僕の評価シート公開 ~ケンブリッジの評価制度は、働きがいに直結していた~
「働きがい」シリーズ3本目の記事。
1回目は「仕事の内容」について
2回目は「前職での評価の仕方」がどうだったかを書いたが、今回は「ケンブリッジでの評価の仕方」について書きたい。
ケンブリッジの評価制度はすごかった。どうすごかったかと言うと・・・
①コンピテンシー定義がすごかった
ケンブリッジでは、コンピテンシー評価方法を採用していた。
コンピテンシーとは、
定義的に言えば「特定の職務において高い業績を継続的に上げている社員に固有に見られる行動特性」のことで、一言で言うと「できる社員の行動ノウハウ」あるいは「優秀な社員の行動パターン」のこと。
コンピテンシーは、「~する」という具体的行動で記述されるのが特徴で、 評価者にとって評価がしやすいこと。 被評価者にとっては具体的な行動をイメージしやすく、能力開発しやすいといったメリットがある。
と言われている。
ケンブリッジのコンサルタントとして、どういう行動・パフォーマンスを発揮できればよいのかが一覧表で整理されていた。社内で使われている実物のコンピテンシー定義表がこれだ。
【ケンブリッジのコンピテンシー定義表(一部)】
具体的には、コンサルタントの能力を評価する項目は、
- 論理的思考力
- 発想力
- プロセス構築力
- スコープマネジメント
- リスクマネジメント
- ファシリテート
- ドキュメンテーション
- 人材育成
- ・・・
といった感じだ。(コンピテンシー表の縦がこの項目に該当する)
さらに、項目ごとに細かくレベル定義がされている。
例えば「ファシリテート」という項目なら、こんなレベル定義になる。
- Lv1:ファシリテートでクライアントに不安を与えてしまいかねず、入念な準備が必要となる。たびたび参加者の支援を必要とする。
- Lv2:領域を限った意思決定セッション、ヒアリングセッション、説明セッションをファシリテートできる。
- Lv3:プロジェクト全体の意思決定セッションについて、時間通り結論を導くことができる。領域に関わらずセッションをファシリテートすることに不安はない。
- LV4:・・・・
という感じ。(コンピテンシー表の横がレベルに該当)
ファシリテートの能力を伸ばすために何を目指せば良いのか、自分が今どのレベルにいるのか、コンピテンシー定義がしっかりしているので明確に分かる。
ここまでキッチリコンピテンシー定義しているだけでも十分すごいのだが、僕が驚いたのはコンピテンシーを使った評価育成の仕掛けだった。
②評価育成の仕掛けは、もっとすごかった
定義されたコンピテンシーに沿って、3ヶ月に一度上長が詳細なフィードバック(評価)をくれるのである。
具体的には以下のようなフィードバックシートを3か月に一度貰うのだ。これは僕が7年前にもらったフィードバックシートだ。当時のプロジェクトマネージャーが書いてくれた実物である。
【ケンブリッジのフィードバックシート】
冒頭で紹介したコンピテンシー定義は、このフィードバックシートの右側で表現されていて、項目一つ一つに対して評価が下されている。このシートを元にプロジェクトマネージャーがこんなコメントをくれる。
「榊巻さんはね、ファシリテーションは、
・・・こう言われると、ぐうの音も出ない。何がどう不足しているのか、
フィードバックシートは受け取る側としては本当に嬉しい。自分の成長サイクルも格段に早くなる。(ただ、書く方は本当に大変・・・。
【一部を拡大してみるとこんな感じ】
この時の僕は、ファシリテートとプレゼンテーションの能力が「一つ上のタイトルでも通用する」という評価を貰っている。一方で、他の項目はタイトル相応と見られている。(当時のものを本当にそのまま出してみた・・・恥ずかしい・・・)
高い評価を貰った「ファシリテート」について、具体的に何がどう優れているのか詳細なコメントを書いてくれている。さらに改善すべきところも合わせて記述されている。
うーん。今見ても的確な指摘だ・・・。これが自分の能力を客観視し、伸ばしていこうというモチベーションに繋がる。
③だから年次人事評価の納得度は100%
そして、こうした3ヶ月に一度の評価が積み重なって、
フィードバックシート上で「タイトル相応」なのか、「上のタイトルでも通用しそう」なのか、丸わかりだからだ。
「上のタイトルでも通用しそう」という評価が積み重なっているなら、自然と昇格する。
昇格枠の制限はない。会社の業績も関係ない。
「自分がどう振る舞ったか」「価値を提供できたか」
これがいい。他責にせず、自責として受け止められる。
④その結果、ダメな上司は"一人も"いない
こんな風に、「コンピテンシー定義」と「3ヶ月に一度のフィードバックシート」「年次人事評価」が完全に一体となって運用されているので、ケンブリッジにはダメな上司が一人もいないのである。
普通の会社でよく見かける「昔すごかったが今は全然働かない人」はケンブリッジには皆無である。そうなった途端に厳しい評価が下され降格になるからだ。
「なぜか役員に気に入られているが仕事はできない人」や「年次が上だが仕事はイマイチな人」が昇格することもない。明確なコンピテンシー定義に基づき「日々の行動」によって評価されているからだ。行動が伴ってなかったら評価されない。
厳しい環境かもしれないが、透明過ぎて清々しい。上司におべっかを使う必要もない。気に入られる必要もない。
ダメな上司が一人もいないというのは、僕の中では本当に重要だった。
※これは成果主義とは異なる。成果を上げればなんでもアリの世界だとギスギスするが、コンピテンシー評価は行動を定義している。チームワークを大事にすることが推奨され、自分のノウハウを組織に展開することが推奨されている。このあたりがコンピテンシー評価の上手く出来ているところだ。
結局「働きがい」とは何か?
色々書いてきたが、ケンブリッジの評価の仕掛けは本当にすごい。コンピテンシー定義を基軸として、育成にも評価にも一本筋が通っている。運用するのは大変だがそれを大事にしようという文化がある。これが働きがいを大きく高めていると思うのだ。
まだまだ前職とケンブリッジの違いは沢山あるけど、結局、僕にとって、
- 自分が何かに貢献できている感覚が直接的に実感できる
- 自分の強みを最大限引き出して、強みで仕事ができる
- チームで相乗効果を生み出せる
- 評価、昇給、昇格のロジックが明確で、納得度が高い
人によって働きがいの源泉は違うだろうけど、「自分にとっての働きがい」を考えることは意義がある。この記事が考えるヒントになればいいなと思う。
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