「しんどそう」「意識高い系だな」。なんて思った方は気を付けた方がいい。この境地に辿り着けなかった人達の末路は「自分の仕事がイケていると思いこんで慢心し、向上心を失った仕事の出来ない勘違い中年」である。まともな仕事がしたいなら、当然身につけるべき成長スタイルのはずだ。
前出の新入社員は、「現状に満足しかけていた」「上には上がいると知った」「少し工夫すると一段上の仕事ができる」「どうもこれは楽しいらしい」という気付きを得たようだった。これが素晴らしくいい。これが原体験になってスタイル③の成長を日常のものにして欲しい。
同じ仕事をしていても、「一つ上を目指して工夫しよう」とするやつと「適当でいいか」と思うやつで成長の速度は信じられないくらい変わる。
なんとなく経験するのではなく、色々考えた上での経験が手に入る。同じ仕事でも「つまらんな」「他の仕事したいな」と思うか、「この仕事はそこそこ上手くやれるけど、もっと上手くやるためにはどうしたらいいか?」「もう1段工夫できないか」と考えるか。たったこれだけの事だが、1年後にどえらい差になる。さて、もう一つ、スタイル③での成長を加速させるコツがある。
「積極的な経験」を徹底的に言語化せよ
多くの工夫をして考えながら仕事ができてきたなら、もう少し踏み込んで「経験を言語化して、触れるように」しておくことを強くお勧めする。あれこれ工夫すること自体価値があるが、それをそのままにしておくと勿体無い。
・具体的に"何を"したら、ToDoが上手く進んだのか
・具体的に"何を"したら、上手に伝わって相手が動いてくれたのか
を言語化にして理解しておくのである。なんとなく上手く行った、ではなく、「AをインプットしたらBという結果が出た」ということを言語化して理解しておく。なんとなくやった経験は、所詮なんとなくのノウハウにしかならない。
「どんな状況で"何を"したのか」ハッキリ言語化できると利用可能性が一段上がる。
この言語化は、次の成長のスタイル④にも直結していく。
■成長のスタイル④:「原理原則型の成長」
世の中一般的には、スタイル③までを実現できる人間が重宝される。自分で工夫して積極的な経験をできる人間が優秀だと思われている。確かに、ボケっと過ごす連中と比べれば、天と地ほどの差になるのは明白だ。それは間違いない。
でも、まだ1段上がある。・・・そう、常に1段上があるのだ。
自分なりに工夫して、上手くいったケース、または、下手こいたケースが沢山蓄積されてくると分析ができるようになる。
・"なぜ"上手くいかなかったのか
・"なぜ"上手く行ったのか
・"何が"違ったのか
・"何が"決定打になったのか
上手くいった事、上手くいかなかった事を比較し、違いを言語化する。メカニズムを紐解くと言っても良い。「どんな状況で何をしたらいいのか」から「なぜそうするのか」へ立ち戻る。
多くの人間が短絡的に「何をすれば良いのか?」とお手軽なノウハウを求めるが、「すること」には本質はない。「なぜそうするべきなのか」にこそ本質が隠れている。そこを押さえていなければ応用はできない。
経験による成長だけでは、「手探りで経験した事」しか蓄積されない。「Aという事象の場合Bをするとうまくいく」と過去の経験から知っているので対応できる。
でも少し変わった「A'という事象」に当たった場合、また手探りで対応を考えないといけなくなる。(Aの状況を足がかりに考えたりするが、結局手探りなことは変わりない)
もし、過去の経験から、普遍的な教訓を抜き出し言語化することができれば・・・。
「なぜBをすると上手くいくのか」その背後にある論理を押さえられれば・・・。
AにもA'にも適用できる教訓を言語化しておけるなら、圧倒的に応用が効くことになる。「再現性が高まる」とも言える。
「A'の状況は経験したことはないけど、論理を当てはめるときっとDを適用するとうまくいくはずだ!」という考え方が出来るようになる。
これが経験型の成長とは比較にならない加速をもたらしてくれる。
ちょっと分かりづらいので、先程の事例で考えてみる
先程の例で考えると
