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伝わらない「上位方針」を、リーダーとしていかに伝えるか

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 6月は、株主総会の多い時期。この時期になると私は、20代半ばに、あるコンサルタントから「このぐらいのことがわかってないと・・・」と、かなり厳しく言われた記憶がよみがえってきます。当時、経営の「け」の字もよくわかっていなかった私にとってその言葉は、かなりキツク、辛いものでもありました。心の中で(だって、わかるわけない!!)と、叫びつつも、でも(負けるものか・・・)という負けん気だけでがんばっていた時代があったのです。

 今日は、当時の経験を思い出しつつ、リーダーにとって大事な「方針伝達」をする上でのヒントをお伝えします。

「○○○は、読み込んでいますか?」
 今から20年前の私は、人材育成業界の営業として駆け出しの頃。日々「人事に関連する用語」の多さと、その言葉の意味することのイメージのわかなさに眩暈を覚えながら仕事をしていました。そんなある日、お客様から「中堅社員研修を企画して欲しい」とのご依頼をいただくことに!

 そのご依頼は、商社様からのお話だったため、商社出身のコンサルタントに連絡することに(当時の連絡手段は、FAXと電話)。

 すると早速、その方から折り返しの連絡が。

 私としては、「面白そうな仕事だね」とか、「ぜひ、いい方向で進めていきましょう」という言葉を期待しながら電話に出ると、その方の最初の一言は「意味がわからないんだけど」でした。

 私はその言葉にかなり動揺しつつも「どのようなところでしょうか?」と返答すると、

 「まず君ね、なぜこの研修をやることになったのか、
 その背景がまったくわかりません。
 業界動向とか、その会社が何をしていこうとしているか、
 なぜこの時期にこの対象に中堅社員研修をしようと思っているのか、
 そして、どんなアウトプットを期待しているのか、
 また、彼らにとってはどんなメリットを提供して欲しいのか、
 それがわからなければ企画のしようもないですよ。
 そもそも君は、四季報とかを読み込んで、業界動向を把握していますか?
 お客様にお聞きできていないのであれば、仮説を立てないと」

 (・・・・・絶句)

 結果的にその件は、上司に引き継ぎましたが、当時の私は、そのコンサルタントの「モノの言い方」に気をとられ、「伝えたかったことの中身」には意識を向けることもなく・・・「失礼な人!」というなんとも幼稚な感覚を持ち出す始末。今覚えば、とても恥ずかしいダメ営業ぶりでした。

 しかしその時に感じた「悔しい!」という思いに一念発起。そこから「経済新聞」や「四季報」などに目を通した上でお客様のお話を伺い、世の中全体→業界→各社の動向を意識した上で、「なぜこの対象に」、「なぜ今のタイミングで」、「このテーマで」と考える習慣を持つようになりました。

 その結果、独立しても、何とかやっていける力がついたのかな・・・と、今では感じています。

IRを活用したチームミーティングのすすめ
 このような経験をしている私にとって、現在、各社がインターネット上で公表している「IR」は、なんとも親切なデータです。というのも、「業界動向」、「自社の位置づけ」、「中期経営計画」、「重点施策」、「経営方針」などの情報が1つにまとまっているのですから!(しかも無料で、いつでも入手可能!)

 そして、ここからが本題です。

 この「IR」を「方針伝達」をしていくために、チームミーティングなどで活用してみてはいかがでしょうか?

 その際活用するのは、自社がIRを発行しているのであれば、自社のIRを。自社で発行していなければ、主要顧客のものを。

 そのIRにそれぞれが目を通しておいた上で、以下の観点で意見交換をします。
 (意見交換は回数を分け、少しずつ進めると、より具体的な意見が出やすくなります。
〔自社のIRを活用する場合〕
 ・IRから、どんなことを感じたか(それぞれが感じたこと)
 ・今与えられている目標と照らしてみて
  -優先順位などで見直す点がないか
  -抜けている取り組みはないか
  -強化する取り組みはないか
〔取引先のIRを活用する場合〕
 ・IRから、どんなことを感じたか(それぞれが感じたこと)
 ・わが社にとって、チャンスとなる要素はあるか
 ・わが社にとって、リスクとなる要素はあるか

ミーティングを進める上での3つのポイント
1)各自が目を通す・・・誰かが「伝達」するのではなく、それぞれが「目を通す」こと
2)各自が自分の考えを述べる・・・気づいたこと、感じたこと、意見などを伝え合う
3)各自の「考え方」や「感じ方」の「共有」に主眼
  ・・・すぐに業務に反映したくなりますが、それはせずに「言いっぱなし」でOK

以上が進め方です。

公開情報を活用するメリット
 
このような取り組みを進めるメリットは、上位方針や職場目標など、通常、講話やメール伝達で済まされることが多い内容を、「IR」という公開資料を活用することで、上位方針や職場目標の背景や期待されている基準を客観視できる点にあります。

 また「文書」として経営上の要点が論理的に整理されているので、経営的な枠組みに触れつづけることで、思考力を養う効果をもたらします。

 というように、資料に目を通すだけでも思考力の形成につながりますが、その上で、さまざまな情報に触れたり、日々の業務にあたることを繰り返し続けると、徐々に「先読み」をする力や、「力点を置くべきところ」など判断や行動をする上での視点が養われていきます。

 つまりは、「自分で考え、判断し、行動する」力が徐々についていくのです。

 このような取り組みは、「今日やったから明日から効果がある」という即効性はないですが、地道に取り組み続けることで、基礎力がつきます。しばらく続けると、こちらから働きかけなくても、自分から「こういうことですよね」と言えるようになります。

 一番のポイントは、「伝えよう」としなくても「汲み取れるようになる」こと。そのためには、日頃の習慣がモノをいいます。そのための場づくりができるのが、リーダーという役割の大きなメリットではないでしょうか。
以上、基礎づくりのヒントになれば嬉しいです。

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