・どうしたら、Todoが進まず
・どうしたら、上手く進んだのか
この2つの事象の違いが何なのか、どこが違ったらから結果が違ったのかを考えるのだ。どうやら・・・
単に「このTodoどうなってます?」と聞くより
「Todoどうなってます?まず、xxさんにアポ取るところからだと思うんですが、やれてます?」と聞くほうがスムーズに進む。「早くやってください」と言うより
「今日中にやっちゃいたいんですが、何がボトルネックになります?」と言ったほうがスムーズに動いてくれる。「まだですか?」と言うより
「まだ・・・ですよね?相当忙しそうですもんね・・・。」という方が、良さそうだ。
これ自体が「積極的な経験」になるので、素晴らしく価値がある。これらの経験があれば、次回ToDoを頼む時は同じような言い回しをすることになるだろう。これが経験による成長だ。ここからもう一歩踏み込む。
なぜ、「このTodoどうなってます?」より「まず、xxさんにアポ取るところからだと思うんですが、やれてます?」の方がスムーズに進むのだろうか?結果に違いを漏らしたのは何なのか?声のトーンが違った?丁寧に話したのが良かった?少し具体的に聞いたのが良かった?
何が正解なのかはわからないが、このケースは恐らく、相手の状態が違ったのではないかと思う。
- 「ToDoをやらなければいけないことは分かるけど、何から手を付ければいいのかよくわからないし、忙しいし、考えるの面倒だな」という実際にアクションを起こすまでに一思考必要な状態から、
- 前出のウチの社員がタスクを分解して「まず、アポからですよね」と声を掛けた事で、何も考えていなくてもアクションが起こせる状態になったことが一つの原因だと分析する。つまり実行までの障害が1つ取り除かれた状態だ。
もしそうだとすると、
【教訓】思考の負荷が多少高い状態でToDoが渡されると、実行される確率が下がる。
【教訓】実行までの障害を洗い出し、それを極力取り除くと実行スピードが上がる。
というのが得られる教訓であり、結果に違いをもたらした根っこと考えられる。正解かどうかはわからないが、これがわかると「人に動いてもらう」場合すべてに適用できる可能性が出てくる。ToDo管理の仕事じゃなくても、何か人に依頼する時には、この考え方が適用できるかもしれない。つまり、応用が効くようになる。
これが「原理原則をつかむ事による成長」である。
得た教訓は間違っているかもしれない。でもそれでいい。違っていれば次の経験を元に修正していけば問題ない。積極経験型の成長サイクルに乗れる。
【まとめ】「経験による成長」だけだと、いつかポンコツになる。
長々書いたけれど、「経験による成長」だけだと、いつかポンコツになる。
「経験による成長」だけではあまりに緩やかな成長しかできない。どんどん「やったことある」仕事しかできなくなる。
「原理原則をつかむ事による成長」は成長のスピードはもちろん、活躍できる領域も広がっていく可能性を秘めている。原理原則が他の領域にも適用できるからだ。
言うほど簡単な話でない事はよくわかっているが、新入社員には頭の片隅に入れておいて貰いたい。
「経験」したら「その差は何だ?」「結局どういうことなんだ?」と自問して欲しい。その蓄積が原理原則をつかむきっかけになる。
「成長を加速させる」シーリーズの他の記事はこちら
①4つの成長スタイル
②羊と狼あなたはどっち?
③変化は是か非か、あるいは「変化の習慣を持つ」ということ
④学びの欲求がない学習は、むしろ成長を阻害する
⑤成長の分水嶺を超えろ
⑥おまけ:ドーラとナウシカのリーダーシップ
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズに所属するコンサルタント榊巻(さかまき)がお送りするブロク。
Havefun!(楽しもうぜ!)を合言葉に日々仕事をしています。ケンブリッジはお仕事の依頼も、一緒に働く仲間も絶賛募集中。
ケンブリッジのホームページにも記事が沢山載ってます。ブログだけでなく、何冊か本も書いています。